読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

渡米留学の先駆け、秋吉敏子の“引き寄せ力”…バークリーへのバトン<上>

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 西田浩

 日本ジャズの国際的な飛躍を語る上で、米国・ボストンのジャズ専門の音楽大学、バークリー音楽大学の存在を忘れるわけにはいかない。小曽根真、上原ひろみ、大西順子、山中千尋(いずれもピアノ)……。日本の実力者たちが、かつて留学し、ここから海外での活動の糸口をつかんでいる。その最初の物語を紡いだのは、やはり秋吉敏子(ピアノ)と渡辺貞夫(サックス)の両巨匠だった。

留学先のボストンでトランペットの巨人、ルイ・アームストロング(右)と談笑する秋吉敏子(1956年頃撮影)
留学先のボストンでトランペットの巨人、ルイ・アームストロング(右)と談笑する秋吉敏子(1956年頃撮影)

 1950年代初頭、その卓越した技量で日本ジャズ界の注目を集めることになった秋吉は、進駐軍需要に支えられたジャズ景気の中、こんな飽き足らなさを感じていた。

 「米軍関係の仕事がいくらでもあり、食べるのには困らない日本のジャズ奏者の中には、探究心や向上心に欠ける方が少なくなかった。 傲慢(ごうまん) に聞こえるかもしれませんが、当時の日本には私が学ぶべきジャズ・ミュージシャンはいなかった。だから、いつもレコードで聴いている本場の音楽家たちと演奏したかった。ジャズでは、自分がうまくなるためには、自分より優れた音楽家と一緒にやることが必須なのです」

 その頃は夢物語だったのだろう。しかし、彼女には夢を引き寄せる実力、そして運があったのだ。

来日公演の一員、「レコード出すべき」と推薦

秋吉敏子の米国デビューを橋渡ししたピアニストのオスカー・ピーターソン
秋吉敏子の米国デビューを橋渡ししたピアニストのオスカー・ピーターソン

 53年11月、米国のプロデューサー、ノーマン・グランツが率いるジャズ・アット・ザ・フィルハーモニック(JATP)が来日公演を行った。その一員のオスカー・ピーターソンが、とある昼下がり、銀座のテネシー・コーヒー・ショップというジャズクラブにふらっとやって来て、その時出演していた秋吉の演奏を聴いた。しばらくすると、彼はピアノのところに歩み寄り、「夜もどこかでやっているか」と尋ねた。秋吉が場所と時間を伝えると、その日の公演を終えたピーターソンが、秋吉が出演しているニュー銀座にやって来た。自らもピアノを弾き、クラブは大騒ぎ。終わると、秋吉に「話があるから、明日午後、ホテルに来てほしい」と告げた。

 翌日、秋吉がホテルに行くと、ピーターソンはグランツを呼んで、「彼女のレコードを出すべきだ」と訴えた。グランツは「君が勧めるのだから」とあっさり承諾。何と、その場でレコーディングが決まってしまった。約1週間後、ラジオ東京(現TBS)の有楽町のスタジオで、2日にわたり放送が終わった深夜に収録が行われた。レイ・ブラウン(ベース)やハーブ・エリス(ギター)、J.C.ハード(ドラムス)と、JATPの 錚々(そうそう) たるメンバーが伴奏を務めた。

 「私は緊張でガチガチでした。私をリラックスさせようと、ハードが『オスカー・ピーターソンは、いつも朝食に卵を7個も食べるんだ。信じられるか?』なんて軽口をたたいてくれました」

初アルバム、念願の入学…プロとしての活動スタート

 秋吉にとって初となるこのアルバムは、グランツが経営する米国のレコード会社から発売された。秋吉の「米国に行きたい」という気持ちに火がついた。親しくしていた在日米軍所属のボストン出身のギタリストの勧めで、バークリー音楽院(バークリー音楽大学の前身)に手紙を書いたが、音沙汰なし。しばらくたってから、グランツの仲介で音楽誌「メトロノーム」に秋吉を紹介する2ページの記事が載ると、ほどなくバークリーから入学許可と学費免除を知らせる手紙が届いたのだ。56年1月、秋吉は念願の渡米を果たした。

残り:1085文字/全文:2773文字
読者会員限定記事です
新規登録ですぐ読む(読売新聞ご購読の方)
無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
2235898 0 日本ジャズの断面 2021/07/29 10:00:00 2021/07/29 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210610-OYT8I50066-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)