[マンガのくに]アトムの子ら<1>ロボットの内面的成長

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 2020年は、ロボットという言葉が誕生してから、ちょうど100年です。人工知能(AI)の急速な進化とあいまって、「人間を超えるロボット」も絵空事ではなくなってきました。今月の「マンガのくに」は、ロボットと人間の新しい関係を予見する作品を紹介していきます。(編集委員 石田汗太)

出会いの中、巨大な「悲しみ」知る

『ORIGIN』より。「ちゃんと生きろ」という父の言葉の意味を考え続けるオリジン。「田中仁」の名で周囲には人間と思われている (c)Boichi/講談社
『ORIGIN』より。「ちゃんと生きろ」という父の言葉の意味を考え続けるオリジン。「田中仁」の名で周囲には人間と思われている (c)Boichi/講談社

 <ちゃんと生きていかないのなら 生存することは 俺には意味がない/ギリギリで生きていきます 父さん>

 2048年の東京。科学者の「父」によって作られた人間型ロボット・オリジンは、父が死んだ後、人間のふりをして暮らしていた。父がオリジンの後に作った8体のロボットが人間の敵になり、彼も襲撃を受ける。父の最後の命令は「ちゃんと生きていけ」。その言葉を「根本原理セントラル・ドグマ」とし、オリジンは人間を守るため兄弟たちと死闘を繰り広げる。

 Boichiボウイチさんが「ヤングマガジン」で2016~19年に連載した『ORIGINオリジン』(講談社、全10巻)は、肉体とメカの美を圧倒的な技巧で描いたSFアクションの傑作。さらに、ロボットの内面的成長をテーマにしていることが興味深い。

 オリジンは思考し意志を持つが、感情や自我は持っていない。天才科学者の父でも、それらを与えることはできなかったのだ。人工頭脳が成長すれば、いつか感情が生まれると父は予想していた。人間の女性、広瀬マイとの出会いでオリジンの中に変化が生じる。それは、ロボットの彼が初めて巨大な「悲しみ」を知ることでもあった……。

■借金苦のロボット

 「ロボットが人間を襲う話は昔から多い。今、ロボットを描くのであれば、新しい一歩が必要だと考えた」とBoichiさんは語る。大学で物理学を学んだ経験を生かし、従来にないこだわりのSF設定を持ち込んだ。熱処理の問題、バッテリー容量の限界、そしておカネ。「オリジンには戦闘で壊れた自分を修理するカネがない。借金するまで生活苦に陥るロボットはリアルで面白いと思った」

 <ロボットみたいな人間が多すぎて 誰がロボットなのかわかりづらい>。緊迫した場面でもユーモラスな独白は夏目漱石の『坊っちゃん』を意識した。「SFはどうしても巨視的なテーマになりがちで、個人の内面を掘り下げるのが難しい。その両方を一つの作品で描きたかった」

 神のような超AIも作中に登場するが、オリジンはネットワークと一体化しない。「何でも可能なネットワークにつながると、別の物語になってしまう。でも、AIに対する恐怖感は自分にはない。恐れなくてはならないのは、その力を支配に使おうとする人間の方でしょう」

 韓国ソウル生まれ。1990年代は韓国の女性マンガ誌で活躍し、2006年の『サンケンロック』(少年画報社)から本格的に活動の場を日本に移す。現在は東京に住み、17年から「週刊少年ジャンプ」で連載する『Dr. STONE』(原作・稲垣理一郎、集英社)が大ヒット中。外国人マンガ家としては例がないほどの成功だ。だが……。

 「人間の中で孤独に生きるオリジンを、自分に重ねている部分もある」と明かす。「私は日本語がちゃんとできないし、周囲に私のような外国人作家もいない。マンガ家として何を守りたいのか、何のために戦っているのか、その気持ちをこの作品に込めています」

 オリジンのように、ギリギリで頑張っている全ての人々を勇気づけるために。

■アトムの「涙」

「電光人間の巻」のアトム。「わるい心を持たないロボットは完全ではない」というテーゼを巡る名エピソードの一つ (c)手塚プロダクション
「電光人間の巻」のアトム。「わるい心を持たないロボットは完全ではない」というテーゼを巡る名エピソードの一つ (c)手塚プロダクション

 チェコ作家カレル・チャペック(1890~1938年)が「ロボット」という言葉を初めて使った戯曲『エルウーエル』を出したのは1920年。今年はロボット生誕100年だ。チャペックのロボットは人間そっくりなので、『ORIGIN』は文字通り“原初”に帰ったと言える。

 田河水泡『人造人間』(1929年)という先駆的作品もあるが、やはり日本でロボットといえば手塚治虫の『鉄腕アトム』(「少年」52~68年)を抜きに語れない。アトムにはこんな印象的なセリフもある。

 <もしぼくが人間のように涙を流すことができたら きっといまぼくの目は涙でいっぱいで見えないでしょう>(55年「電光人間の巻」)

 この時のアトムに「感情」は芽生えていたのか。ロボットの心は、どこから来るのだろうか――。

 [マンガのくに]アトムの子ら<2>人間超えたAI…究極の問い
 [マンガのくに]アトムの子ら<3>25万年先を見届ける使命

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1058796 0 一押しマンガ 2020/02/18 10:16:00 2020/04/16 16:24:09 エトキ別送 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200218-OYT8I50001-T.jpg?type=thumbnail

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