シゲカヨ45歳、再びラブの荒野へ! 『ハッピー・マニア』19年ぶり続編

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編集委員 石田汗太

・安野モヨコ『後ハッピーマニア』(祥伝社)

『後ハッピーマニア』
『後ハッピーマニア』

 1995~2001年に「フィール・ヤング」で連載された『ハッピー・マニア』(全11巻、祥伝社)は、鬼才・安野モヨコさんの出世作にして、「肉食系」恋愛コメディーの金字塔だった。

 主人公のシゲタカヨコは、「彼氏ほしい」で頭がいっぱいの24歳フリーター。

 <なんで みんな恋人がいるの? そして なんで あたしには恋人がいないの?>

 同僚のメガネ男子タカハシに好かれていると知っているが、地味男などハナから眼中になし。ちょっと好みの男に誘われると、すぐ舞い上がってベッドイン。適当に遊ばれ、フラれの繰り返し。

 しかし、シゲカヨの辞書に「反省」も「学習」もない。不屈の生命力と鋼鉄のメンタルを両輪とし、暴走機関車のごとく、不毛のラブ荒野をどこまでも突き進む……。

「自分をスキにならない人がスキ」

 この作品がどれほど革命的で先進的だったか、よくわかる事例を最近見つけた。公開中の恋愛映画『僕の好きな女の子』(玉田真也監督)は、作家でお笑い芸人の又吉直樹さんが2017年に発表した同名エッセーが原作。その核心となるフレーズはこうだ。

 <キミは永遠に僕のことを好きにならない。僕が好きな人は永遠に僕のことを好きにならない>(別冊カドカワ〔総力特集〕又吉直樹)

安野さんの初ヒット作『ハッピー・マニア』第1巻(1996年)
安野さんの初ヒット作『ハッピー・マニア』第1巻(1996年)

 これとほとんど同じことを、1995年の『ハッピー・マニア』連載初回で、シゲカヨはつぶやいているのだ。

 <こんなのじゃないの もっとカッコイイ人がいいの あたしみたいな女の子 スキになんかならない カッコイイ男の子>

 この恐るべき自己矛盾。はっきり言ってイタい。だがこれこそ、平成以後の若者が突入した「ラブの迷宮」だったのではあるまいか。この時点でこのシーンを描いた安野さんは、時代の先端に立ったと思う。二十数年を経て、ついに男性の芥川賞作家にまで、その感覚が共有されるようになったのだ。

 煩悩の塊のようなシゲカヨだが、自分の欲望にウソをつかないという点で、これほど純粋な人もいない。だから、究極の反面教師なのに、奇妙に感情移入できる。「どこまでも行け!」と応援したくなる。

 以後、前作の結末に触れるが、ここを避けると本題につなげられないので、やむなく書かせてもらう。

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1482497 0 一押しマンガ 2020/09/17 10:00:00 2020/09/17 11:12:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200915-OYT8I50063-T.jpg?type=thumbnail

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