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推しの子どもに転生 究極のオタク・ファンタジー

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編集委員 石田汗太

・赤坂アカ・横槍メンゴ『【推しの子】』(集英社、既刊3巻)

 本コラムを2019年2月にスタートする時、タイトルをあまり深く考えずに「一押しマンガ」とした。しかし、「一推しマンガ」にすべきだったかも……と、ちょっと後悔している。

 「推し」という言葉が、最近とみに、特異なニュアンスを帯びるようになってきたからだ。

言葉はメジャーに でも意味は?

 NHKの「よるドラ」枠で、連続ドラマ『だから私は推しました』が放送されたのは2019年7月。白石聖さん演じる地下アイドルに、桜井ユキさん演じるアラサーOLがハマっていくというサスペンスタッチの物語で、題材も脚本も野心的な佳作だった。

 サブカルチャーに強い評論誌「ユリイカ」(青土社)が「女オタクの現在――推しとわたし」という特集を組んだのは2020年9月号。決定的なのは、同じ20年9月に刊行された宇佐見りんさんの小説『推し、燃ゆ』(河出書房新社)が、今年1月に芥川賞に輝いたことだろう。

 オタク用語だったはずの「推し」は、一躍メジャーな言葉になった。

 だが、推しとは何なのか。そのニュアンスを的確に説明できる人は、どれだけいるのだろうか。例えば、「推し」と「()え」の違いを聞かれても、私はうまく答えられない。違うことは何となくわかる。けれど、スッキリ納得できる説明に、なかなかお目にかかることができない。

嘘はとびきりの愛なんだよ?

赤坂アカ・横槍メンゴ『【推しの子】』(集英社)
赤坂アカ・横槍メンゴ『【推しの子】』(集英社)

 さて、今回このコラムが「押す」のは、『【推しの子】』という作品。「週刊ヤングジャンプ」で2020年から始まった、異色の芸能界マンガである。

 16歳の星野アイは、アイドルグループ「B小町」の絶対的センター。地方都市の病院に勤める産婦人科医ゴローの推しだった。東京から遠く離れたゴローの病院に、変装したアイ本人とマネジャーが現れる。アイが双子を妊娠していることをゴローは知る。

 ゴローがアイ推しになったのは、かつて担当していた患者の少女・さりなが、同い年のアイの熱烈なファンだったからだ。重病のさりなは、アイドルになることを夢見ながら、12歳で亡くなった。

 アイは決して父親を明かさなかったが、妊娠を心から喜んでいた。子どもを産んでも公表せず、母になることも、アイドルであることも捨てないとゴローに宣言する。

 <アイドルは偶像だよ? (うそ)という魔法で輝く生き物 嘘はとびきりの愛なんだよ?>

 <母としての幸せと アイドルとしての幸せ 普通は片方かもしれないけど どっちもほしい 星野アイは欲張りなんだ>

 その笑顔と覚悟に打たれたゴローは、安全に子どもを産ませることをアイに約束する。

 <だって 君はどうしようもないほどアイドルで 僕はどうしようもないほど君の奴隷(ファン)だ>

 だが、アイの出産直前、ゴローはアイのストーカーに殺されてしまう。目覚めると、彼は赤ん坊になっていた。傍らには双子の妹がいる。二人のママは、星野アイ……。

ゆるいコメディーかと思いきや……

 推しの子として生まれ変わる。それは、推す側の究極のファンタジーなのか。

宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)
宇佐見りん『推し、燃ゆ』(河出書房新社)

 宇佐見さんの『推し、燃ゆ』にも印象的なシーンが出てくる。<あたし>が推す男性アイドルの上野真幸がファンを殴って炎上し、芸能界引退を表明。その殴った相手と結婚するらしいといううわさが流れた時、このようなつぶやきがSNSに流れる。

 <オタク、いまから死ねば真幸くんの子どもに生まれ変われるくないか 来世で会おう>

 それを、ぬけぬけとやってしまったのが『【推しの子】』なのだ。ゴローは前世の記憶を持ったまま、星野アイの息子・愛久愛海(あくあまりん)(愛称アクア)に転生する。実は、妹の瑠美衣(るびい)(愛称ルビー)は、さりなの生まれ変わりなのだが、アクアはそれに気づいていない。

 あまりの荒唐無稽さに、ゆるいコメディーなのかと思っていたら、さらに衝撃の展開があって驚く。ティーンに成長したきょうだいが、ある目的を持って芸能界に入るところから、ようやく本編がスタートする。この引きの強さ、お見事というしかない。

異才マンガ家コンビの「ただならぬ化学反応」

赤坂アカ『かぐや様は告らせたい』第21巻。実写映画もヒットした人気恋愛コメディー
赤坂アカ『かぐや様は告らせたい』第21巻。実写映画もヒットした人気恋愛コメディー

 赤坂アカさんは、同じ「ヤングジャンプ」で、ヒット作『かぐや様は(こく)らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』(集英社、既刊21巻)を連載中の人気マンガ家。本作では、原作にあたるネーム(セリフ、構図、コマ割りなどの設計図)を担当しているようだ。

横槍メンゴ『クズの本懐』(スクウェア・エニックス)。タイトルはすごいが、かなりまっとうな恋愛群像劇
横槍メンゴ『クズの本懐』(スクウェア・エニックス)。タイトルはすごいが、かなりまっとうな恋愛群像劇

 作画の横槍(よこやり)メンゴさんは『クズの本懐』(スクウェア・エニックス、全9巻)などの恋愛マンガで知られる女性作家。とにかくかわいい女の子がうまい。ソロ作品も多いが、やはりマンガ家の岡本倫さんが原作の『君は淫らな僕の女王』(集英社、全2巻)で、異様なまでの作画ポテンシャルを発揮した。内容がエロチックすぎて、万人にお勧めできないのが残念だ。

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1901000 0 一押しマンガ 2021/03/11 10:00:00 2021/03/11 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210309-OYT8I50044-T.jpg?type=thumbnail

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