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魔王なき世界を「葬送」するフリーレン 最新形〝低体温〟ファンタジー

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編集委員 石田汗太

・原作・山田鐘人 作画・アベツカサ『葬送のフリーレン』(小学館、既刊4巻)

 「週刊少年サンデー」で2020年4月に連載が始まると、たちまちSNSなどで話題となり、年末の「このマンガがすごい!2021」(宝島社)オトコ編で2位を獲得、今年の「マンガ大賞2021」と「手塚治虫文化賞・新生賞」を相次いで受賞。今、最も注目されるファンタジーと言っていいだろう。

『葬送のフリーレン』第1巻。左から2人目の少女がフリーレン。いつもどこか退屈そう
『葬送のフリーレン』第1巻。左から2人目の少女がフリーレン。いつもどこか退屈そう

 少女の姿をしたフリーレンはエルフ族の魔法使い。勇者ヒンメル、戦士アイゼン、僧侶ハイターとパーティーを組み、冒険の末に魔王を倒して王都に凱旋(がいせん)した。超長命のエルフ族にとって、10年間の旅は一瞬も同然。だが、他の仲間にとっては違うことを、彼女は知らなかった。

 50年後、フリーレンが再会した仲間たちは、すっかり年老いていた。半世紀ごとにやってくる流星群を全員で見上げた後、勇者ヒンメルはこの世を去る。

 人間の命のはかなさに、初めて気づいたフリーレンは、新しい仲間と共に、魔王城への道のりをもう一度たどり始める。人間のことをもっと知るために。かつての仲間たちが、この世界に何を(のこ)したかを見つけるために……。

「エンディング後」から始まる追想の旅

 冒険の本編をすっ飛ばし、ゲームで言えば、いきなり「エンディング後」から始まる趣向が本作のキモだ。1000年の時を生きるフリーレンは、世界に対してひどく()めたところがあり、人間の心の機微が理解できない。ヒンメルがひそかに寄せていた思いにも、気づくことはなかった。

 そんな彼女が、新しい旅に出て、同時に過去の旅を追想する「多層的時間」の語りが凝っている。それによって気づきを得るフリーレンの内面的成長が、繊細に描かれる。

 絵は美しく緻密(ちみつ)だ。背景も手抜きなく、小さなコマに、様々なギャグの小ネタが仕込まれているのを探すのも楽しい。その分、紙のコミックスではいささか老眼につらい。電子書籍で、指で拡大しながら読むべき作品なのかもしれない。

 本作の絶大な人気は理解できる。しかし、若い読者の方が、より評価は高いのではないかという気がする。これは推測だが、30~40歳くらいを境に、評価が分かれるのではないか?

フリーレンはディードリットの「 末裔(まつえい) 」か

 本作のような世界観は、私も大好きだ。

 中世ヨーロッパ風の剣と魔法の世界で、個性的なスキルを持つメンバーがパーティーを組み、世界を救うために魔王討伐の旅に出る――。

 こうした世界観のひな型を日本で確立したのは、1987年のファミコン用ソフト『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』と、88年の『ドラゴンクエストIII そして伝説へ…』だろう。

水野良『ロードス島戦記 灰色の魔女』。後ろのエルフ少女がディードリット。オールド・ファンにとっては永遠のヒロイン
水野良『ロードス島戦記 灰色の魔女』。後ろのエルフ少女がディードリット。オールド・ファンにとっては永遠のヒロイン

 もう一つ、88年に出た小説『ロードス島戦記 灰色の魔女』(作・水野良、原案・安田均、現・角川スニーカー文庫)も忘れるわけにいかない。ライトノベルの源流の一つとなった名作で、いわゆる「長耳エルフの美少女」のキャラクター造形は、イラストレーターでアニメ監督の出渕裕さんが、この小説のヒロイン「ディードリット」を挿絵で描いたのが最初だ。そのデザインはエルフのスタンダードとなり、フリーレンにまで脈々と受け継がれている。

トールキンにまで遡る世界観

 この2作品には共通のルーツがある。1974年に米国で出た『ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)』というテーブルトークゲームで、ゲームマスター(GM)が語るシナリオに沿って、各プレーヤーがキャラクターになりきって演じるRPG(ロールプレイングゲーム)という遊び方を創案したことで有名だ。『ロードス島戦記』の原型も、元々はD&Dのシステムを使ったオリジナルシナリオだった。

 81年には、D&Dの世界観をパソコンゲーム化したダンジョン探索ゲーム『ウィザードリィ』が世界的にヒットし、日本でもマニアックなファンを得た。この戦闘システムを初心者向けに洗練させ、物語性を豊かにしたのが『ドラクエ』シリーズだ。

 さらに源流を求めれば、こうした世界観の始まりは、英作家J・R・R・トールキンのハイ・ファンタジー小説『ホビットの冒険』(1937年)や『指輪物語』(54年)まで遡れるだろう。

「異世界転生」にノレない理由

 この流れの最新バージョンに位置するのが『葬送のフリーレン』である。

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2064293 0 一押しマンガ 2021/05/20 10:00:00 2021/05/20 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210517-OYT8I50071-T.jpg?type=thumbnail

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