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ゲリマンダーと議員減…「政治家が有権者を選ぶ」発想が心配だ

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編集委員 伊藤俊行

 10年に1度の国勢調査の結果発表を受け、連邦下院選挙の区割り見直しが本格化する米国で、「有権者が政治家を選ぶ」のではなく、「政治家が有権者を選ぶ」事態を懸念する声が高まっている。折しも日本でも、10年に1度の国勢調査(本調査)の結果を受けた衆院小選挙区の区割り見直しが行われている。政権党が選挙区の境界を線引きできる米国のような仕組みではない。それでも、選挙制度が抱える問題を通じ、永田町でも「政治家が有権者を選ぶ」発想が広がっていないだろうかと考えさせられる場面が増えている。

名前の由来は「火の中のトカゲ」

 米国勢調査局が8月12日に公表した2020年の調査結果は、ヒスパニック(中南米系)を除く白人の人口が減少し、州によってはヒスパニックが白人を超えて多数派になっていたことが関心を集めた。

米大統領選を前に、ペンシルベニア州で演説するバイデン前副大統領(肩書は当時。2020年11月、AP)
米大統領選を前に、ペンシルベニア州で演説するバイデン前副大統領(肩書は当時。2020年11月、AP)

 結果公表を受けて各州では、22年中間選挙(連邦上院の3分の1と連邦下院の全議席を改選)に向け、下院の選挙区の境界を決める区割り作業が始まった。各選挙区の人口をできるだけ均等にし、「1票の格差」を小さくするため、これまでも定期的に行われてきた作業だ。

 問題は、党派対立の激しさと、「選挙に勝てば何でも許される」「選挙に勝つためには何をしてもいい」という選挙至上主義的な発想から、しばしば「ゲリマンダー(gerrymander)」が行われてきたことだ。

 ゲリマンダーは、権力を持つ政党が公平さや公正さを無視し、どれだけいびつな形になっても、自党に有利になるように選挙区の境界の線引きを行う手法だ。1812年に民主共和党(現在の民主党)出身のエルブリッジ・ゲリー(Elbridge Gerry)マサチューセッツ州知事(当時)がこの手法を強行した結果、できあがった選挙区の形が伝説上の火の中のトカゲ「サラマンダー(salamander)」に似ていたため、この名が付いた。

「与党が勝つため有権者を選別する」仕組み

 ゲリマンダーが成立するメカニズムは、少し説明が要る。

 まず、下院定数435を国勢調査の人口に応じて50州に配分する。定数が1で区割りをしようがない州(今回調査ではアラスカ、デラウェア、ノースダコタ、サウスダコタ、バーモント、ワイオミングの6州)を除き、10年国勢調査の定数1から今回2に増えたモンタナを含む44州が区割り作業を行う。22年中間選挙に反映させるため、早い州では今秋にも新たな選挙区地図を作り終える。

 下院は各選挙区の当選者が1人の小選挙区制だ。

 日本の衆院の場合、全国289の小選挙区の区割りは、7人の民間有識者による衆院選挙区画定審議会(区割り審)が行う。

 州の権限が強い米国では、州ごとに区割り作業が行われ、やり方も州ごとに異なる。そこに、「有権者が政治家を選ぶ」のではなく、「政治家が有権者を選ぶ」図式を生むゲリマンダーが入り込む余地がある。

 ゲリマンダーの肝は、地域の「分割」と「合併」だ。例えば、ある選挙区で民主党支持者の多い中南米系の有権者が増えていたとする。州議会は共和党が牛耳っている場合、州議会はその選挙区を分割し、一部を共和党支持者の多い白人層が多い地域に合併する線引きをして、民主党候補が容易に勝てないようにする。

 いわば、政権与党が選挙で勝つために有権者を選別したと言ってもいい。

 連邦最高裁は19年、ゲリマンダーに関する訴訟を連邦裁判所で扱わないとの判断を示したため、州議会が決めた新たな区割りによって1票の格差が極端に広がらない限り、地域の歴史、一体性、地形などを無視しても、どんないびつな形になっても、飛び地があっても、ゲリマンダーは有効となる。

 かつてないほど、ゲリマンダーをしやすい政治状況になっている。

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2295393 0 まつりごと点描 2021/08/19 10:00:00 2021/08/20 12:01:54 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210817-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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