マスクをしない米国人 外し方が残念な日本人

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編集委員・山口博弥

米ジョージ・ワシントン大学病院のフィリップス医師のツイッター
米ジョージ・ワシントン大学病院のフィリップス医師のツイッター

 「This is insanity.(これは正気の沙汰ではない)」

 米国のジョージ・ワシントン大学病院のジェームズ・フィリップス医師(救急医学)が10月5日、自分のツイッターに書いた言葉です。

 米トランプ大統領は新型コロナウイルスに感染し、10月2日に入院しました。手厚い治療で症状は落ち着き、まだ入院中の4日に一時外出、車の中から支持者に手を振りました。この行為に対して、フィリップス医師はツイッターでこう書いたのです。

米大統領の行動は「正気の沙汰ではない」

 「完全に不必要な大統領の“車での立ち寄り”のせいで、同乗したすべての人がこれから14日間、隔離されなければならない。彼らは病気になるかもしれない。死ぬかもしれない。政治劇のために。トランプの指令が、彼らの命をリスクにさらした、政治劇のために。これは正気の沙汰ではない」

  ※insanityは「狂気」と訳されますが、文脈は「行為の異常さ」を表現しているため、ここでは「正気の沙汰ではない」としました。

 たしかに、新型コロナウイルスを発症して間もない、しかも入院中の患者が、他人に感染させるリスクが十分あるのにもかかわらず、車という「密閉」「密集」の環境に第三者を巻き込むという行動は、私もまったく理解できません。

 トランプ氏はこれまでも、「新型コロナウイルス感染の99%は無害」「夏が来れば消滅する」「大半の人にとってはインフルエンザより致死率がはるかに低い」などと、科学的根拠のない、コロナを軽視する発言を繰り返してきました。

 しかし米国では、こうしたトランプ氏の発言が、それほど違和感を持たれていないのかもしれない……。そう思わされたのが、9月26日にホワイトハウスで開催された最高裁判事の指名イベントの映像です。

米エリート150人が「3密」…次々にコロナ感染

 出席者約150人は密集して座り、大半はマスクをしていません。米国では当時、700万人以上が感染し、20万人を超える死者が出ているのに、きわめて高い地位にいるエリートたちが、マスクなしで、ものすごく近い距離で会話し、抱擁までしている……。私はこの映像にあぜんとし、まさに「正気の沙汰ではない」と思いました。結果的に、イベントに出席した最側近の前大統領顧問、大統領選の選挙対策本部長、共和党の上院議員、前ニュージャージー州知事、ホワイトハウス担当記者らの感染が次々と判明したのです。

 弊紙のアメリカ総局長が5月に書いた記事によると、米国では、マスクは「重病の人向けの医療用品」という固定観念があった。そして多くの州では、理由なしに公共の場でマスクを着けること自体が違法。少なくとも18州に「反マスク法」と呼ばれる法律がある。その多くは、覆面での白人至上主義団体の活動を制限するため、20世紀半ばに制定された。ただ、連邦政府が4月、感染防止のために国民にマスク着用を推奨したことを受け、例えばジョージア州知事は法律の効力を停止する政令に署名した、ということです。

 こうした文化的・歴史的な背景がある米国人のことを、マスク着用に抵抗がない日本人と同じように考えない方がいいとは思います。でも、それを割り引いても、やはりホワイトハウスでのあの「3密」はダメでしょう。良識のある米国人たちも、あの映像には眉をひそめたのではないでしょうか。

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1578971 0 なるほど!医療 2020/10/27 10:00:00 2022/04/21 17:40:42 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201023-OYT8I50103-T.jpg?type=thumbnail

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