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コロナワクチン「有効性」95%って、どういう意味?

編集委員 山口博弥

 感染拡大が全国で勢いを増している新型コロナウイルス。私たちの多くは、3密を避け、寒いのに部屋を換気し、マスクを着け、頻繁な手洗いに努めているはずなのに、一向に感染拡大が収まりません。こうなると、国民の期待が高まるのは「有効なワクチンの開発」です。もちろん、日本に限らず世界中の人たちが、1日も早い接種を待ち望んでいることでしょう。

ワクチンの「効く」「効かない」…どうやって判断するか

新型コロナウイルスのワクチンとのラベルが貼られた小瓶(ロイター)

 そんな中、米国で相次いでワクチン開発の朗報が発表されました。米製薬大手ファイザーは11月20日、米バイオ企業モデルナは同月30日、それぞれ緊急使用許可を米食品医薬品局(FDA)に申請したのです。英政府は今月2日、先進国では初めてファイザーのワクチンを承認しました。臨床試験の中間結果では、ファイザーのワクチンの予防効果(有効性)は95%、モデルナのそれは94.1%だったといいます。

 さて、この95%や94.1%という数字は、どうやって算出した数字なのでしょうか。

 「100人がファイザーのワクチンを接種したら、95人には効いたけど、5人には効かなかった」。こう受け取った人がいるかもしれません。でも、病気の治療薬ならともかく、発症するかどうか分からない健康な人が接種するワクチンの「効く」「効かない」を、こうした方法で判断することはできませんよね。

 ここから先は少し頭の体操になりますが、数字や算数・数学が苦手な方にも文系出身の私が(たぶん)分かりやすく解説しますので、しばらくお付き合いください。

コロナ発症はワクチン群8人、非ワクチン群162人

 ファイザー社がきちんとした論文を公開していないので詳細は不明ですが、読売新聞の記事によると、臨床試験に参加したのは約4万3500人。参加者のほぼ半数にワクチン、残りに偽薬(プラセボ)を注射し、新型コロナウイルス感染症を発症したかどうかを1か月追跡しました。その結果、発症者は偽薬のグループ162人に対し、ワクチンのグループでは8人でした。

 ワクチングループの発症者数は、偽薬グループの約20分の1(162÷8=20.25)にとどまったことになります。分かりやすくするために、この20対1をそれぞれ5倍すると、100対5。つまり、何もしなければ100人発症するところを、5人の発症に抑えられた。別の言い方をすると、100-5=95人の発症を予防した。これが、予防効果95%の意味するところです。

99%の人は、ワクチンを打とうが打つまいが変わりなし

 ファイザーの臨床試験の数字の意味を、違う角度から考えてみましょう。

 これについては、京都大学名誉教授の川村孝さんが書いた「論考」(12月1日付)で触れており、ノーベル賞受賞者の山中伸弥教授のサイトで見ることができますが、私がここで改めて紹介したいと思います。

 何もしないと162人が発症するところを、ワクチンを打つと発症者は8人にとどまった。ということは、ワクチン接種のおかげで162-8=154人の発症を防いだわけです。計算しやすいように、ワクチンと偽薬をそれぞれ2万人に注射したとすると、154÷20000=0.0077、つまりワクチンを打った人のうち、約0.8%の人がワクチンの恩恵を受けたことになります。残りの99.2%の人は、ワクチンを打とうが打つまいが、発症しない人はしないし(こちらが大部分)、発症する人はするのです。

 こう書くと、「なんだ、じゃあ、ワクチンを打っても意味ないじゃん」と思う方がいるかもしれません。でも、決してそんなことはないのです。

 仮に世界の1億人がこのワクチンを接種したとすると、80万(100000000×0.008=800000)もの人が発症しなくて済む。1000万人の接種なら8万人、100万人の接種なら8000人です。病気の人を治す治療薬とは違い、たしかに効率は悪いかもしれません。でも、接種をしっかり実施することによって感染拡大を抑え、やがて感染症を制圧することができる。ワクチンとは、予防医療とは、そんなものなのです。

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