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コロナ禍の科学者は「用心棒」であれ!

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編集委員 山口博弥

 「日本の科学研究は危機的状況だ。新型コロナの論文数は東アジアの中でも少ない。瞬発力も消えうせている」

 1月3~7日の本紙朝刊に掲載された新年企画「明日を築く」(計5回)。私が担当した4日の「開発力」の回で、世界初のエイズ治療薬「AZT」を開発した(みつ)()裕明さん(70)のこの言葉を紹介しました。

日本の科学論文は5年で8%減 コロナ論文は香港、韓国、台湾より少ない

世界初のエイズ治療薬「AZT」を開発した満屋裕明さん
世界初のエイズ治療薬「AZT」を開発した満屋裕明さん

 満屋さんは、国立国際医療研究センターの研究所長で、アメリカの国立衛生研究所(NIH)の主任研究者です。NIHに留学していた1984年にエイズの研究を始め、開発した治療薬「AZT」が87年に承認されました。当時は「死の病」とされたエイズ。ロックグループ「クイーン」のボーカル、フレディー・マーキュリーもこの病気で亡くなりました。それが今では、薬を飲み続ければ普通に暮らしていける「慢性疾患」になっています。この画期的な薬を世界で初めて開発したわけですから、日本人としても非常に誇らしい業績です。

 だからこそ、満屋さんの冒頭の言葉は重く響きます。この言葉の真意を、少し詳しく書きましょう。

 国の科学研究の力は、ある程度、論文の数で評価することができます。少し長くなりますが、2017年3月の本紙に掲載された記事を引用しましょう(一部、省略)。

 日本の科学研究が失速している――。英科学誌ネイチャーは、日本の科学研究の現状をまとめた23日の別冊で、そうした分析結果を発表した。主な学術雑誌に掲載された、日本の研究者による論文数は最近5年間で8%減少するなど停滞が著しく、同誌は「今後10年で成果が上がらなければ、世界トップ級の地位を失いかねない」と警鐘を鳴らしている。
 同誌や米科学誌サイエンスなど、自然科学系の主要学術雑誌68誌に掲載された論文を対象に分析した。その結果、日本の大学・研究機関に所属する研究者が著者の論文数は、2012~16年の間に8・3%減少。中国、英国がそれぞれ47・7%、17・3%増えたのとは対照的な結果となった。
 さらに、より広範囲の学術雑誌を対象にした、別の情報調査会社のデータも分析。世界全体の論文数は05~15年の間に約80%増えたのに対し、日本の論文数は14%増にとどまり、全体に占める割合も7・4%から4・7%に落ち込んでいた。
 ネイチャー誌は失速の原因について、ドイツや中国、韓国が科学技術予算を大幅に増やす一方、日本は01年以降ほぼ横ばいで、その多くが一部のトップ大学に回っていると指摘。研究者の長期雇用が減り、若手研究者の短期雇用が大幅に増えたことも、停滞の背景にあるとみている。

 この英科学誌ネイチャーは昨年、主要科学誌に2019年に掲載された論文数などにもとづく研究機関の研究力ランキングをまとめました。日本勢は東京大の11位が最高で、ランク付けを始めた16年以降、初めてトップ10から陥落しました。

 「論文の量は、結果的に質を生みます。日本の論文の質は、量以上に低下しているのではないでしょうか」。先月取材した時、満屋さんはそう嘆いていました。

 では、新型コロナウイルス関連の論文数ではどうでしょうか。

 文部科学省の科学技術・学術政策研究所が昨年5月に公表した報告書によると、中国が1158本でトップ、2番目は米国の1019本。この2国が突出し、次いでイタリア(375本)、英国(312本)、フランス(182本)と続きます。日本はどうかと言うと、56本で17番目。「日本は感染者数が少ないから、調査や研究もなかなかできないのでは?」と思う人もいるでしょう。でも、日本より感染者数がはるかに少ない香港、韓国、台湾の方が、日本の論文数より多かったのです。

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1779120 0 なるほど!医療 2021/01/19 10:00:00 2021/01/19 13:54:54 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210115-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

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