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生きづらさ抱える若い女性の孤独…座間事件被告と面会した橘さんは訴える

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編集委員 山口博弥

 収束の気配が見えない新型コロナウイルスの感染拡大で、生きづらさを抱える若い女性の孤独が深刻化している――。

 先日インタビューしたNPO法人「BONDプロジェクト」代表、橘ジュンさんは、そう指摘しました。4月22日付本紙朝刊解説面の論点スペシャル「孤独支援 何ができるか」での取材です。

虐待や性被害、いじめ…途方に暮れて街に立つ女の子たち

橘ジュンさん=鈴木竜三撮影
橘ジュンさん=鈴木竜三撮影

 橘さんの仕事はフリーライター。東京・渋谷の街をさまよう居場所のない女の子たちに声をかけて取材を続け、2006年、フリーマガジン「VOICES」を発刊しました。親による虐待や性被害、いじめ、貧困など、深刻な問題を抱えながら、どこにも相談できずに途方に暮れて街に立つ女の子たち。援助交際を繰り返す子や、望まない妊娠をしても病院へ行けず、家出をしている子もいた、と言います。こうした現状を見るに見かねて、09年にBONDプロジェクトを設立、生きづらさを抱える若い女性の支援活動に乗り出しました。

 橘さんの著書「最下層女子校生 無関心社会の罪」(小学館新書)を読むと、登場する若い女性たちの壮絶な人生に衝撃を受けます。

 小学校にも行かせてもらえず、自分の名前さえ書けない女性。仕事をしない彼に暴力を振るわれ、売春を強要された女性。父親の子どもを2回堕胎した女性。いじめ首謀者のわなにはまり、4人の男にレイプされた女性。自殺を図って未遂に終わったが、母親に身元引き受けを拒絶された女性……。

 橘さんたちBONDプロジェクトのスタッフは、こうしたつらさを抱えて街をさまよう女性たちに声をかけ、話を聞き、時には食事をともにし、ケースによっては行政の支援につないだり、シェルターで保護したりしています。

若い女性の孤独、コロナ禍が拍車

BONDプロジェクトスタッフ(左)と、道行く女子生徒に目を配る橘さん(東京・渋谷センター街で、2018年)
BONDプロジェクトスタッフ(左)と、道行く女子生徒に目を配る橘さん(東京・渋谷センター街で、2018年)

 記事でも紹介しましたが、同プロジェクトが昨年6月に実施した若年女性へのアンケート調査(950人が回答)では、新型コロナウイルスの外出自粛の影響で、家族関連の「困ったこと」があった人が59%に上りました。うち22%が家族からの暴言、8%が暴力でした。冒頭で紹介したように、コロナ禍のせいで「生きづらさを抱える若い女性の孤独が深刻化している」のです。

 同プロジェクトは電話でも相談事業を行っていますが、「毒親」と同居し、自由に電話することが難しい女性も少なくありません。こうした女性は、メールでも相談できます。しかし、キャリアメール(携帯電話のメール)が使えない人もいます。そこで最も手軽で便利なのは、LINEでの相談。昨年1年間の同プロジェクトへのLINEのアクセス件数は、延べ4万5000件を超えました。

LINEが命綱に

 しかし橘さんは、「本人が抱える悩みやその背景を文字だけで聞き出すのは、とても難しい」と言います。対面して話を聞いても「寂しい」とか「死にたい」としか伝えられない女性、そもそも他人に助けを求めることに不慣れな女性が多い。本人が自分から話すというよりも、橘さんたちスタッフが寄り添いながら、時間をかけて少しずつ事情を聞き出していくのです。そんな女性たちと、文字だけのやりとりで相談に乗るのが大変であることは、想像に難くありません。面談より時間も労力もかかるため、昨年のLINEのアクセス件数のうち、実際に対応できたのは半数以下の2万件弱だったそうです。

 それでも、コロナ禍で外出が難しくなった今、LINEでの相談はとても重要です。このツールこそが、「命綱」になる女性もいるはず。昨年の相談の中では、メールの約1万件、電話の約1500件、面談の約1000件に比べて、LINEでの相談件数が最も多いのです。

 同プロジェクトではこのほか、SNSで自殺願望などを投稿する人をスタッフらで捜し、相談につなげる「ネットパトロール」も行っています。SNSが、生きづらさを抱える女性の大事な居場所になっている反面、弱みにつけ込まれ、犯罪被害に遭ってしまうケースがあるからです。

座間事件の被告と面会

報道陣に囲まれ、警視庁高尾署を出る白石容疑者を乗せた車(2017年)
報道陣に囲まれ、警視庁高尾署を出る白石容疑者を乗せた車(2017年)

 LINE相談とネットパトロールを始めたのは、18年3月から。きっかけは、その前年に起きた神奈川県座間市の殺害事件です。SNSなどで知り合った男女9人を殺害したとして、強盗・強制性交殺人罪などに問われた白石隆浩被告は、昨年12月15日、東京地裁立川支部で死刑判決を言い渡され、今年1月に確定しました(この時点で彼は「死刑囚」になりましたが、以下、当時のまま「被告」と表記します)。

 橘さんは事件にショックを受け、頭から離れなくなりました。この裁判を5回傍聴し、被害女性が、自分たちのところに相談に来る女性たちにとても似ている印象を受けたそうです。そして、「なぜ事件は起きたのか」「被害女性はなぜ白石被告を選んで会おうと思ったのか」「どうしてSNSで女の子を巻き込む被害が後を絶たないのか」を白石被告に聞きたいと思い、彼に長文の手紙を送りました。返事は来ませんでしたが、諦めきれず、面会の申し込みを手紙と電報で送りました。こうして、判決の4日前の昨年12月11日午前9時から、上下黒のスエット姿に白いマスクを着けた白石被告と、分厚いアクリル板越しに面会したのでした。

 詳しいやりとりは、今年1月の「VOICES」19号に掲載されています。不快になる読者もいるとは思いますが、この中からほんの一部を抜粋します。

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2041260 0 なるほど!医療 2021/05/11 10:00:00 2021/05/10 18:55:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210507-OYT8I50097-T.jpg?type=thumbnail

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