コロナ禍でも心を元気に! ポジティブ心理学の知恵

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 山口博弥

 前回のコラムでは、新型コロナウイルスの感染拡大で外出や人との会話が減り、身体機能や認知機能が衰える「健康二次被害」についてお伝えしました。今回は、もう一つの健康二次被害であるメンタルヘルス(心の健康)への悪影響と、「ポジティブ心理学」をベースにした 心が元気になるコツ をいくつか紹介しましょう。

うつ状態の人は2倍増、自殺者も1割増

コロナ禍で、うつ病やうつ状態の人が増えている
コロナ禍で、うつ病やうつ状態の人が増えている

 経済協力開発機構(OECD)は5月、メンタルヘルスに関する国際調査の結果を発表しました。それによると、日本では、うつ病やうつ状態の人の割合が、新型コロナが流行する前は7.9%(2013年調査)だったのが、2020年には17.3%と 2.2倍 になっていました。ちなみに米国は6.6%(19年)から23.5%となり、3.6倍に急増。英国も9.7%(同)から19.2%と倍増していました。特に、若い世代や失業者、経済的に不安定な人の間で深刻化しているそうです。

 7月に厚生労働省と警察庁が発表した集計では、今年上半期(1~6月)の全国の自殺者は1万784人で、前年の同じ時期と比べて 13% (1206人)増えていました。同省は、コロナ禍の長期化や、雇用情勢の悪化などが増加の要因とみています。男女別では、男性が7170人(前年同期比7%増)、女性が3614人(同25%増)で女性の増加が目立ちます。

 コロナ禍のせいで失業し、生活が苦しくて将来に希望が持てない。外出自粛で人との会話や触れ合いがなくなってしまい、孤独で寂しい。家から出られないため親からの暴力が増え、もう耐えられない……。うつ病やうつ状態になり、場合によっては「死にたい」とまで思い詰めてしまう背景は、人それぞれです。その人が直面している状況(外的要因)を解決しない限り、元気になりようがないかもしれません。ですから、どんな人の心をも元気にする「万能薬」のようなコツは存在しないでしょう。

「ポジティブ心理学」…とにかく前向きに考えること、ではない

前野隆司・慶応大大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
前野隆司・慶応大大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授

 それでも、うつ状態になる前に、ネガティブなことしか頭に浮かばない視野 (きょう)(さく) 状態に陥らないために実践できる方法は、知っておいた方がいいと思います。そこで、「幸福学」の専門家である慶応大大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司教授に話を聞きました。「幸せのメカニズム――実践・幸福学入門」(講談社)、「実践 ポジティブ心理学――幸せのサイエンス」(PHP新書)など、多くの著書で「幸せになるコツ」を伝えています。

 少し説明しておくと、「ポジティブ心理学」は、米国の心理学者マーティン・セリグマン博士が1998年に創設した新しい学問で、「どうしたら幸せに生きられるか」を科学的に追究する心理学です。この分野の学会として、日本には「日本ポジティブサイコロジー医学会」があり、10月30日には第10回の学術集会がオンラインで開催、様々な角度からの報告があり、私も興味深く視聴しました。

 ちなみにポジティブ心理学は、とにかく前向きに考える「ポジティブ・シンキング」ではありません。8月3日のコラム 「『防衛的悲観主義』のススメ」 でも書いたように、何でも前向きであればいいわけではない。そもそもそんな人は、人生の滋味を味わえない「底が浅い人物」と周りから思われるのが関の山でしょう。ある研究では、ポジティブ感情とネガティブ感情の比率が3対1であれば、人生のあらゆる面が好転するそうです(ポジティブ心理学の世界では、もっと1対1に近いのではないか、という議論もあるらしい)。

1

2

3

スクラップは会員限定です

使い方
2488058 0 なるほど!医療 2021/11/02 10:00:00 2021/11/04 10:58:34 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/10/20211029-OYT8I50110-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)