がん患者へのケアと「思いやる勇気」

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編集委員 山口博弥

  6月26日付の読売新聞朝刊コラム面「広角多角」 で、「ユダヤ人を命がけで救った人びと」(キャロル・リトナー、サンドラ・マイヤーズ編、河出書房新社)という本について書きました。ナチスによる支配下で、死の危険を顧みずにユダヤ人の命を救った〈非ユダヤの一般市民たち〉の記録集です。

 この本を私に紹介してくださった埼玉医大国際医療センター精神腫瘍科教授の大西秀樹さん(62)についても書きましたが、今回は、大西さんとこの本のことをもう少し詳しく書きたいと思います。

「遺族外来」を開設

 私が初めて大西さんを取材したのは、弊社医療部の一記者だった2004年。大西さんは当時、横浜市の神奈川県立がんセンターの精神科医長で、緩和ケア病棟の専任医でもありました。

 同センターの緩和ケア病棟では、1年で約100人を 看取(みと) っていたそうです。亡くなった患者さんのご家族は、愛する人を亡くした悲嘆でつらい日々を過ごし、中にはうつ病になる人もいます。大西さんは、こうした家族の心をケアする「遺族外来」を、全国に先駆けて開設していました。その取り組みを取材して書いた記事は、同年7月、弊紙くらし家庭面の連載「医療ルネサンス」に掲載されました。以来、私は大西先生を機会があるごとに取材させていただき、私の後輩たちもたびたびお世話になっています。

2004年7月16日付読売新聞朝刊より
2004年7月16日付読売新聞朝刊より

「強制収容所」との共通点

 さて、冒頭で紹介した本は、最初は1997年、「思いやる勇気」というタイトルで出版されました(英文の原書は1986年の出版)。

 大西さんはそれ以前から、第2次世界大戦時のナチスによるホロコーストに関心を持ち、ビクトール・フランクルの「夜と霧」や、ノーベル平和賞作家エリ・ウィーゼルの「夜」など、ナチスの強制収容所を体験した人が書いた本を愛読していたそうです(ちなみに、「愛の対義語は憎しみではなく無関心だ」は、エリ・ウィーゼルの言葉です)。

 なぜ、がん患者の心をケアする精神科医が、こうした本に興味を持ったのでしょうか。大西さんは、こう話します。

 「アウシュビッツなどの強制収容所に連行されたユダヤ人は、貨車から降ろされると、健康状態はどうか、労働力になるか、といった『選別』が行われ、ナチスの役に立たないと判断された人間は、ガス室に送られて亡くなりました。がん患者さんが置かれた状況も、これに似ているんじゃないかな、って思ったんです」

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3140954 0 なるほど!医療 2022/07/05 10:00:00 2022/07/05 11:05:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/07/20220701-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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