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菅内閣の支持率はどこへ消えたのか――世論調査で謎を読み解く【下】

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世論調査部デスク 福田昌史

 菅首相が退陣を表明した。74%という高さでスタートした菅内閣の支持率は、1年後には31%まで落ち込んでいた。第1回(下)では、発足時の高支持率の「なぜ」を探る。

>>「菅内閣の支持率はどこへ消えたのか――世論調査で謎を読み解く【上】」は こちら
>>「菅内閣の支持率はどこへ消えたのか――世論調査で謎を読み解く【中】」は こちら

歴代3位の高支持率は「バブル」?

 そもそも菅内閣の最初の支持率(74%)が高すぎたのかもしれない。歴代1位の小泉内閣(87%)、2位の鳩山内閣(75%)に次ぐ高さだが、「自民党をぶっ壊す」と訴え、2001年の自民党総裁選で圧勝し、国民的人気を集めた小泉元首相や、09年の衆院選で民主党(当時)の大勝によって政権交代を実現した鳩山元首相の登場の時と比べると、菅内閣の船出は派手さがなく、国民の熱狂も見られなかったからだ。あのとき、誰が内閣を支持していたのか。

衆院選で応援演説をする小泉首相(中央)(肩書は当時、2005年9月8日、大阪市で)
衆院選で応援演説をする小泉首相(中央)(肩書は当時、2005年9月8日、大阪市で)

 菅内閣の発足翌月の10月から11月にかけて実施した、郵送方式による全国世論調査では、菅首相の資質の評価や、政治家への好感度の質問に加え、内閣を支持する理由や支持しない理由を自由に答えてもらった。この調査でも内閣支持率は66%と高い。分析すると、菅内閣の支持を押し上げたいくつかのファクター(要因)が浮かび上がった。

 一つめは「 安倍ファクター 」だ。菅首相は内閣発足時、安倍前内閣の取り組みを継承していくことを掲げた。これによって安倍氏を評価していた層の支持を引き寄せたようだ。安倍氏の好感度を測る感情温度(※)と菅内閣支持率との強い相関関係がそれを裏付けている。温度が高いほど支持率が高い傾向がはっきりと表れ、安倍氏への温度が70度以上になると菅内閣支持率は9割前後に達した。つまり、支持の「継承」がうまくいったということだ。支持理由(自由記述)には、「安倍前内閣を継承しているから。アベノミクスで自分の会社が成長した」(40歳代男性)など、安倍氏の政策を引き継ぐ安心感などの書き込みが多数みられた。

感情温度:政党や政治家に対する感情を温度に例えたもの。世論調査では、最も温かい場合を100度、最も冷たい場合を0度、温かくも冷たくもない中立の場合を50度として0~100度の間の数字で答えてもらっている。

「たたき上げ」「誠実さ」も高評価に

 他の支持理由としては、「長期政権を支えてきた人だから」(40歳代女性)など、安倍内閣時代の官房長官としての実績を評価しているとの書き込みも多かった。「とにかくコロナを何とかしてほしいので期待を込めて支持する」(30歳代男性)という意見を含め、実績やコロナ対応などに基づく支持も多く、「 実績・危機管理ファクター 」としてまとめられる。菅首相の資質評価を尋ねる質問では、「危機管理能力」を評価する人が「どちらかといえば」を含め58%に上り、同時に質問していた安倍氏の評価51%を上回った。

新型コロナ対応の記者会見に臨む安倍首相(右)。菅氏(左端)は官房長官として安倍長期政権を支えた(肩書は当時、2020年3月14日)
新型コロナ対応の記者会見に臨む安倍首相(右)。菅氏(左端)は官房長官として安倍長期政権を支えた(肩書は当時、2020年3月14日)

 三つめは、菅首相の「 人柄ファクター 」である。20年の自民党総裁選以降、菅氏の「世襲ではない秋田の農家出身のたたき上げ」など「苦労人」「庶民派」という人物像や、甘いもの好きでパンケーキに目がないことなどがアピールされた。人柄面での資質では、菅首相の「誠実さ」を評価する人は74%、「親しみやすさ」を評価する人は71%と高いことからも、この時のイメージ戦略が多くの有権者に「刺さった」。支持理由には、「苦労して総理になった方だから、庶民の気持ちになって政治をしてもらえると思う」(60歳代男性)のような、その生い立ちゆえ一般国民の思いが分かっているはずという内容の意見が多くみられた。

 21年に入ると菅首相の資質評価はガラリと変化した。20年10~11月調査では菅首相の指導力を64%が評価しており、安倍氏の67%に匹敵する高さだったが、21年1~2月調査では29%とわずか3か月で半分以下になった。新型コロナ対応にもたつく政府への不満などから、有権者の目には「安倍氏の高い指導力は『継承』できなかった」と映った。同様に、評価が高かった危機管理能力は、58%から25%に下がった。ただ、「誠実さ」や「親しみやすさ」などの人柄面では、それほどの低下はみられなかった。このときの内閣支持率は3割台まで低下していた(1月、2月とも39%)。それは、発足当初の「安倍氏継承」への期待や、実績や危機管理能力への期待で上積みされていた支持がはがれ落ちていった結果だった。

「安倍型」一本足打法の限界

 もう一つ、安倍氏から「らしさ」を受け継いだ面があった。「嫌われ方」だ。先に触れた「支持の継承」の裏返しでもある。20年10~11月調査では「学術会議問題で説明しないところなど、安倍政権の継承なので、何も期待できない。」(60歳代男性)、「安倍政治の悪いところばかり継承している」(70歳代男性)などの意見も多かった。

参院選で候補者にバラをつける安倍首相(右)(肩書は当時、2019年7月21日)
参院選で候補者にバラをつける安倍首相(右)(肩書は当時、2019年7月21日)

 安倍内閣(第2次以降)は、自民支持層からの支持が安定して高かった一方、無党派層や野党支持層からの不人気ぶりが目立った。その中で最長政権となったのは、自民支持層からの強固な支持によって内閣支持を安定させ、衆院選、参院選でも勝ち続けたからだろう。

 これに対し、5年5か月続いた小泉内閣の支持構造は少し異なる。自民支持層からの支持は平均84%と、安倍内閣(89%)よりやや低いが、無党派層からの支持は平均42%で安倍内閣(30%)を上回った。国政選挙は、発足間もない01年参院選と郵政解散での05年衆院選では大勝したが、03年衆院選、04年参院選は振るわなかった。それでも長期政権となったのは、幅広い人気があったことも理由の一つといえる。

 菅内閣はどちらかといえば「安倍型」だった。発足直後は無党派層からの支持も高めだったが、今年に入って3~5月の回復期を除くと無党派層の支持率は20%前後の低空飛行が続き、ほぼ自民支持層だけの上に立つ「一本足打法」だった。

 主要な国政選と地方選で敗北を重ねた上、地元の横浜市長選で全面支援した候補も敗れ、党内では「菅首相では衆院選を戦えない」との声が上がっていた。自民党役員人事を巡る混乱などで、自民支持層の「菅離れ」も鮮明になった。こうして「一本足」はやせ細り、ぐらついた。最終的に、首相には「解散権」も「人事権」も行使する力は残っていなかった。

プロフィル
福田 昌史( ふくだ・まさふみ
 世論調査に関わって20年。大学・大学院では統計学を専攻した。調査方法の研究や選挙予測も担当している。50歳。

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2397927 0 「世論」を見る 2021/09/28 14:00:00 2021/09/29 11:09:55 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/09/20210922-OYT8I50043-T.jpg?type=thumbnail

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