衆院選 出口調査から探る明暗の背景<下>

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大阪本社社会部(元東京本社世論調査部) 竹上史朗

 立憲民主党、共産党が今回退潮した原因は、無党派層をつなぎ止められなかったためだということが、読売新聞社と日本テレビ系列各局が行った出口調査で見て取れた。

比例選・無党派層はどこに

当選した候補者の札をボードにつける日本維新の会の松井代表(左)と吉村副代表。手前は片山共同代表(当時)(10月31日、大阪市北区で)
当選した候補者の札をボードにつける日本維新の会の松井代表(左)と吉村副代表。手前は片山共同代表(当時)(10月31日、大阪市北区で)

 今回衆院選で、比例選での無党派層の投票先を見ると、「立民」は24%、「国民民主党」は9%だった。前回衆院選では、「立民」30%、「希望の党」22%で計52%だったから、無党派層の多くが他党に逃げてしまったと言って良いだろう。

 この「逃げた」無党派層の票はどこにいったのか。最も流れた先は今回議席を多く伸ばした日本維新の会だ。

 無党派層で、「日本維新の会」に投票したと答えたのは、9%から19%に増えた。「維新旋風」が特に強く吹いたのが大都市圏だ。東京では前回の4%から20%に増え、南関東ブロック(神奈川、千葉、山梨)では、7%から19%になった。

 維新「発祥の地」である大阪を含む近畿ブロック(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)の強さは特に顕著で、大阪で擁立した15選挙区全て当選するなど、地滑り的な勝利だった。無党派層の維新への投票は、近畿ブロックでは35%。自民、立民がともに今回17%で、合わせても維新に及ばなかった。

 無党派層の自民党への投票は、全国では21%で、前回の19%とほぼ変わらなかった。自民は比例選で72議席を獲得、現行制度が導入された1996年以降でみると、小泉内閣時代「郵政選挙」で大勝した05年の77議席に次ぐ数字だ。この獲得議席は自民が無党派層の流出を防いだことが大きい。今回目立ったのは、前回希望に流れた無党派層の多くが維新に向かうという「野党内の票の移動」だった。

 一騎打ちとなった小選挙区では、「野党共闘」の成果が出たところもあった。秋田2区の緑川貴士氏や千葉9区の奥野総一郎氏、埼玉12区の森田俊和氏、福岡5区の堤かなめ氏は、共産の票が合算され、勝利につながった。とはいえ、各党の消長を見れば、野党共闘の効果は限定的なものだった。

補選の「成功体験」は過去のもの

 無党派層が冷ややかに見る野党共闘は、菅内閣時代も含め、最近の国政補選や地方選では、効果を挙げていた。では、なぜ、補選や地方選でうまくいった野党の選挙戦が、肝心の衆院選では効果を挙げられなかったのか。出口調査で分析すると、そのナゾを解くカギは「選挙の争点」にあることが分かる。

2019年の参院選後、入閣と初当選を支援者と喜び合う河井克行法相(右端)、案里参院議員(右から3人目)。その後、公職選挙法違反の大規模買収事件で有罪判決を受け、両者とも国会議員を辞職した(2019年9月、広島市で)
2019年の参院選後、入閣と初当選を支援者と喜び合う河井克行法相(右端)、案里参院議員(右から3人目)。その後、公職選挙法違反の大規模買収事件で有罪判決を受け、両者とも国会議員を辞職した(2019年9月、広島市で)

 今年4月の参院広島再選挙は、19年参院選を巡る自民党候補の大規模買収事件による有罪が確定して当選無効となったことに伴い実施された。出口調査では、投票に際して重視した争点を九つの選択肢から選んでもらったところ、最も多かったのが、「政治とカネの問題」。選んだ人の8割弱が、当選した野党系候補に投票した。

 8月の横浜市長選の出口調査では、最も重視した争点(選択肢八つ)について、「カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致」を挙げた人が18%、「新型コロナ対策」を挙げた人が17%で多かった。最も重視した争点として「IR」を挙げた人の4割、「新型コロナ対策」を挙げた人の5割以上が、立民が推薦して初当選した候補に投票した。

 参院広島再選挙、横浜市長選のいずれも、争点として与党に不利な条件がそろい、野党に追い風、与党には逆風が明らかに吹いていた。

 これに対し、今回の衆院選の出口調査では、11の政策争点のうち、最も重視されたのは「景気対策」だった。「景気対策」を重視する人の49%は、今回の衆院選小選挙区で自民候補に票を投じ、立民の27%を大きく上回った。

 次に重視されたのは「新型コロナ対策」だったが、選挙直前の10月の感染者数は減少傾向で、与党への逆風にはならなかった。コロナが一段落し、景気対策に期待が高まったタイミングの衆院選は、予算編成で影響力を発揮できる与党が優位に立ちやすい条件がそろっていたと言える。

 来夏には参院選がある。各党が有権者のニーズをどう敏感に読み取り、戦略的に訴えるのか。それが、次の選挙の勝敗を決することは間違いない。

プロフィル
竹上 史朗( たけがみ・しろう
 20年を超える記者生活の多くで、選挙報道を担当した。出口調査の分析なども行っている。世論調査部で衆院選準備を担当、12月からは古巣の大阪本社に戻り、引き続き選挙報道に携わる。46歳。

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使い方
2617151 0 「世論」を見る 2021/12/23 10:00:00 2021/12/23 10:19:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/12/20211220-OYT8I50073-T.jpg?type=thumbnail

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