「維新の支持層は低所得者」は本当か?<上>

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世論調査部 深谷浩隆

 今年1月以降、立憲民主党最高顧問の菅直人・元首相が、「ヒトラー」など過激な表現で日本維新の会を批判し、話題となった。しばしば炎上した菅氏によるツイッターの投稿で、気になる発言があった。大阪での維新の躍進は、「低所得者層」の支持にあると主張したことだ。この説は正しいのか。世論調査の結果から検証を試みた。

菅直人氏のツイッター投稿が論争の口火に

松井一郎・日本維新の会代表(左)と菅直人・元首相
松井一郎・日本維新の会代表(左)と菅直人・元首相

 菅氏のツイッター発言はこうだ。

「維新が国政選挙で東京に大挙進出を図ることは必至。大阪維新が都構想が否決されたにもかかわらず、大阪で絶大な政治勢力を築いた原因がどこにあるのか、研究し始めた。自治体の役人が優遇されているという、維新の『役人天国』批判に低所得者層の人達が共鳴し、支持を広げたとの分析が有力」(1月27日)

 菅氏は、これに先立つ1月21日、維新や元大阪市長の橋下徹氏について、「弁舌の巧みさではヒトラーを思い起こす」と批判するなど、維新への攻撃を続けた。東京を地盤とする菅氏が、維新の東京進出をけん制する狙いだったとの見方がある。

世論調査で解き明かす、年収と政党支持の関係性

 読売新聞社は、菅氏の発言より2日前の1月25日、全国3000人の有権者を対象に郵送方式の世論調査を発送した。「格差」を主なテーマとした調査だったため、回答者の世帯年収も尋ねており、「有権者の収入と維新支持の傾向」をおおよそ捉えることが可能だ。この結果から、「低所得層」発言の妥当性を考えたい。

まず、世論調査の対象者の世帯年収区分は、以下の通りだった。

「200万円未満」      17%
「200万~400万円未満」 31%
「400万~600万円未満」 19%
「600万~800万円未満」 12%
「800万~1000万円未満」 8%
「1000万円以上」      8%
(「答えない」5%)

 また、政党の支持率は、自民34%、維新10%、立民6%などの順で、無党派層は39%だった。

 世帯年収と政党支持のクロス集計をみると、「200万円未満」の層のうち、維新を支持している人は11%いた。菅氏が所属する立民は8%だった。

 同様に「200万~400万円未満」の層は、維新10%、立民8%。

 一方、「800万~1000万円未満」の層では、維新12%、立民4%。

 「1000万円以上」の層になると維新15%に対し、立民は4%と、年収が高い層では、維新、立民の差が広がる傾向がみられた。

 いずれの年収層も、支持率トップは自民党で、35%前後いた。

 菅氏が言う「低所得者層」の定義ははっきりしない。しかし、「200万円未満」や「200万~400万円未満」を全体の中での「低年収層」と仮定すると、維新の支持層は低年収層よりも、むしろ「800万円以上」の「高年収層」のほうが厚いといえる。

 菅氏は1月27日に、「維新に共鳴したのは低所得者ではなくむしろ『勝ち組』」との指摘を受けたことも投稿しているが、こちらのほうが実態に近いようだ。

年収区分ごとの維新支持、近畿では特有の「V字形」

 では、全国の結果と、維新が躍進するきっかけを作ったお膝元の大阪を比較すると、どんな違いがあるのだろうか。

 大阪府民に限定すると回答者数が少なくなりすぎるため、大阪府を含む「近畿」(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)に対象を広げ、世帯年収の区分も3階層(400万円未満、400万~800万円未満、800万円以上)で解析することで、データの信頼度を高めた。

 まず、近畿全体での維新の支持率は、25%とトップだった。自民(22%)を上回り、公明(5%)、立民(4%)など各党に大差をつけた。

 「400万円未満」の維新支持率は3割弱、「800万円以上」では4割弱で、それぞれ約2割の自民に水をあけた。一方、「400万~800万円未満」の中間層では2割弱にとどまって自民をやや下回った。

 比較のために、近畿を除く地域全体でみると、維新の支持率は8%となり、自民(36%)に及ばない。年収の3階層でみても、自民と維新の支持率の差は、ほとんど変化しなかった。

 近畿での維新の支持率は、全国でみられるような「年収が高い層」に加え、「年収が低い層」からも自民党を上回る高い支持を集めるが、中間層は比較的低いという「V字形」を描いていた。

 維新は、政府や行政のスリム化や、減税、規制緩和を強く訴えてきた。全国でみれば、政府や行政に頼る必要がなく、規制緩和の恩恵を受けやすい高年収の層が支持するのは理にかなっている。一方、大阪など近畿では、維新代表の松井一郎大阪市長や、副代表の吉村洋文大阪府知事らが、折に触れ、公務員の人件費削減などを訴えてきたことが所得水準の低い層からの支持につながっているようだ。

 菅氏の「低所得者層支持」仮説は、維新がより厚い支持を得ている高所得層への言及がないことから、不完全なものと結論づけられるだろう。

 ※「維新の支持層は低所得者」は本当か?<下>は6月18日公開予定です。

プロフィル
深谷 浩隆( ふかや・ひろたか
 新潟支局、政治部などを経て世論調査部。世論調査を担当しながら、ツイッターで読者投稿欄「気流」の公式アカウントを用い、投書や世論調査の紹介にも力を入れている。

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使い方
3089603 0 「世論」を見る 2022/06/17 11:00:00 2022/06/17 11:31:44 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/06/20220616-OYT8I50023-T.jpg?type=thumbnail

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