野党が批判する「棒読み」答弁…菅首相に求められるのは
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俳優の中井貴一さんは「棒読みで感情が伝わる俳優」を目指しているという。
「東京物語」など小津安二郎監督作品に欠かせない俳優だった笠智衆さんは、訥々とした口調で味わい深い人間像を演じた。「笠さんがセリフを棒読みしているように思えるのに、その中に常に感情があるようにお客には聞こえてくる」。中井さんは「すべての道は役者に通ず」(春日太一著・小学館)で語っている。「みんなはどうしてる?」「そうかい、よかった」。これだけで、どれほど家族を心配しているかを表現できる俳優になりたいと。

感情表現に乏しく、抑揚がない棒読みは「大根役者」の特徴だ。ところが、名優の棒読みは、感情たっぷりの熱演よりも心に染み入ることがあるから不思議なものだ。実力に裏打ちされた演技に加え、見ている人に伝えようという思いの強さもあるのだろう。
菅首相は11月2日から6日まで衆参両院の予算委員会に出席した。首相就任後、初めてとなる一問一答形式の国会論戦だ。「丁々発止のやりとりは苦手」(自民党幹部)とされる首相は、手元の資料を黙々と読み上げる場面が目立ち、野党は「棒読み答弁」と批判した。野党議員は「紙を読むのはやめていただきたい」「熱意が全く伝わらない」と挑発したが、首相は表情を変えずに同じ答弁を繰り返した。