後藤田氏が語る「首相の風格」とは…菅氏は官房長官から脱皮できるか
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「悪イ、本当ノ事実ヲ報告セヨ」「勇気ヲ以(モッ)テ意見具申セヨ」――。

後藤田正晴氏が残した「後藤田五訓」にある。中曽根内閣で官房長官を務めていた1986年7月、内閣官房幹部に訓示したもので、初代内閣安全保障室長の佐々淳行氏が「五訓」と名付け、語り継いだ。その翌年、中曽根康弘首相が海上自衛隊の掃海艇のペルシャ湾派遣を検討した際、後藤田氏は敢然と反対論を唱え、「五訓」を自ら実践してみせた。
官房長官退任後、自民党内では度々、「後藤田首相」を期待する声があがった。実際、総裁選への立候補も打診されたが、後藤田氏は首を縦に振らなかった。なぜ、断ったのか。後藤田氏は著書「政と官」(講談社)で、理由を明かしている。70歳を超えていた年齢に加え、「最高のポストにつく人は、それなりの風格を持っていなければならない。風格のない人が総理になろうとするところに、不幸が生まれる」と。名参謀が名リーダーになるとは、必ずしも限らないということだろう。
菅義偉首相が3月16日、就任から半年を迎えた。
7年8か月余、安倍政権を官房長官として支えた菅氏も、後藤田氏と同じく「名参謀」と評された。持病が悪化した安倍晋三首相が退陣を表明すると、自民党内の圧倒的支持を集めて総裁に選ばれ、首相の座に就いた。内閣発足直後の支持率は74%を記録し、歴代3位の好発進だった。

ところが、政権運営は順調とは言えない。新型コロナウイルス対応は「後手、後手」と批判され、接待問題など不祥事への対応も切れを欠いている。支持率はあっという間に半減した。