読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

コロナで公演中止、稽古場で至芸…逆境に立ち向かう森下洋子さんの気迫

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 祐成秀樹

 これから隔週で、演劇やバレエなど、舞台に関わる旬の話題を書きます。とはいえ新型コロナウイルス感染拡大の影響でほとんどの公演は中止。しばらくは「幻の舞台」について書かざるを得ないでしょう。劇場が再開する日に向けた予習のつもりで読んでください。

70歳超えても第一線の“レジェンド”

神秘的な美しさをたたえて踊る森下洋子さん(2014年、宮城県石巻市立石巻中学校体育館で)(C)エー・アイ 撮影:檜山貴司
神秘的な美しさをたたえて踊る森下洋子さん(2014年、宮城県石巻市立石巻中学校体育館で)(C)エー・アイ 撮影:檜山貴司

 第1回はバレエの話。70歳を超えても第一線で踊る“レジェンド”森下洋子さんの近況を紹介します。古典バレエはつま先で立ち、上体を引き上げ、型を守って踊らないといけないので、年を取るにつれて踊ることが困難になります。だからこそ森下さんが現役でいるのは奇跡的。踊ること自体が運命に(あらが)うようなものですから、いつもすさまじい気迫が感じられます。

 本来、この5月は、彼女が主演する松山バレエ団の新「白鳥の湖」の公演評を書く予定でした。「新」とあるのは、おなじみの名作を1994年に松山バレエ団総代表の清水哲太郎さんが作り直したから。主人公オデット姫と王子が悪魔と闘い、打ち勝つ姿を、他のバレエ団の上演版より濃密に描くので、見るうちに勇気をもらえます。

 何回も見た中、最も感動したのは2014年に東日本大震災の傷痕が残る宮城県石巻市の体育館で行われた公演です。森下さんの厳しさをたたえた美しさ、白鳥たちが力を合わせて悪魔を倒すラストが、復興に向けて助け合う被災地の人々の思いと共鳴したようで、観客の大半が目頭を押さえていました。

苦難背負った聖人の祈りのように

終演後、熱い声援を浴びる森下洋子さん(2014年、宮城県石巻市立石巻中学校体育館で)(C)エー・アイ 撮影:飯島直人
終演後、熱い声援を浴びる森下洋子さん(2014年、宮城県石巻市立石巻中学校体育館で)(C)エー・アイ 撮影:飯島直人

 今年は5月3、4日に東京・渋谷のオーチャードホールで踊るはずでした。森下さんが困難に立ち向かうヒロイン役を踊る姿は、不安な日々を送る観客を勇気づけると信じていました。が、緊急事態宣言の発令で、公演は中止になりました。

 ただ幸運にも、その以前に中止が発表された3月20日の神奈川公演の代わりに、同日、東京の稽古場で行われたパフォーマンスを見られました。本番通りの衣装と構成で上演されたので、森下さんの心意気の一端に触れられました。

 至近距離ですから、劇場では優雅に見える振りが、いかに力を要するかが分かります。ハッ、ハッとポーズを決める度に発する気合。つま先立ちや脚を上げる時にギュッと引き締まる筋肉。次第に汗がにじみますが、息は上がりません。

 やがて第2幕の見せ場グラン・アダージョ。悪魔の呪いから逃れられないオデットが、彼女に一目ぼれした王子に身をゆだね、恋心を高めていく。ロマンチックな場面ですが、森下さんと王子役・堀内(じゅう)さんの踊りに甘さはありません。厳しい表情で腕を広げ、胸をそらすなど磨き抜かれたポーズを決めていく。それらは愛の営みでなく、人々の苦難を背負った聖人の祈りのよう。森下さんの表現は深化し、他のバレリーナとは別の次元にいます。

パ・ド・ドゥの練習も困難に?

スタジオパフォーマンスで心を込めて踊る森下洋子さん(左)と堀内充さん(2020年3月)松山バレエ団提供
スタジオパフォーマンスで心を込めて踊る森下洋子さん(左)と堀内充さん(2020年3月)松山バレエ団提供

 こうした男女2人が織りなす美しい踊りはパ・ド・ドゥと言い、バレエの花形です。手を取り、体を合わせて展開しますから、人同士の接触を最小限にすることが求められる今、練習することが困難です。ほとんどのバレエ団は稽古場を閉鎖し、ダンサーは自主練習を強いられています。

 「バレエは、1日稽古をおこたると自分にわかり、2日おこたると仲間にわかり、3日おこたると観客にわかる」。これは森下さんの至言ですが、バレエは日常的に厳しい鍛練を要します。それだけにバレエダンサーが現役でいられる時間は大変短いものです(森下さんは例外ですが!)。早く普通に稽古できる日々が戻ってほしいものです。

プロフィル
祐成 秀樹( すけなり・ひでき
 編集委員。1989年入社。盛岡支局などを経て95年から文化部。2000年から舞踊担当、02年から演劇担当。07年から4年間は若者向き紙面「popstyle」の編集長。文化部デスクを経て、20年5月から現職。

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
1205893 0 スポットライト 2020/05/07 12:04:00 2020/06/30 15:23:49 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/04/20200430-OYT8I50062-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)