野田秀樹「再始動」…コロナ下の舞台で若手起用に込めた思い

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編集委員 祐成秀樹

 コロナ禍に猛暑が続きますが、演劇界はジワジワと元気を取り戻しています。そんな中、日本を代表する演劇人の一人、野田秀樹さんが快作を上演しました。自身の代表作を、若手俳優たちと作り上げた「赤鬼」です。そこで、今回は野田さん、そして「赤鬼」にスポットライトを当てます。

「自粛」に抗い、注目された野田秀樹

 この舞台は2020年屈指の注目作です。何より野田さん自身への関心が高い。今年3月、世を覆う自粛ムードに敢然と(あらが)って「公演中止で本当に良いのか」「ひとたび劇場を閉鎖した場合、再開が困難になるおそれがあり、それは『演劇の死』を意味しかねません」などと訴える意見書を発表しました。だが、思いはむなしく4月に緊急事態宣言が出た後は、野田さんが芸術監督を務める東京芸術劇場を始め、日本中の劇場が閉鎖されました。今回は満を持しての再開公演です。

野田秀樹さん。今年2、3月は自作の「One Green Bottle」の台湾、ニューヨーク公演を行った
野田秀樹さん。今年2、3月は自作の「One Green Bottle」の台湾、ニューヨーク公演を行った

 その上、出演者も面白い。普段の野田さんの公演は、主宰するNODA・MAPが制作し、華も実力も兼ね備えた有名俳優が出演します。ところが今回は、野田さんが指導する東京演劇道場の道場生たちの初公演。オーディションで選んだ若手が大作に挑んだのです。

 また、今年2月に発表された読売演劇大賞で、野田さんが作・演出した「『Q』:A Night At The Kabuki」が最優秀作品賞に輝いています。栄誉の次に何を見せるか、当然注目が集まります。

 演目は「赤鬼」。1996年の初演以来、日本、タイ、英国、韓国で野田さんが、それぞれの国の俳優と作って上演を重ねてきた名作です。ある漁村に漂着した異邦人が、村人たちに「赤鬼」だと恐れられるが、村で嫌われている「あの女」だけが心を通わせて助けようとする。寓話(ぐうわ)のような物語なので、演じる時や場所によって違った意味が読み取れます。それがコロナ下の日本で若者たちが上演したらどう見えるのでしょうか?

見えないものに対する恐怖心

 7月中旬、野田さんにインタビューをした時、晴れやかに語っています。

 「劇場に来るまでにどういう経験をし、どういう人生を生きてきたかで芝居は全然違って見える。人によっては赤鬼さんをコロナウイルスと思うかもしれません。見えないものに対する恐怖心がどんどん高まって違う方向にいく。そういうところを、お客さんは客観視するのでしょうね」

 「僕は淡々としゃべる芝居が得意でない。役者には、心の中をざわざわ動かしなさい、あなたの心が動いていないと、こちらは動かせませんよと言っています。精神の暴発ってそういうことです」

 「お客さんが劇場にいることを忘れさせる作品が、一番力のある芝居。そういうクオリティーにしたいと思っています」

Dチームの公演。俳優たちの身体表現も鮮やか(写真・篠山紀信)
Dチームの公演。俳優たちの身体表現も鮮やか(写真・篠山紀信)

 道場生たちは内面を鍛えられ、相当なレベルに達している様子。かくして「赤鬼」は7月24日に東京芸術劇場で開幕。道場生は17人ずつA~Dの4チームに編成され、順番に演じました。野田さんは出演せず、演出に専念。私は28日にAチーム、8月12日にDチームを観劇しました。

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1434804 0 スポットライト 2020/08/27 10:00:00 2020/08/26 19:21:38 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200825-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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