熊川哲也支えた3人が勇退 Kバレエ代替わりの意味は
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コロナ禍で活動を休止していた熊川哲也さん率いるKバレエカンパニーも10月15日開幕の「海賊」で公演を再開しました。この朗報の一方、寂しいニュースも飛び込んできました。プリンシパル(最高位ダンサー)の中村祥子さん、遅沢佑介さん、宮尾俊太郎さんが、第一線を退くというのです。彼らは、熊川さんが創作に活動の軸を移してから、Kバレエの躍進を支えてきました。そこで今回は中村さん、遅沢さん、宮尾さんにスポットライトを当てます。

Kバレエは、1999年に設立。初期は熊川さんの圧倒的なパフォーマンス、ある時期からは熊川さんが再演出した古典の名作、近年は熊川さんが創作したドラマチックな舞台で、日本のバレエ団では最高の人気を集めています。熊川版の特色は、登場人物の内面を掘り下げた筋の通った物語、小気味良く美しい振り付け、豪華な衣装や舞台装置など魅力満載。当初、熊川さんは主演も務めて全国公演もしたので、日本中にバレエファンを増やしました。
しかし、「一枚看板」のリスクは大きかった。2007年に熊川さんが「海賊」の札幌公演中に負傷して長期休演しましたが、公演をやめるわけにはいきません。そこで、急きょ、遅沢さん、宮尾さんら当時の若手が主役を務めるようになったのです。
多才な王子と笑わない男
3人の中では宮尾さんが一番有名でしょう。1984年生まれ。すっきりした目鼻立ちで見た目は王子そのもの。華やかで温かみのある踊りをします。一方でテレビドラマやトーク番組、映画、ミュージカルにも数多く出演しています。昨年はバラエティー番組「プレバト!!」で俳句の才能が評価され、本紙文化面の企画「大みそか句会」にも参加してくださいました。一方で、ユニット「Ballet Gents(バレエ ジェンツ)」を作ってディナーショーを開くなど、バレエを身近にする活動にも意欲的です。
遅沢さんは1982年生まれで、雰囲気は「笑わない男」。もちろん笑いますが、顔立ちがそう見えるのです。力強く輪郭のはっきりとした男らしい踊りをします。私は不思議と舞台外での活躍も見ています。まずは、14年のローザンヌ国際バレエコンクール。出場した生徒の付き添いで、色々と助言していました。また、バレエ・マスターを務めており、稽古場で指導する姿も見ました。音楽を口ずさんでポーズを示すと後輩たちの踊りがぐんぐん変わっていくのがすごい。作品を細部まで記憶していて、どう踊るべきかわかっているのでしょう。
欧州で頭角 熊川の目に留まる

中村さんは別格の存在でした。1980年生まれ。欧州で頭角を現し、04年、東京で開かれたガラ公演に出演した時に、熊川さんの目に留まります。この公演、私も見ました。ワルツを取り入れた作品を、中村さんは優雅に
中村さんは身長が170センチ以上もあるため、日本では釣り合う相手役を探すのは困難ですが、遅沢さん、宮尾さんは共に180センチ以上ある上に公演ごとに力をつけていた。理想的な主演ペアを得た結果、Kバレエの舞台のスケールは格段に大きくなり、熊川さん抜きでも観客を満足させられるようになりました。同時に熊川さんの創造力も刺激し、中村さんのカリスマ性を生かした「クレオパトラ」など傑作が生まれました。
進化はアーティストの性
ただ、常に進化を求めるのはアーティストの