読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

村井國夫が命がけの「獣唄」 仲間の死とコロナ感染を乗り越えて演じる

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

編集委員 祐成秀樹

 思わず泣けてしまう舞台って、1年間に何本も見られるものではありません。そうなるためには、作品自体の感銘度も必要ですが、その上に、俳優の心からの演技と背負っているものが重なると、涙腺はいや応なく刺激されます。その条件に当てはまったのが、新型コロナウイルス感染を克服した村井國夫さんの主演で劇団桟敷童子が5月25日から6月7日に上演した「 獣唄(ケモノウタ)  2021改訂版」でした。そこで今回は、村井さんと「獣唄」にスポットライトを当てます。

「獣唄 2021改訂版」で熱演する村井さん 写真・長田勇
「獣唄 2021改訂版」で熱演する村井さん 写真・長田勇

 まずは村井さんの横顔から。1944年生まれで、佐賀県出身。妻は女優の音無美紀子さん。テレビでは、旅情サスペンスドラマ「浅見光彦シリーズ」の主人公の兄で警察庁の刑事局長役、もしくはハリソン・フォードが出演する映画の吹き替えで有名です。舞台では、ミュージカル「レ・ミゼラブル」のジャベール役や「マイ・フェア・レディ」で演じたヒギンズ教授が当たり役で、主に翻訳劇で活躍してきました。豊かな低い声に 明晰(めいせき) なせりふ、役の核心をとらえた自在な演技を見せる上に、長身で色気もある。村井さんがいるだけで舞台がゴージャスに見えます。

2度の俳優生命の危機

 そんな村井さんが俳優生命の危機に直面しました。2019年12月に「獣唄」の初演に出演していた時、軽度の心筋 梗塞(こうそく) を発症して開幕から5日で降板したのです。その後、「砦」という舞台で復帰しましたが、今年の年頭に新型コロナウイルスの感染が分かり、ミュージカル「ウェイトレス」を降板しました。

インタビューで思いを語る村井さん
インタビューで思いを語る村井さん

 コロナ感染で目立った症状は出なかったものの体力が低下し、家族の支えで回復したことは5月25日の東京本社夕刊(記事は こちら )で書きました。この時のインタビューで村井さんは、率直にいろんなことを話してくださいました。そこで、紙面に書き切れなかったエピソードを紹介しましょう。

岡江久美子さんの死に衝撃

 昨年は知人の悲報が相次いで「随分嫌な思いをした」そうです。4月には新型コロナウイルスが原因で岡江久美子さんが亡くなりました。夫の大和田獏さんともども仲が良かったそうです。「お会いした2週間後ぐらいに亡くなった。ショックでした」。その数日後、「大好きだった」という文学座の名優・金内喜久夫さんも87歳で病死して「がっかりしました」。そして、9月には、ベテランのミュージカルスター・藤木孝さんが自ら命を絶ち、さらなる衝撃を受けました。「かわいらしくて、舞台に立つことがうれしくて仕方のない人でした。自信をなくすぐらいショックでした」

「いつ死んでもおかしくない、一本一本を大事にしたい」

葉巻がトレードマークだった(1999年撮影)
葉巻がトレードマークだった(1999年撮影)

 趣味の葉巻についても語ってくれました。「マイ・フェア・レディ」のヒギンズ教授が葉巻をたしなむ役だったため、火の付け方や持ち方を練習するうちに手放せなくなったもので、村井さんを知る人にとってはトレードマークみたいなものでした。ただ、さすがに体調を崩してからは吸えなくなったそうです。「唯一の趣味だったのに。今は芝居だけが趣味みたいなものになりました」。そして実感をこめて語りました。「僕もいつ死んでもおかしくない年になった。出演作一本一本を大事にしていきたい」

桟敷童子に出演を直訴

 また、今回、客演した劇団桟敷童子と主演作「獣唄」には、並々ならぬ思い入れがありました。桟敷童子は東京で有数の人気劇団です。作・演出を手掛けるのは福岡出身の主宰の東憲司さん。自身の原風景である九州の炭鉱町や海辺、山間部で生きる男女の伝奇的な群像劇を、劇団員が総出で組み立てる大がかりな舞台装置がそびえる芝居小屋のような空間で見せてきました。その世界観が、同じ九州育ちの村井さんの原風景とも重なったことから、2010年に東さんに出演を直訴。念願がかなって、村井さんを主役に「獣唄」が書かれたのです。

 ここまで読んでいただいて、お分かりの通り、今回の舞台は運命的な巡り合わせで実現したように思えます。私は、あえて千秋楽の7日を選んで東京都墨田区のすみだパークシアター倉に向かいました。

残り:1563文字/全文:3658文字
読者会員限定記事です
新規登録ですぐ読む(読売新聞ご購読の方)

1

2

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
2150833 0 スポットライト 2021/06/24 10:00:00 2021/07/01 18:41:04 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210622-OYT8I50041-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)