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「せかす政治」がもたらしたもの

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編集委員 伊藤俊行

 突貫工事と聞くと、欠陥品ができるわけではないのに、作業が雑でなかったか、部品が抜けていないか、不安になることがある。

 5月3日で施行74年となる日本国憲法の誕生の経緯も、そうだった。

連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官
連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官

 連合国軍総司令部(GHQ)のマッカーサー最高司令官が独自案の起草を米軍准将のGHQ民政局長に命じたのは、1946年2月1日。民政局は第16代米大統領リンカーンの誕生日である2月12日を締め切り日と定め、作業を急いだ。

 わずか10日ほどで一国の基本法の草案を書いた民政局は、その後も日本側をせかし続けた。

 米国は、まだ13州だけだった1787年に自国の憲法を作る際も、出席を拒んだ州や到着が遅れた州があったのに、11州で制定会議を始めた。「善は急げ」というより「急ぐことが善」と考えるのだろうか。

 そういえば第46代バイデン大統領も、政権の外交・安全保障の実務者の陣容が固まらないうちに「中国包囲網」作りをせかした。米国の習性かもしれない。

 米国にせかされて欠陥を抱えたまま、長く修繕なしで風雨に耐えた憲法も、人工知能(AI)など制定時になかった技術や概念の登場で、リフォームが要ると考える国民は多い。

国会で開かれた衆院憲法審査会
国会で開かれた衆院憲法審査会

 そんな声と裏腹に、国会の憲法審査会が国民投票の利便性を高める法改正の議論で堂々巡りを続けてきたのは、採決を急いで国会が分断されれば、国全体に分断が波及すると懸念したためだ。だから、採決に反対して憲法の中身の議論に入らせない戦術が効いた。

 大型連休明けに衆院で採決される展望が出てきたとはいえ、75年前の突貫工事と正反対の姿勢がもたらした時間の恵みを、憲法の熟議に生かさずに来たのは残念だ。「せかす政治」の方が良いとなりかねない。

 政策の決定や遂行には、時にスピードも必要だ。

 それでも、実務者に準備の暇を与えず、熟議を省けば、政治は粗くなる。即断こそ「政治主導」で、熟議の度合いは議論の深さでなく、長さで測ると考える政治家が増えていないか。

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2026870 0 広角多角 2021/05/03 10:00:00 2021/05/03 10:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210502-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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