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「半信半疑」の東京五輪…対策と意義、思い発信を

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編集委員 近藤雄二

 東京五輪の開幕が、23日であとひと月を迎える。といっても、本来あるべきワクワク感は、まだない。4~6日に本紙が行った世論調査では、五輪・パラリンピックについて「開催する」が50%、「中止する」が48%と意見が分かれた。そう、目前の開催に「半信半疑」なのが実情だ。そこで、この大イベントをなぜ開くのか、改めて考えてみたい。

東京五輪の開会式が行われる国立競技場
東京五輪の開会式が行われる国立競技場

 東京が大会招致に成功したのは8年前。2013年9月7日、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会で、IOC委員の投票で決まった。当時のジャック・ロゲ会長が「TOKYO」と告げた瞬間、現地で、東京で、日本中で、歓喜が爆発した。以来、日本の人々が、あれほど一つになって喜んだことがあっただろうか。

 東日本大震災の2年後だった。招致演説では、震災や挫折を乗り越える希望となるスポーツの力を前面に出し、パラリンピアンの谷真海さんらのスピーチなどで、IOC委員の心をつかんだ。震災からの力強い回復を世界にアピールする「復興五輪」。その訴えが、招致のカギとなった。

 一方、投票前には懸念もあった。海外でも報じられた東京電力福島第一原発の処理水問題だ。しかし、当時、IOCのディック・パウンド委員は「安全な選択」を勝因に挙げた。処理水問題があっても、確実な開催能力がある東京なら任せられるという「信頼感」が、決め手の一つとなったのだ。

2020年夏季五輪の開催都市を「東京」と発表するIOCのロゲ会長(当時)=ロイター
2020年夏季五輪の開催都市を「東京」と発表するIOCのロゲ会長(当時)=ロイター

 大会準備は、新国立競技場のデザイン変更など曲折はあったが、何とかIOCの期待に沿って進められた。激震が走ったのは昨年。新型コロナウイルスの感染拡大で3月24日、史上初の五輪延期が決まった。世界中へ広がった感染拡大で、国際社会も延期を支持した。

 それから1年余。コロナ禍は続くが、ワクチン接種の進展で世界情勢は変わった。15日には米カリフォルニア州が経済活動を全面再開し、欧州でも5月にはフランスやドイツで飲食店のテラス席営業が始まった。

 スポーツ界も、米大リーグではマスクなしの応援姿が目立つ。11日にはサッカーの欧州選手権が11都市での分散開催で開幕。15日にブダペストで行われたポルトガル―ハンガリー戦には5万人超のファンが集まった。

 一方、国内では、プロ野球やJリーグで、マスクの着用や消毒の徹底、声援を控えるなど様々な感染対策を講じたうえ、人数制限をした有観客開催が行われている。五輪・パラリンピックに向けては、選手に頻繁な検査や行動制限を求め、違反に対する罰則も打ち出すなど、厳しい感染対策を設けることになっている。

 今月英国で開催された先進7か国首脳会議(G7サミット)では、東京五輪・パラリンピック開催への支持が首脳宣言に明記された。これも海外情勢に加え、日本国内の感染状況や対策を見て、「日本なら、東京なら、任せられる」という、「信頼感」の表れだろう。

 東京が掲げた「復興五輪」には、当初の「震災からの」という意味に「コロナ禍からの」という思いが加わった。それも「世界の人々が」という大きな枠組みだ。そこに、今や世界も期待を寄せている。ならば、その信頼に、応えたいではないか。

 ただ、国民はまだ「半信半疑」なのだ。都や政府、IOCや組織委員会には、「半疑」を取り除くべく、開催への対策、意義、思いなどをとことん発信してほしい。そして、開催が実現するなら、「おもてなし」は不十分でも、世界から集う選手たちが力を存分に発揮できるような雰囲気作りを、何より進めたい。残り1か月。私たちは再び、一つになれるだろうか。

プロフィル
近藤 雄二( こんどう・ゆうじ
 編集委員。1991年入社。早大時代に箱根駅伝3度出場。アテネ、北京、ロンドン、リオデジャネイロの夏季五輪4大会を現地取材。2009年春から12年秋までロンドン特派員。19年にフルマラソンで2時間44分16秒をマーク。生涯一ランナーがモットー。

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2142258 0 広角多角 2021/06/21 13:25:00 2021/06/21 14:03:52 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210621-OYT8I50006-T.jpg?type=thumbnail

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