似た境遇の人求めて、思わぬ人と出会う…お便り欄で広がる世界

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編集委員 森川暁子

 きょうは読者の投稿欄の話を。といっても担当は「気流」ではない。ひとりのページ「シングルスタイル」のお便り欄だ。一部地域では掲載されていないので少し説明すると、独身者やひとり暮らしの人、「ひとり時間」を充実させたい人を想定したページだ。お便り欄はその左隅にあり、担当者がコメントつきで手紙などを紹介している。年に2回ほど、ページ全部を使う「お便り特集」がある。

 大きな反響をいただくのは、助けを求める便りを掲載したときだ。<パートナーを亡くした方がどうやって立ち直ったのかを知りたい>などの問いに、体験やアイデア、励ましがどっと寄せられる。親しい人には話しにくいテーマを、こうして新聞の読者コミュニティーに預けていただけるのは、本当にありがたい。

 助けを求める投稿者は多くの場合、自分と似た境遇の人を求めている。共通体験をした人の励ましは心強いからだ。<連れ合いに先立たれた人の声を><未婚の若い人の話を>などさまざまな要望をいただく。ただ、呼びかけてもピンポイントで似た人からの反応があるとは限らない。担当者としては冷や汗が出る。

 最近、夫の単身赴任などで急にひとり暮らしになり、孤食に慣れないという50代の女性(仮にA子さんとする)の<(寂しさは)心の持ちようで変わるのでしょうか>という声を掲載した( 記事はこちら )。

 数件の反応があり、「寂しさ対策」を書いてくださった何通かを、お便り特集に含めて載せた。A子さんの反応がちょっと気になったのは、A子さんのような単身赴任家庭からの便りが1通だけだったからだ。

 特集に掲載した全18通のうち、多くはA子さんとは無関係に届いたもので、骨折しても子供に頼らずひとり暮らしを続けたい70代女性や、婚活がはかどらない30代男性など、思い思いに「ひとり」のありようを記していた( 記事はこちら )。

 読んだA子さんからメールが来た。<皆さんひとり生活を前向きに考えながら、気持ちを持っていってるんだな、と励まされました。最初は自分と同じ境遇の人の声を想像していましたが、色んな方の言葉にふれて、世界が広がったようでうれしいです>と書いてあった。読み方の柔軟さに、少しほっとした。

 人は情報を好みで選ぶ。私の場合、個人的には若者より中高年、家族より単身者のことを書いた記事をよく読んでいる(と思う)。自分と境遇がかけ離れた人の記事はスルーしがちなのかもしれない。好みで見るものが偏るのは至極当たり前だが、インターネットでは、検索行動などが反映され、いつの間にか自分好みの情報ばかりに包まれている「フィルターバブル」という状態ができあがる。ときどき「自分で世界を狭くしてないか」と心配になることがある。

 A子さんのように、予想していなかった人たちの言葉にふれ、気が楽になったり、悩みが相対化されたりする出会いは、やはりあったほうがいい。

 新聞は、投稿してくれる読者の数にも、掲載できる投稿数にも限りがある。似た誰かを探すなら、SNSなどのほうが効率的かもしれない。だが、思わぬ人とふと出会うには、限られた広さにいろいろな記事や言葉が詰め込まれる新聞にも、利がありそうだ。

 もともと「ひとり」にテーマを絞ったページとはいえ、担当者が選んだものにすぎないとはいえ、この紙の上での出会いがなるべく多様になるように、日々便りを蓄積している。きょうはメール2通と封書1通、はがき1通、ファクス1通。通信手段もまちまちだ。ご参加に、深謝です。

プロフィル
森川 暁子( もりかわ・あきこ
 1966年生まれ。大阪社会部に21年在籍し、阪神大震災被災者の取材や、お便りコーナーなどを長く担当。2016年から東京勤務で、ひとりのページ「シングルスタイル」編集長を務める。ツイッターは @y_singlestyle  20年12月に、ページを書籍化した「読売新聞『シングルスタイル』編集長は、独身・ひとり暮らしのページをつくっています。」(中央公論新社)を出版。

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使い方
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