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映像大量消費の時代…「つまみ食い」せずにかみしめたい

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大阪本社文化部次長 稲垣収一

 例えるなら、時間制食べ放題の豪華バイキングだろうか。全部食べてみたいけれど、すぐ満腹になるのはもったいない。そこで手っ取り早く一口ずつ……。似たような感覚で、映画やドラマなどを早送りで見る人が増えているという。

 市場調査会社「クロス・マーケティング」の調査によると、動画の「倍速視聴」経験者は20歳代で49%。コロナ下の巣ごもり需要でネットフリックス、アマゾンプライムなどの定額制配信が定着し、映像作品の大量消費時代を迎えた。会話は早口になるが、筋書きを数多く知るのが目的なら効率はいい。一品のありがたみが薄れた結果とも言える。

 スマホで短い動画に慣れ、映画を長く感じる人もいるらしい。ユーチューブには短い動画で映画のあらすじを見せる「ファスト映画」が続出。一部投稿者は先月、映像や画像を無断使用したとして、著作権法違反容疑で宮城県警に逮捕された( 記事はこちら )。これも「つまみ食い」需要があったのだろう。

 ビジネスの現場でも、最近は「すき間時間」「タイムパフォーマンス(時間対効果)」が言われるようになった。恥ずかしながら「見ておく」「知っておく」ために映像を見て、我が指がつい早送りボタンに伸びることは確かにある。

 しかし、倍速視聴がこの先、さらに進むとどうか。30分がもったいない、失敗は時間の無駄だからと近道を急ぐ。寄り道の喜び、失敗から得る発見などは望むべくもない。大事な何かを失わないのかしらと考えるうち、思い浮かんだ例の一つが、戦争の記憶をつなぐ営みである。

「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」から
「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」から

 この夏、全国公開される「8時15分 ヒロシマ 父から娘へ」は、原爆投下前後の広島を舞台にした映画だ。製作総指揮は米国在住の臨床心理医・ 美甘みかも 章子さん(59)。父・ 進示しんじ さんから体験を聞き取り、日米で出版した本を基に51分の英語作品に仕上げた。進示さんは完成後の昨年10月、94歳で亡くなっている。

 筋書きを単純化すれば「悲惨な被爆体験」に尽きるわけだが、美甘さんは米国への「共感」と「許す心」を持った父のメッセージをスマホ世代の若者にも伝えたかったという。再現したやけどは特殊メイクでリアルさを追求し、場面構成も若者への訴求力を意識した。

 「原爆が戦争を終わらせた」という正当化論も根強い米国で、作品は米国人の監督やスタッフに支えられた。「知るだけでは、原爆投下もフランス革命も同じ。父の生き方を身近に感じてもらうことで、時空を超える物語になれば」。美甘さんはそんな映像の力を信じ、今後は米国内での展開も検討する。

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