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あの戦争を実感できるか

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社会部次長 木下敦子

 自分が体験していないことを、人間は実感できるのか。そしてそれを後世に伝え得るのか。

 毎年8月15日が来るたびに、私たちは改めてこの問いを突きつけられる。

 「それを実感と言えるかどうかは分かりませんが、しかし私は強烈に、感じることはできました」

山上貴広さん
山上貴広さん

 〈レイテ島案内人〉を名乗る山上貴広さん(29)は言った。見た目は優しげな旅好きの青年。ただ、やっていることは骨太だ。コロナ禍前の5年間、1人で何度もフィリピン・レイテ島に足を運んでは、現地に残る約30か所の戦没者慰霊碑を探し当て、史実を調べ、実際に訪れてもらうためのモデルコースを示した案内書を昨年、刊行した。

 もともと戦争に興味があったわけでも、身近に戦没者遺族がいるわけでもなかったという山上さん。2013年にフィリピンを襲った台風の被災地ボランティアとして翌14年4月に同国を訪れた時、仲間に誘われてたまたま慰霊碑を訪ねる機会があった。

レイテ島にある戦没者慰霊碑(山上さん提供)
レイテ島にある戦没者慰霊碑(山上さん提供)

 レイテ島の戦いで、日本軍は約8万の兵を投入し、生き残ったのは約2500人とされる。「生存率3%の島」の激戦地・リモン峠の慰霊碑の前に立った時、山上さんは「ここで実際に命のやりとりがあったと思うと、言葉にならない衝撃を受けた。それまで自分事として捉えられなかった戦争が、本当にあった出来事としてすごく納得できた」という。

 重い歴史を見つめることは苦しい。だが、知ることで扉は開く。

 市井の家族の歴史について、さまざまな文献をひもといて調べる「ファミリーヒストリー記録社」(東京)の代表・吉田富美子さん(59)は、「軍歴証明書」の重みに注目している。

軍歴証明書(ファミリーヒストリー記録社提供。本籍地など個人情報は消してあります)
軍歴証明書(ファミリーヒストリー記録社提供。本籍地など個人情報は消してあります)

 どの部隊に所属し、どの戦いにどんな任務で従軍したか。旧日本軍への入隊から退役までの個人の足跡を公的に記した軍歴証明書は、親族が厚生労働省や都道府県に申請すれば発行してもらえる。

 詳細に記されている場合もあれば、たった1行しか情報がないケースもあるが、戦争という極限状態でその人が実際に 辿たど った「 なま の戦史」がそこにある。

 吉田さんの記録社が昨年、軍歴を解読して書物にまとめるサービスを始めると、ぽつり、ぽつりと依頼が来るようになった。依頼したある女性は、祖父が中国戦線で約30か所も移動・転戦していたことを知る。

 「戦争を生き抜いた祖父の存在が、今の私たちの礎になっていると思うと感慨深い」と思いを明かす。

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