1・17から27年…記憶伝える覚悟 世代を超えて

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大阪本社文化部次長 稲垣収一

 2021年の暮れに舞台を た。大阪の老舗劇団・関西芸術座が上演した「ブンヤ、走れ! ~阪神・淡路大震災 地域ジャーナリズムの戦い~」。27年前の震災で、社屋が壊滅的な被害を受けた神戸新聞社の記録を原作とする物語である。

上演された「ブンヤ、走れ! ~阪神・淡路大震災 地域ジャーナリズムの戦い~」(関西芸術座提供)
上演された「ブンヤ、走れ! ~阪神・淡路大震災 地域ジャーナリズムの戦い~」(関西芸術座提供)

 主人公は当時新人、今は論説委員の女性記者。社を訪れた中学生に経験を語る形で話は進む。描かれたのは、自ら被災する中、伝える意味を自問し、悩みながら新聞発行を続けた記者や販売店関係者の使命感だ。

 劇団代表の門田裕さん(67)は「関西の劇団として、記憶をとどめなければと思った」といい、若い劇団員には当時の資料などで追体験して演じるよう求めた。耳が痛い昨今の新聞離れも隠れたテーマだが、「新聞は災害時の貴重な情報源。後世に教訓を伝える役割もある。業界へのエールを込めた」と語る。

 舞台ならではの迫力もあって、当日は時々じわっと来た。あの寒い朝の記憶と、業界にいる人間としての感慨が入り混じったらしい。

各所で発生した火災の煙で、真っ黒に覆われた神戸市内(1995年1月17日)
各所で発生した火災の煙で、真っ黒に覆われた神戸市内(1995年1月17日)

 私事である。1995年1月当時は神戸で下宿する大学4年生。自宅アパートの隣家は軒並み倒れ、遠くで友人が何人も家屋の下敷きになった。やがて火が回り、近所は焼け野原になった。「終戦50年でまた振り出しや」。仮設の銭湯で一緒に並んだおっちゃんの言葉は今も覚えている。

 その春記者になって以来、神戸の被災地や国内外の災害現場も取材したが、記憶にはフタをした。当時の取材を知らない引け目だろうか。「ブンヤ――」で見るような先輩世代との壁を勝手に感じていた。

 あの時記者だったら、と思うと逃げ出したくなる。伝える覚悟を迫られる怖さだったのかもしれない。

 続いて地下鉄サリン事件が起きた95年は、都市の安全神話が崩壊し、高度成長期のひずみが噴出した戦後史の転換点といわれる。経験者にとって、阪神大震災は同世代を形作る共通の記憶の一つとも言える。

 だが今、その記憶を「歴史の一コマにしないで」と訴える若者たちがいる。震災後生まれの約30人で作る語り部グループ「1・17希望の架け橋」。兵庫県立舞子高校(神戸市)環境防災科で学んだ代表の藤原祐弥さん(19)が、1年余り前に有志らと結成した。

 語り部といっても内容は伝聞だ。いずれ起こる次の大地震にどう備えるか。家族の経験や街頭インタビューで聞いたことを基に話し、SNSでも発信。経験者の物語を同世代、次世代に向けてつないでいる。

 藤原さんは東日本大震災や熊本地震の被災地で支援活動に加わるうち、覚悟を決めたという。「経験のない自分が語っていいのか、という葛藤はあった。でも自分たちが今やらないと、経験が風化してしまう」

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