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マッハ10超で戦闘機の試験飛行が強行される。その予算を無人機開発に回したかった軍幹部は、怒りを抑えて「君たちパイロットは絶滅する」と言い放つ。

トム・クルーズさん演じるベテラン飛行士は「そうだとしても、今日ではない」と静かに応じる。
無人戦闘機だけで戦う時代になるまで、脅威が待ってくれるわけではない。映画「トップガン マーヴェリック」の序幕は、軍事技術のリードタイム(発注から納品までの時間)と、脅威の高まるスピードとの終わりなき競争について考えさせられる。
4月の財政制度等審議会の分科会で配られた財務省作成の資料「防衛(資料は こちら )」には、装備品(兵器)のリードタイムは「5年程度」で、研究開発段階のものだと「およそ10年以上」とある。
ロシアによる隣国の侵略は、今回の参院選で防衛費増額を主要争点にした。
世論の関心も高く、円安で海外からの調達費もかさむ中で、増やす是非より、「どれだけ増やすか」に視線が向く。

映画のように脅威の除去に残された時間が3週間という極端な状況ではなくても、日本の隣には軍備増強で地域の緊張を高める中国や、ミサイル発射実験を繰り返す北朝鮮がいる。
まず、自衛隊の「
将来に向けて何を準備するかという構想力も、求められる。リードタイムから見て疑問のある既存計画を見直す勇気も、ほしい。増額の規模を競う「勢い」だけの議論は、危うい。
もちろん、争点は安全保障だけではない。
この政策は良くても、別の政策は支持できないといった悩みは、選挙につきものだ。政策より既存政党の否定を訴え、SNSで存在感を高める団体もある。迷うにつけ、有権者も「勢い」に流されやすくなる。
その点、読売新聞オンラインでも出来る「 ボートマッチ 」は、立ち止まって考える良い機会をくれる。投票先に考えていた党のマッチ度が57%、長続きしないと見ていた党が69%という結果には、さすがに公約の再点検をしたくなった。
一つの政策に絞って選ぶにせよ、「勢い」任せでは落とし穴にはまる。
資料「防衛」は、各方面で論争を巻き起こした。

1両14億円の10式戦車より、ウクライナ軍が露軍戦車を撃破した携帯型ミサイル、ジャベリンの方が発射装置2億7000万円と弾1発2300万円だから安上がり――。単純化された記述が反発を招いた面もあるが、「勢い」でなく冷静に持続可能な防衛態勢を考える材料も見つかる。