[論点]五輪混雑緩和 鉄道業界が総力…若林 久氏

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わかばやし ひさし 1972年、伊豆箱根鉄道入社、2006年、同社社長。12年から西武鉄道社長。18年から関東鉄道協会会長。70歳。
わかばやし ひさし 1972年、伊豆箱根鉄道入社、2006年、同社社長。12年から西武鉄道社長。18年から関東鉄道協会会長。70歳。

 2020年東京五輪の開催が、来年に迫ってきた。国内外から東京を訪れる観光客の急増が予想される。競技会場はもとより周辺地域でも、この機に足を延ばしてもらおうとPR施策を講じている。

 だが、鉄道事業者としては手放しで喜んでばかりはいられない。東京五輪では、競技会場の最寄り駅を持つ大手鉄道会社を中心に、「超」のつく混雑への対応が求められる。安全に、安心して利用できる状況を確保しなければならない。

 日本の鉄道は世界一安全で正確だと評されているが、この特殊な期間を乗り切るために、鉄道各社は様々な検討を進めている。

 例えば、会場の最寄り駅のように確実に混雑が予想される駅には、券売機や改札機を増設したり、駅係員・警備員の増配置を行ったりといったハード・ソフト両面での対策が必要となろう。会場の最寄りでなくても周辺にある駅については、どれほどの混雑が、どの時間帯に起こるのかなどは予測が難しい。

 こうした問題に対して、情報通信技術を用いることで、解決を試みる動きがある。その一つに、混雑状況などをリアルタイムでスマホを使って発信し、利用者と共有できるサービスがある。実現すれば、鉄道事業者の混雑対策に役立つだけでなく、利用客も混雑を避けることができるだろう。

 また、鉄道事業者は、通常の駅名とは別に、英字や数字などによる「駅番号」を各駅に付ける取り組みを進めている。日本語に慣れていない訪日外国人でも、駅を識別しやすくするためだ。また、路線図・料金表の多言語化も進めている。

 西武鉄道でも、ハード面での整備のほかに、駅係員や乗務員のサービス向上策として、英語での対応を積極的に行うよう取り組んでいる。降車駅などの車内アナウンスは自動音声に任せるのではなく、車掌が英語で伝える取り組みを進めている。英語に対する苦手意識の克服を狙っている。

 また、公共交通機関として、高齢者や障害のある方への対応も必要だ。東京五輪期間中は、自由に身動きが取れないほどの混雑も予想される。係員の配置増や、降車用スロープなど用具の十分な確保も必要だ。

 鉄道会社は、生産年齢人口の減少などの問題も抱えている。各社がそれぞれに対策を講じていては、解決は難しい。東京都を中心にした「2020TDM(交通需要マネジメント)推進プロジェクト」は、鉄道会社など様々な業界が協力し、道路交通の混雑緩和などに取り組もうとしている。

 私の出身地である伊豆・箱根地域は、東京から電車1本で広大な海や自然に触れられるため、ここ数年で訪日外国人を中心に、観光客数は増えている。しかし、鉄道業界の働き手不足は深刻で、他地域には運営維持すら難しい鉄道もある。

 東京五輪対策で得た知見を、鉄道業界は幅広く共有していかねばならない。観光対応を充実させるだけでなく、普段から、より快適に利用していただける公共交通機関を目指したい。

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686786 0 解説 2019/07/12 05:00:00 2019/07/31 10:11:08 2019/07/31 10:11:08 論点/西武鉄道、若林社長 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190711-OYT8I50099-T.jpg?type=thumbnail

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