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女性の不調 寄り添う新技術…「フェムテック」に脚光

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 女性の健康を新技術で支えるフェムテックと呼ばれる分野の製品やサービスが世界で注目されている。次世代型の生理用品やオンラインによる相談、診療システムなどが登場し、国内でも普及に向けて企業や国などの取り組みが活発になってきた。女性が言い出しにくい生理や妊娠、不妊、更年期に伴う不調や悩みに対応し、生活の質を高めていくことが目的だ。(大阪生活教育部 満田育子)

◆フェムテック 「女性(female)」と「テクノロジー(technology)」からなる造語。2010年代に欧州の起業家が提唱し、欧米を中心に取り組みが広がった。日本では関連企業や商品が急増した20年が「フェムテック元年」と言われる。

生理用品開発/相談アプリ

不安を解消

 製品で注目を集めるのは、経血を吸収する「吸水ショーツ」や、ちつに挿入して経血をためる「月経カップ」など次世代型の生理用品だ。ナプキンでは、仕事などで長時間取り換えられないときや経血量の多いときに、不快に感じたり、下着が汚れたりする心配がある。そうした不安を解消できるよう開発された。繰り返し使えて環境にもやさしい。

「ミチカケ」には吸水ショーツや月経カップなどが並ぶ(4月15日、大阪市北区の大丸梅田店で。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を受けて、売り場は現在休業中)=杉本昌大撮影
「ミチカケ」には吸水ショーツや月経カップなどが並ぶ(4月15日、大阪市北区の大丸梅田店で。新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言を受けて、売り場は現在休業中)=杉本昌大撮影

 大丸梅田店(大阪市)は2019年11月、全国に先駆けてこうした商品を扱う売り場「ミチカケ」を開設した。生理や女性の健康をテーマにセミナーも開く。売り場を企画した高橋知世さん(36)は「来店客が、不調や悩みを相談できる場になっている」と話す。

 参入も相次ぐ。19年に設立された「フェルマータ」(東京)は国内外の企業と連携し、40点以上の商品を販売する。杉本亜美奈代表(32)は「フェムテックを、女性がタブーから解放され、自分の体をよりよく知るためのムーブメントにしたい」と語る。

 衣料ブランド「ジーユー(GU)」は3月に吸水ショーツを発売。生理用品大手の「ユニ・チャーム」も月経カップを開発し、4月末から販売を始めた。

福利厚生に

 体調管理を助ける女性向けのアプリ、不妊の悩みや更年期の不調などを医師らに相談できるサービスも増えている。

 「エムティーアイ」(東京)は、生理日や基礎体温を記録し、生理周期や体調を管理できるアプリ「ルナルナ」を10年に開発し、いち早く普及させた。「ネクイノ」(大阪市)が18年に始めたアプリ「スマルナ」は、生理痛やPMS(生理前の不調)、避妊について医師のオンライン診察が受けられ、不調の改善にも効果があるピル(経口避妊薬)の処方を受けられる。

 企業が福利厚生に活用する動きも進む。

 総合情報サイトを運営する「オールアバウト」(東京)は、スマルナを昨年3月に試験導入。女性社員の1割が低用量ピルの処方を受けた。利用した社員(42)は生理痛とPMSを鎮痛剤でやり過ごしていたが、「ピルで症状が和らいだ。職場に不調を伝えやすく、気が楽になった」と話す。

 丸紅は昨年11月、女性社員によるフェムテックビジネスの開発チームを設けた。ニーズを探る狙いもあり、生理に伴う不調の受診や更年期の相談をオンラインでできるサービスを4月に試験導入した。

品質の基準作りへ議論

 欧米では約10年前からフェムテック関連の起業が活発になった。携帯型の母乳搾乳機や、痛くない乳がん検査機器、卵子凍結サービスの開発など幅広い分野に及ぶ。米調査会社フロスト・アンド・サリバンは、世界の関連市場は25年に500億ドル(約5・5兆円)規模になると予測する。

 国内では、ナプキンを「医薬部外品」として扱うなど生理用品の品質基準は医薬品医療機器法で示されている。しかし、吸水ショーツなど近年、登場した製品の多くは同法の規定外の「雑品」扱いで品質基準がなく、効能も示せない。

 こうした事態を打破しようと昨年10月、自民党に「フェムテック振興議員連盟」(野田聖子会長)が発足。商品、サービスの質や安全性の基準を示せるよう、厚生労働省や関連企業と協力して審査基準を設けることを目指している。事務局長の宮路拓馬衆院議員は「生理や妊娠、更年期のケアという、政治の場で語られることの少なかった課題に取り組みたい」と力を込める。

 経済産業省が18年に働く女性2400人に行ったアンケートでは、52%が「女性特有の症状によって仕事の場で困った経験がある」と回答。こうした症状や妊活、妊娠、出産によって仕事の目標を「あきらめなくてはならないと感じた」人も43%いた。

 フェムテックを活用したビジネスモデルを作ろうと、同省は今年度、企業や医療機関などの連携事業約20件に助成金を出す。川村美穂・経済社会政策室長は「生理や更年期の不調で昇進をあきらめる、不妊治療と仕事を両立できず離職するといった望まない選択を防ぐ方策を示したい」と話している。

ナプキン以来の大変革

 「生理用品の社会史」の著書がある立教大兼任講師の田中ひかるさんは、フェムテック市場の拡大を、女性にとって1961年に国産のナプキンが開発されて以来、ほぼ60年ぶりの大きな変革だとみる。

 それ以前は、脱脂綿などで不便な処置をしていたが、ナプキンを使うと便利で快適なため爆発的に売れ、女性の社会進出を支えた。

 フェムテックも価格が適正か、品質や効能、安全性が確保されている製品やサービスであるかが、普及に向けたカギを握りそうだ。田中さんは「女性のニーズにこたえ、問題の解決に役立つことが大切。新たな市場としてしか捉えず、ビジネス目的の印象を与えると消費者の信頼を得られないだろう」と指摘する。

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2085313 1 解説 2021/05/29 05:00:00 2021/05/29 05:00:00 2021/05/29 05:00:00 「ミチカケ」では吸水ショーツや月経カップなどを扱うブランドが出店する(4月15日、大阪市北区の大丸梅田店で。コロナの緊急事態宣言を受け、売り場は現在休業中)=杉本昌大撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210528-OYT8I50091-T.jpg?type=thumbnail

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