[レビュー]国立劇場三月歌舞伎公演 東京・半蔵門の国立劇場(3日所見)…印象的な桜の景色

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 久しぶりとなる国立小劇場での歌舞伎は、東京五輪・パラリンピックにあわせた文化イベント「日本博」の幕開きとして、舞台上の桜が印象的な2作品を並べた。中村扇雀と尾上菊之助が、それぞれの初役で新境地を切り開く。

 真山青果作の「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊きょう」は昭和の新歌舞伎。大石内蔵助は登場しないが、敵討ちに向けた彼の苦悩を、後に六代将軍となる徳川綱豊に語らせるのが芝居の趣向である。扇雀の綱豊が登場すると舞台が華やぐのは、上方歌舞伎で培った朗らかな芸風ゆえだろう。

 扇雀は口跡が鋭いところもあるが、「めでとう浪人らに、本望遂げさせてやりたいのう」と、権力者の側にありながら、赤穂浪士に寄り添う温かい人間味を感じさせる。綱豊の本音を引き出す役回りの儒学者、新井勘解由かげゆには中村又五郎を配した。

 浪士の富森とみのもり助右衛門を綱豊が問い詰める後半は、中村歌昇の助右衛門が抜擢ばってきによく応えた。幕政批判もはばからない純情一途いちずな青年が、綱豊に挑発されて敵討ちを焦る身の震えが伝わる。二人の丁々発止のせりふと夜桜の下での立ち回りは、小劇場ならではの緊迫感が高い。

 続いて舞踊劇の名作「積恋雪関扉つもるこいゆきのせきのと(関の)」。菊之助が国崩しの敵役、大伴黒主おおとものくろぬしに挑んだ。女形、二枚目にとどまらず、「兼ねる役者」を目指して芸道を歩んでいる。中村梅枝ばいしの小町桜の精が古風で魅力的だ。

 「御浜御殿」は闇に浮かぶ夜桜、「関の扉」は雪に映える桜。陰と陽で対照的な景色だが、観客が桜に思い描く心象風景と重なってドラマの感動を盛り上げる。(演劇評論家 大矢芳弘)

 ――27日まで。

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