「実現しなかった建築」展

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ウラジーミル・タトリン「第3インターナショナル記念塔」のCG動画より(1998年、映像制作:長倉威彦)
ウラジーミル・タトリン「第3インターナショナル記念塔」のCG動画より(1998年、映像制作:長倉威彦)
黒川紀章「東京計画1961-Helix計画」の模型
黒川紀章「東京計画1961-Helix計画」の模型

 実際に完成した建築物の陰には、何らかの事情によって実現しなかったものが数多く存在する。そんな20世紀以降の「建てられなかったもの」に焦点を当てた「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」展が、24日までさいたま市の埼玉県立近代美術館で開かれている。

 未完の建築には大きく分けて2種類ある。一つは、実現を前提に構想したが設計競技(コンペ)に敗れたり、経済的または制度的な条件に合わなかったりしてお蔵入りになったもの。もう一つは、実現性よりも大胆なアイデアの提示を優先した「夢想の建築」だ。

 約40組の建築家らのアイデアを図面や模型、スケッチなどで紹介する本展は、ロシア革命記念に構想されたウラジーミル・タトリン「第3インターナショナル記念塔」(1919~20年)から始まる。

 高さ400メートルの塔を建てる経済力、技術力は当時なかったが、前衛芸術運動「ロシア・アバンギャルド」を象徴するこのプロジェクトは、後世の建築家に大きな影響を与えた。残された図面に基づき、この展覧会のために作られた模型や、1998年に建築家の長倉威彦が制作したCG動画で、地軸と同じ角度の傾きを持つ二重らせん構造の塔の奇抜さやスケール感を知ることができる。

 爆発的に増加する東京の人口への対応策を示した、黒川紀章きしょう「東京計画1961―Helix計画」や菊竹清訓きよのり「海上都市1963」などは、実現しなかったが、彼らが提唱した建築運動「メタボリズム」の思想を周知させるのに一役買った。同時代の英国の前衛建築家集団「アーキグラム」も奇妙な「動く建築」で都市の概念を揺さぶった。

 ほぼ年代順に並ぶ本展の最後は、ザハ・ハディドと日建設計などによる「新国立競技場」(2013~15年)。建設費などが問題で白紙撤回されたことを記憶している人は多いだろう。無数の細い管がつなげられた風洞実験用の模型や何冊もの分厚い「実施設計書」が、着工間際でのご破算だったことを物語っている。

 欲を言えば、1990年前後の「エアロポリス2001」「X―SEED4000」といった、高さ1000メートル超のハイパービルディング構想の紹介があればよかった。昨今高さ1000メートルの建築が現実味を帯びてきていることもあるが、「夢想の建築」と、同時代のSF漫画など他分野との影響関係を示す例でもあるからだ。

 ともあれ監修者の五十嵐太郎・東北大教授は「最近の日本の建築界は保守化している」と指摘する。本展を見ると、様々な事情で「不可能」だった建築がその可能性を広げ、未来に実現した建築の血肉となって息づいていることが分かる。本展は、大胆な構想力を発揮しきれていない現代の若い建築家や、建築家を目指す人への叱咤しったも込められている。(文化部 森田睦)

487488 1 エンタメ・文化 2019/03/14 05:00:00 2019/03/14 05:00:00 2019/03/14 05:00:00 ウラジーミル・タトリン「第3インターナショナル記念塔」のCG動画より(1998年、映像制作:長倉威彦) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/03/20190313-OYT8I50073-T.jpg?type=thumbnail

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