[見える落語]恐怖から笑いへ、落差に醍醐味…皿屋敷

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大阪本社文化部

 「見える落語」は、落語の名場面を、時代劇の撮影で知られる東映京都撮影所(京都市)の俳優が芝居で再現します。第4回の演目は「皿屋敷」です。怪談(ばなし)ですが、そこは落語、お菊の幽霊もちゃめっ気たっぷりです。

※動画は、東映太秦映画村(京都市)のオープンセットで撮影しています。

 「皿屋敷」は、上方落語の代表的な怪談噺の一つだ。舞台は播州・姫路。人形浄瑠璃や歌舞伎の「播州皿屋敷」でも知られるお菊伝説を踏まえている。

増していく恐怖を「膝」で表現

 戦後の上方落語を支えた「四天王」の一人、三代目桂春団治(2016年死去)は、とりわけ所作の美しさに定評があった。この演目は、同じく「四天王」の桂米朝から教わり、独自のアレンジを加えて、練り上げた。

姫路の屋敷には、家宝の皿10枚のうち1枚を紛失したぬれぎぬで井戸に投げ込まれて殺されたお菊の幽霊が出て、恨めしそうに皿を数えるという。うわさを聞いた男たちは、肝試しを思いつく。「9枚まで数える声を聞くと死んでしまう」「7枚で逃げれば大丈夫や」
姫路の屋敷には、家宝の皿10枚のうち1枚を紛失したぬれぎぬで井戸に投げ込まれて殺されたお菊の幽霊が出て、恨めしそうに皿を数えるという。うわさを聞いた男たちは、肝試しを思いつく。「9枚まで数える声を聞くと死んでしまう」「7枚で逃げれば大丈夫や」
屋敷への道中、一人が怖がって「帰りたい」と言い出す。「ぞうぞうと寒けがして、たまらん」「ほな帰れ。その代わり、これからは友達って顔するなよ」
屋敷への道中、一人が怖がって「帰りたい」と言い出す。「ぞうぞうと寒けがして、たまらん」「ほな帰れ。その代わり、これからは友達って顔するなよ」
屋敷には、美人で評判になったお菊の幽霊をひと目見ようと、毎晩、見物人が訪れるようになる。ある夜、風邪をひいて喉の調子が悪そうなお菊は、延々18枚まで数えてにっこり。「2日分数えておいて、明日の晩は休みますのんや」
屋敷には、美人で評判になったお菊の幽霊をひと目見ようと、毎晩、見物人が訪れるようになる。ある夜、風邪をひいて喉の調子が悪そうなお菊は、延々18枚まで数えてにっこり。「2日分数えておいて、明日の晩は休みますのんや」

 例えば、お菊の幽霊が出る屋敷に向かう男の足取りの表現。初めは好奇心で勢いもあるが、だんだん恐怖が増して重たくなり、最後には首をすくめて速足になっていく。その心理を、座ったまま膝を上下させる動作のスピードで、巧みに描き出した。高座の翌日は「腰が痛い」とこぼしていたという。

「女の情念まで見える生々しさ」

 見せ場である幽霊の登場シーンでは、両手を前に垂らし、右肩を少し落として、体をひねりながら、ゆっくりと膝立ちになった。「線を細く哀れに、しかも美しく」を心がけていたという。「女の情念まで見えるような生々しさがあった」と、弟子の四代目春団治(春之輔を改め2018年に襲名)が回想する。

雰囲気一変、幽霊が人気者に

 後半、雰囲気は一変。幽霊は、まるでアイドルのような人気者になって、見物客が押し寄せる。三代目は「怪談噺が突然、滑稽噺のようになる。この落差が面白い。前半を生真面目に演じればこそ、後半のどんでん返しが笑いになる」との芸談を残した。

 単に怖がらせるだけではない。恐怖と笑い、緊張と緩和の落差こそが、「皿屋敷」の醍醐(だいご)味なのだろう。話芸の深遠にふれた思いがした。

「見える落語」役者プロフィル

 「見える落語」シリーズ「皿屋敷」は、お菊の幽霊役を小林茉利江、見物に訪れる男役2人を山根誠示、山本辰彦が演じました。

無断転載禁止
1072850 0 エンタメ・文化 2020/02/26 14:05:00 2020/03/26 10:47:07 2020/03/26 10:47:07 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/02/20200220-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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