読書嫌いでSNSばかりのトランプ大統領が「自国第一主義」を唱えるワケ
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新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、仕事や学習、買い物や余暇など暮らしの中でオンラインの利用が増えた。多くの人が色々な情報をパソコンやスマートフォンなどデジタル端末で入手している。この流れは更に加速しよう。
政府がコロナ禍を受けて計画の3年繰り上げを決めたため、今年度中に全国の小中学校で児童生徒に1人1台学習用端末が行き渡る予定だ。情報通信技術を用いた授業が本格化する。明治以降の「紙の教科書」主体の教育からの大転換といえる。
これを機に、読む行為について考えてみたい。
新著「デジタルで読む脳×紙の本で読む脳」が評判の米国の著名な神経科学者、メアリアン・ウルフ氏に電話で見解を聞いた。(編集委員 鶴原徹也)
天性ではない「読み書き」
ヒトが文字を読み、書くことは当然だと私たちは考えがちです。違います。読み書きはヒトの天性ではありません。発明です。

人類は20万年ほど前にアフリカ大陸に出現したとされています。言語は数万年前には誕生し、文字は6000年余り前に作られたと考えられます。人類史の中では相対的に最近のことです。最初は、群れをなす野生動物の頭数の筆記といった単純な内容でした。
見る・聞く・話す・嗅ぐといった行為は遺伝子でプログラムされています。それぞれの行為に対応する神経回路が脳に備わっている。乳児は周りを見て、においを嗅ぐ。幼児になれば、言葉を発し、簡単な意思表示もできます。
読み書きは遺伝子に組み込まれていません。では、どうやって身につけるのか。
大人が忍耐強く文字を教える必要があります。やがて幼児は文字が一つ一つ違う音に対応し、そのまとまりが意味を持つことに気づき、記憶する。この時、脳内で文字と音と意味を結びつけた、全く新しい複合的な神経回路が発明されている。脳の柔軟さが読み書きを可能にするのです。
単語の連なる文章を理解することは単純ではありません。脳に巨大な連結器のようなものができて、文字・音・意味を結びつける基本的な複合回路を次々と素早くつなぎ合わせることが必須です。文章の意味をくみ取るために、脳は大車輪の働きをしている。
私流に言うと、「読む脳」の誕生です。「読む脳」は経験を重ねて成長します。子供は読むことで育つともいえます。