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北村匠海・LiSA…2020年音楽界、一発撮り演奏動画チャンネルが存在感

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 ネット発のヒット曲が生まれる中、「THEFIRSTファーストTAKEテイク」(以下、F/T)というユーチューブチャンネルが急速に存在感を高めている。演出を排除した白いスタジオで、アーティストが1曲を歌い、演奏するのみの動画を見せるシンプルなもの。だからこそ、むき出しの感情が伝わってくる。年末にあたり、7月に掲載された本紙記事を改めて紹介する。(清川仁)

息づかいやクセ、むき出しの素顔…5730万回再生も

 「フゥ……。お願いします」「緊張してます」。マイクに向かう歌い手が、失敗が許されない環境下の心情を素直に吐露する。発声練習やブルブルブルと唇を震わせるウォーミングアップの様子も生々しい。

Little Glee Monster
Little Glee Monster

 F/Tは統一した様式の下で、様々なアーティストに演奏を披露してもらうミュージックビデオ。昨年11月にユーチューブ上に開設されたチャンネルで、現在までに43本の動画が公開され、チャンネル登録者数は150万人を超えた。

「夜に駆ける」を歌うYOASOBIは自宅収録
「夜に駆ける」を歌うYOASOBIは自宅収録

 昨今人気の動画は、ダンス、CG、アニメーションなど手を尽くして視覚に訴える。対して、F/Tはマイクが置かれた空間で歌や演奏の様子を切り取るだけ。ただ、情報が少ない分、視聴者はアーティストの息遣いや一挙手一投足まで集中して観察してしまう。カメラは歌い手らの手元、口元、微妙に震える表情を大映しに。収録したものをそのまま流す「一発撮り」のため、緊張感がビリビリ伝わってくるのだ。

女王蜂のアヴちゃん
女王蜂のアヴちゃん

 シンプルだけに個性が表れやすい。ロックバンド、女王蜂のアヴちゃんは背中が大胆に開いた衣装や高いヒールで目を引く。シンガー・ソングライター、さユりは座布団にあぐらをかいた路上弾き語り時代のスタイルを披露――。

押尾コータロー、DEPAPEPE、崎山蒼志によるギターセッション
押尾コータロー、DEPAPEPE、崎山蒼志によるギターセッション

 見せ方のコツを、プロジェクトに携わる「TBWA HAKUHODO」の清水恵介クリエイティブディレクターが語る。「静止画と動画の間を考えた。人間の顔は情報量が多いが正面は直視し続けるのがつらいので、横顔を映すのが基本」と。コードを指に巻き付けるなどの癖も浮き彫りになるが、さらけ出される部分こそ、その人の魅力なのだという。

抜群の再生回数を記録している「紅蓮華」を歌うLiSA
抜群の再生回数を記録している「紅蓮華」を歌うLiSA

 F/Tの認知上昇の契機は昨年12月に公開されたLiSAの「紅蓮華」。24日夕時点で、5730万回とダントツの再生回数を誇る。楽曲自体のヒットに引っ張られた面も大きいが、F/T発のヒットも増えている。

 注目すべきは、4月の緊急事態宣言以降、チャンネル登録者数が90万人以上増えたこと。コロナ禍でアーティストが配信ライブに試行錯誤する中、この時期に合った方式が既に構築されていたといえるのだ。同宣言により、F/Tは一時、「THE HOME TAKE」というアーティストの自宅で撮影する形に移行。シンプルな形式が功を奏し、F/Tに見劣りしない動画が届けられた。

崖っぷちの気分で歌った北村…3年前のシングル併録「猫」大化け

「DISH//」北村匠海
「DISH//」北村匠海

 F/Tの成功を象徴する曲がバンド、DISH//のバラード「猫」だ。3年前のシングルの併録曲だったが、約4か月で3200万回再生を突破。歌番組「ミュージックステーション」初出演につながるなど、他メディアに勢いが波及した。俳優でもあるボーカルの北村匠海は、メンバーの演奏音源に合わせて一人で歌を収録。張り詰めた面持ちのまま感情をぶつけた歌唱で人々の胸を揺さぶった。北村が語る。

 LiSAさんら先輩方の歌を聴いてビビっていたので、歌い切ることが全てでした。「100万回行けば拍手だね」とメンバーと話していたので、僕らが見たことのない再生回数に驚きです。数字よりコメント欄を読むのがうれしいです。「歌ってみた」動画を上げる人や、「猫」以外の曲も聴いてくれる人がいて、色々な人に届いていることを実感します。

 F/Tではスタジオに僕一人で、逃げ場のない崖っぷちに立たされた感じ。立ち向かうしかないけど、歌っていてどんどん不安になっていく。結局はいつも通り歌うしかなくて、メンバーの演奏にずっと耳を傾けていました。苦しくて喉が詰まるような感覚でしたが、そこに打ち勝った自分も確かに感じられました。

 僕たちは9年前、楽器が弾けないバンドとして始まり、技量も人生経験もなく、バラードを歌わせてもらえない時期がありました。でも、必死で練習し、色々な経験をして大人になっていく過程で、「猫」が僕たちの中で花開いた感覚があった。あいみょんが、僕の出演映画「君の膵臓すいぞうをたべたい」を見て作ってくれたこともあり、自分たちにも響く大切な曲です。

 僕にとって歌はうまい下手ではなく、届くことが全て。バラードを歌わせてもらえなかったのも、心を動かせなかったから。こうした感情のとらえ方と、DISH//が歩んできた道が一つになった感覚が、「猫」という曲にはあると思っています。

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1363436 0 エンタメ・文化 2020/07/25 05:00:00 2020/12/16 16:16:26 2020/12/16 16:16:26 抜群の再生回数を記録している「紅蓮華」を歌うLiSA https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200724-OYT8I50028-T.jpg?type=thumbnail

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