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綾野剛、ギラギラした目を持つ男…「生きるために必要なことは全て役に教わった」

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不器用で寡黙な刑事役、映画「ドクター・デスの遺産」

 「まなざしを向けただけでも、物語の生まれる瞬間がある」

 その言葉にうそはなかった。カメラの前に立つと、空気が一変した。難病患者に苦痛のない死をもたらす怪物的な医師「ドクター・デス」を追う刑事が、そこにいた。

 13日公開の映画「ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―」は、中山七里原作のクライム・サスペンス。演じた警視庁捜査一課の犬養隼人は、妻を亡くし、腎臓病を患う一人娘を育てる。そのまな娘が病院から姿を消し、相棒の高千穂(北川景子)が制止するのを振り切り、暴走する。

「ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―」では、綾野と北川が演じる警視庁のコンビが犯人を追いつめる(C)2020「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」製作委員会
「ドクター・デスの遺産―BLACK FILE―」では、綾野と北川が演じる警視庁のコンビが犯人を追いつめる(C)2020「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」製作委員会

 犬養は、不器用で寡黙な男だ。「下手な芝居に見えたとしても構わない」。意図的に長い沈黙を挟み、とつとつとセリフを口にした。監督の深川栄洋は、ドキュメンタリーを撮るように、その姿を粘っこく追う。見る者はひりひりとした焦燥感にさいなまれる。

 同じ刑事ものでも、今年放送されたテレビドラマ「MIU404」で見せた、小気味よいセリフ回しとは対照的だ。「退屈だと感じる人もいるかもしれない。そこに、刑事であり父でもある男の人間味があぶり出される」

 役になりきるには、「綾野剛」は邪魔だと思ってきた。だが、40歳を前に変わった。自身と役をしっかり「握手」させる。そして、体温を移してやる。「カメラが回る直前まで、役にエールを送っている感じかな」と少し笑い、続けた。「生きるために必要なことは全て役に教わってきた。いいことも、悪いことも」

「ヤツの目にほれた」…名伯楽、意地の23テイク

 初めて出会った役が、人生を決めた。「仮面ライダー555(ファイズ)」(2003~04年)で、怪人スパイダーオルフェノクに変身する青年。人間を襲う前、まるで儀式のように、紙マッチの火で折り紙を燃やす。主役であるライダーの敵役の一人だ。

 21歳。高校を卒業した翌朝、半ば衝動的に故郷の岐阜を出てから3年余り。東京でバンドマンやモデルをしていたが、「俳優になる気なんてなかった」と振り返る。

 主要キャストが既に決まり、撮影も放送も始まっていた番組のオーディションに足を運んだのは、「小遣い稼ぎになれば」と思ったからだ。

 最初に撮影したのは、台本で数行、わずか30秒ほどのシーン。指示通りに少し歩き、一言二言セリフを言うだけ。「すぐに終わる」とタカをくくっていたが、監督の石田秀範から、OKが出ない。

 「違うな」「伝わらない」「やる気がないなら帰れ」。ダメ出しを浴びて、イライラした。こんなの、まるで生けにえだ。殴ってやろうか。もうたくさんだ――。「テイク15」「16」「17」……。爆発寸前だった。

 「OK」。あきれたスタッフは、とうにどこかへ行ってしまったらしい。現場は閑散としていた。1時間半近くたち、重ねたテイクは23。「ま、100点じゃないけど、赤点でもねえよ」。さらりと言い、石田は去った。

 特撮もの一筋の石田は、「平成仮面ライダー」シリーズで、後に新人時代の佐藤健や菅田将暉らも指導した名伯楽だ。23テイクの理由を、「綾野の可能性に賭けた」と明かす。「オーディションでヤツの目にほれました。ギラギラしていた」とも。

 「いざ本番となったら学芸会。納得いかないわけですよ。1ミリでも成長させたくて、その日の撮影を全部止めて意地になった」。綾野の、親指の腹が真っ黒になっていたのを覚えている。「片手で紙マッチに点火する動作を何度も練習してきたんだろう。見上げたヤツです」

ダメ出し22回、決めた「役者になる」

 ワンカット演じるのがいかに大変なことか。ましてや、一つの役をやり遂げるまでに、どれほど努力を積み重ねなければいけないのか。初めての「OK」をもらったとき、身をもって知った。同時に、「役者になる」と決めた。

 「大人があれほどの熱量で向き合ってくれたのは初めて。心臓が動き出した気がしたんです。この人を驚かせたい、喜ばせたい。そのためにがんばりたい」

「映画サイズ」の綾野が今回も渾身の演技を見せる(C)2020「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」製作委員会
「映画サイズ」の綾野が今回も渾身の演技を見せる(C)2020「ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-」製作委員会

 脇役の怪人は、すぐに倒されるのが宿命だ。1年の撮影期間のうち、役を生きたのは3か月にすぎない。全てが終わり、開かれた打ち上げの会。隅で焼酎のグラスを傾けていた石田が言った。「綾野は映画だと思う。“映画サイズ”だから、映画をやりなさい」

文・山田恵美

写真・横山就平

■綾野剛(あやの・ごう)の歩み

1982年 1月26日生まれ、岐阜県出身

2003年 「仮面ライダー555」で俳優デビュー

 12年 NHK連続テレビ小説「カーネーション」出演

 15年 主演映画「新宿スワン」(園子温監督)公開

 20年 連続ドラマ「MIU404」で星野源とダブル主演

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1625728 0 エンタメ・文化 2020/11/14 09:59:00 2020/11/14 13:35:11 2020/11/14 13:35:11 映画「ドクター・デスの遺産」に主演する、俳優の綾野剛さん。東京都江東区で。2020年10月5日撮影。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201109-OYT1I50033-T.jpg?type=thumbnail

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