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出演作が相次ぐ女優、伊藤

舞台演出家・脚本家として活躍する山田佳奈の長編初監督作品で、2013年に初演した同名の舞台を映画化した。劇中でカノウは、周囲からちやほやされる女性をウサギ、それをうらやましく見ている女性をタヌキに例える。
「私もどっちかっていうと、タヌキの人生を歩んできたので――」と伊藤。芸能界も、いわく「露骨な世界」。周囲の大人や男性の目は「かわいい子」「有名な子」に向き、なかなか自分を見てもらえない。そのことが向上心につながったものの、「大げさに言えばトラウマにもなった」という。
「どうせウサギにはなれないと悟った時、タヌキの人生を全うしようと、カノウは考え方を変えた。与えられた立場を楽しんで生きられたらいい、という部分にすごく共感しました」

主な舞台は女性従業員の待機場所。様々な駆け引きがあり、時に本音をぶつけ合う。その中でカノウは、主人公なのに一歩引いている。「カノウは発信するというよりは受信するタイプで、それは私の今回の群像劇に対するスタンスと同じ。この作品はみんなのキャラクターが立っていた方が面白いので」
撮影現場で感じたことを大事にしたい、共演者の出方に素直に反応したいという理由から、「がちがちに役を作り込んでいくことはしない。それだと一人芝居になっちゃうし、みんなで作り上げていった方が面白いから」。取材中何度も、「みんな」という言葉が出てきた。
子役時代から数々の作品に出演し、シリアスなドラマもコメディーもこなす。NHKの連続テレビ小説「ひよっこ」に出たかと思えば、本作のようなインディーズ映画にも出演。今年はテレビアニメ「映像研には手を出すな!」で声優としても注目を集めた。
「規模が大きかろうが小さかろうが、面白い作品に携わりたい。役の大きい小さいもあんまり気にしないです」。本作は、冒頭の長い独白をやってみたかったことも、出演を決めた一つの理由という。
「向き不向きは置いておいて、全てを1回は経験したい。医者とか弁護士とか“頭いい系”の職業をまだやっていないし、最近いい人の役が多いので、極悪人もやってみたい」
業界はまだ伊藤沙莉を使いきれていないですね――。そう水を向けると、一瞬考えた後、「そうかもしれないですね!」と、カメラ目線でおどけてみせた。