真っ黒に日焼けした井上真央、顔ゆがめ米俵を担ぐ…女性は「強くならざるを得なかった」
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1918年(大正7年)に富山県で起きた「米騒動」を軽妙なタッチで描く「

富山の貧しい漁村。いと(井上)は、3人の子供を抱える賢い母親。夫(三浦貴大)が季節労働で不在の間、家庭を支えるため、肉体労働にいそしむが、米の値段は高騰するばかり。不満から、浜のおかか(女房)たちと起こした小さな騒ぎが、「暴動」として新聞に載ってしまう。
「夫から『学問で腹がふくれるわけではない』と言われる場面が象徴するように、当時の女性の役割は労働に励んで家族を食べさせることでした。女性にとって、自分のやりたいこともできず、意見も通らない社会の厳しさに思いをはせました」

見どころは、当初は不安な表情を浮かべていた、いとが、社会と向き合ううち、母として、おかかたちを引っ張る存在として、たくましく成長していく姿だ。
「強くならざるをえなかった、というのが本当のところでしょう。現代は、困ったらいろんな人にSOSを出せる環境にあるけれど、当時の女性は自分で何とかしなければならないという思いで生きていたはず」
地元出身の本木監督が約20年前から温めてきた題材。出演者も、室井滋、立川志の輔、柴田理恵ら、富山出身の俳優らが集い、地元の女性たちもエキストラで大勢参加している。「みなさん小さい頃から米騒動のことを聞いて育ち、もしかしたら先祖が関わっていた人がいるかもしれないわけで、作品への思い入れの強さを感じました。そのパワーに背中を押されていました」
いま、「米騒動」について思いを新たにしているという。「大事なのは、おかかたちが、大きく世の中を変えるつもりで動いたわけじゃないということです。ただ、子供や旦那さんにおなかいっぱいになってもらいたいという小さな願いが積み重なった結果として、社会を動かしたのです」
そして、こう言葉を添えた。「だから現代でも、世の中が平和になるために必要なものは、そうした一人ひとりのささやかな望みなのだと思います」