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「最近、芝居がうまくなってきたな」渡哲也が舘ひろしに痛烈なダメ出し

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<STORY1>

「渡さんを演じているような気が」…映画「ヤクザと家族」

 何をやってもさまになる人なのだと、つくづく思う。

米田育広撮影
米田育広撮影

 29日公開の映画「ヤクザと家族 The Family」では、ドラマ「あぶない刑事」などのダンディーな刑事役でおなじみの舘が、ヤクザの組長、柴咲を演じているのだが、これがまた、いかにも堂々としているのだ。黒のサングラスに白いマフラーで、さっそうとスクリーンに登場する場面から、ただ者ではないオーラが漂う。70歳を迎えても、持ち前の男の色気は枯れるどころか、むしろ増している。

新作でヤクザの組長を演じた。右は寺島しのぶ (c)2021「ヤクザと家族 The Family」製作委員会
新作でヤクザの組長を演じた。右は寺島しのぶ (c)2021「ヤクザと家族 The Family」製作委員会

 ヤクザの世界でしか生きられなかった一人の男、山本(綾野剛)の20年にわたる悲哀を描く人間ドラマだ。移り変わる社会の中で、義理と人情を重んじる昔かたぎの柴咲と、山本の関係性が物語の軸となっている。

 「脚本がすごく良かったんです。ヤクザの組織という疑似的な家族を通じて、『家族』というものを、鮮明に浮かび上がらせているところが素晴らしいと思いました。今の時代にヤクザの役というのはリスキーだと、会社からは反対されたんですけれども、どうしてもやりたいと言って、出演させていただきました」

 脚本・監督は、藤井道人。監督作「新聞記者」(2019年)で日本アカデミー賞の最優秀作品賞を受賞するなど、注目の気鋭監督だ。藤井が今作で、舘に託したのは、「優しい父親像」だったという。

 その父性が強烈ににじみ出るのが、身寄りを亡くし、自暴自棄になっていた山本の頭をやさしくなでながら、〈行くとこあんのか?〉とほほ笑みかける場面だ。「それまで突っ張ってきた山本が、フーッとこう、子犬のような、無垢むくな目になって、わっと涙があふれ出てくる。あそこがもう、僕は秀逸だと思うんですね」

 交わされる「家族」としての契り。それは男と男の絆にも映る。一呼吸置いてから、こう静かに切り出した。

 「あのう、僕はねえ、実は渡さんを演じているような気がしていたんです」

 渡哲也。「おやかたさま」と呼んで、慕い続けてきた俳優だ。昨年8月に亡くなった。

 「知らないうちに、渡さんがせりふを言っているような。僕は年の割には今まで、親分のような役をやってこなかったから、モデルとして、渡さんだったら、こういうふうに言うだろうか、ああいうふうに接するだろうか、という感覚が常にありました」

小芝居はしない、俳優は存在感で画面を支える

テレビドラマ「西部警察」で渡哲也(右)と
テレビドラマ「西部警察」で渡哲也(右)と

 渡と初めて会ったのは29歳の時。テレビドラマ「西部警察」への出演が決まり、記者発表を前に、2人で会おうと連絡があった。その時のことは、今でも鮮明に記憶している。場所は、東京・青山の秩父宮ラグビー場近くの喫茶店だった。

 「僕より先にいらしていて、店に入っていくと、パッと立ち上がって、『舘君ですね。渡です』って、握手をしてくれました。それまでに接した映画スターは、だいたいソファに座ったままで、そんなふうにちゃんと接してくれた人は一人もいませんでしたから。ある意味、衝撃的で、すごく心に残りましたね」

 撮影現場で接するうち、そのまっすぐな姿勢に、どんどん傾倒していったという。共演が縁となり、83年には、渡がいる「石原プロモーション」に所属することにもなった。

 「でもね、僕は渡さんから芝居は教わってないんですよ。芝居について話をしたことは一度もないんです。渡さんから教わったのは、俳優としての在り方だけでした」

 思い出すことがある。たった一度だけ、渡からしかられた時のことだ。「西部警察」の撮影にも慣れ、芝居をすることがだんだんと楽しくなってきた頃だった。アドリブで、軽い乗りの芝居を入れてみたりしていた。

 「それを見ていた渡さんから、『ひろし、お前、最近、芝居がうまくなってきたな』って言われたんです」

 痛烈なダメ出しであることは明らかだった。

 「それはどういうことかと言うと、小芝居をするなということだと思うんですよ。俳優は存在感で画面を支えろということだと。もっと言えば、演じるんだったら、その人物の人生を丸ごと演じろと。そんないちいち細かいところを演じるなと。俳優であることと、芝居がうまいこととは、全く別のことなんですね」

 「石原軍団」は、大スターの石原裕次郎が率いていたが、見てきたのは、渡の背中だけだったという。

「ひろし、お前には華があるよ」…その言葉を頼りに

 「僕はねえ、まだ渡さんが亡くなった気がしないんです。死に顔を見てないんで。それは、静かに送ってほしいという渡さんの遺志で、完全な家族葬でしたから」

 渡とは今でも、夢で会っていると明かす。

 「つい先日も、渡さんがまだ生きている夢を見ましたよ。『生きてたんですかあ。みんな心配してましたよ。ダメですよ、だましちゃあ』なんて。どっかで、亡くなったことを信じたくないって気持ちがあるからなんだろうけれど、実際、僕の心の中では変わらずに生きてるんですね」

 40年近く所属した、石原プロモーションは、16日で業務を終了する。裕次郎の妻で、会長を務めるまき子の加齢や体力低下で実務が難しくなったことが理由だ。

 「渡さんと共演するようになってから、1、2か月たった頃だったかなあ。『ひろし、お前には華があるよ』って言われました。それが今でもすごくうれしくて。本当に華があるかどうか、自分ではわかりませんけれど、僕はいまだにその言葉を頼りにして、俳優をやっているんです」(右田和孝)

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1773877 0 エンタメ・文化 2021/01/23 09:13:00 2021/01/23 09:26:13 2021/01/23 09:26:13 映画「ヤクザと家族」に主演する、俳優の舘ひろしさん。東京都港区で。2020年12月14日撮影。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210115-OYT1I50081-T.jpg?type=thumbnail

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