葛飾北斎の錦絵「桜に鷹」 天保5年(1834年)頃(すみだ北斎美術館蔵) 江戸時代を代表する浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849年)の錦絵(多色摺り木版画)「桜に鷹」の制作に使われたとみられるオリジナルの版木が、東京都内の美術商の所有品の中から見つかった。北斎の一枚摺りの錦絵の版木は、米ボストン美術館が1点所蔵しているが、国内での確認は極めて珍しい。
葛飾北斎の「桜に鷹」制作用と見られる版木(左側)が貼られた火鉢。右は「詩哥写真鏡 春道のつらき」用の版木の下半分と見られる=米田育広撮影 見つかった版木は、重ね摺りの初期段階で絵の輪郭線を墨で複写する「主版」(縦51・8センチ、横22・5センチ)。横長の火鉢の側板に使われており、保存状態も良い。福岡県の美術品市場に出回っていたものを、2020年2月に美術商が入手した。北斎研究の第一人者で、東洋美術専門の私立美術館・大和文華館(奈良市)館長の浅野秀剛氏が実物を確認し、「前北斎為一筆」の落款など版画作品との一致や江戸時代特有の版木の質感などから、「桜に鷹」の主版と鑑定した。
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