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[読売文学賞の人びと]<1>岡田利規さん

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 第72回読売文学賞の受賞者が決まった。5部門6人の喜びの声を紹介する。

能の構造現代劇に活用

戯曲・シナリオ賞

「未練の幽霊と怪物 挫波(ザハ)敦賀(つるが)」岡田利規(としき)さん 47

稲垣政則撮影
稲垣政則撮影

 幽霊である主人公(シテ)が生前の恨みを語り、脇役(ワキ)は観客に直接語りかけて主人公と観客をつなぐ。能の構造を現代劇に取り入れた作品で受賞した。「能という形式が現代を描くのにうってつけだと思い、実践してみたのがこの作品。試みが評価され、多くの方に紹介してもらえてうれしい」。穏やかに笑った。

 受賞作は能「挫波」「敦賀」の2作からなる。前者は斬新な新国立競技場の当初デザイン案で東京五輪・パラリンピック招致の立役者とされたものの、建設費高騰から白紙撤回され、後に亡くなった建築家ザハ・ハディド氏の無念をテーマとし、後者はナトリウム漏れ事故など相次ぐ問題で、廃炉が決まった高速増殖炉もんじゅ(福井県)。ともに社会が生んだ「亡霊」として描かれる。

 〈なんて薄情な仕打ちを、わたしたちはあのとき、したのだろう〉〈汚名を着せて 追い出した 騒動の 責任を 転嫁して〉(「挫波」)

 なぜ能の構造を現代劇に生かしたのか。それは、作品に社会的なメッセージを込めるためでもあった。「死者であるシテが抱える悔しさの原因とは、社会や政治の状況で生まれたもの。成仏できない幽霊を語ることは直接的、感覚的に政治的になる」

 横浜出身。慶応大在学中に演劇を始め、1997年に演劇カンパニー「チェルフィッチュ」を設立。2004年、イラク戦争への漠然とした不安を若者がしゃべる「三月の5日間」で注目され、翌年に岸田國士戯曲賞を受賞した。国際的に高い評価を受け、07年以降海外ツアーを精力的に行う。

 能に出会ったのは、16年刊行の『池澤夏樹=個人編集 日本文学全集10』で、その現代語訳を依頼されたことがきっかけ。「能の演目がポリティカルだと思ったのではなく、演劇ができることを最大限活用している点に可能性を感じた」。その実感は、「能の様式を岡田さんが見つけ出したことに非常に大きな可能性がある」という野田秀樹選考委員の評と通じる。

 演技をうそくさいと感じ、演劇を敬遠する人がいるのもよく分かる。「そういう人たちの何人かを振り向かせることが僕の役割だと思う。演劇が秘めている可能性を掘り起こすことが好きなので、能の構造を使って誰の作品とも違う、自分の表現をしていきたい」

 受賞作を表題とする本の後口上に、〈嘆かわしいことにこの世界は能の題材に事欠かない〉と記した。演劇を通じ社会を良くしたいとの決意表明だろう。(文化部 武田裕芸)

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1810360 0 エンタメ・文化 2021/02/01 05:00:00 2021/02/01 05:00:00 2021/02/01 05:00:00 第72回読売文学賞・戯曲・シナリオ賞を受賞した岡田利規さん(23日、横浜市保土ヶ谷区で)=稲垣政則撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210131-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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