読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

[読売文学賞の人びと]<3>井上隆史さん

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

危機の時代こそ存在感

評論・伝記賞

暴流(ぼる)の人 三島由紀夫」井上隆史さん 57

米田育広撮影
米田育広撮影

 高校生の頃に出会い、ほれ込んだ作家の三島由紀夫(1925~70年)と向き合って約40年。作家の生涯を丁寧にたどった評伝で賞に輝いた。「三島没後50年の年に出した本で受賞でき、とてもうれしい。実力以上の賞をいただいたと思っています」と笑顔を見せる。

 受賞作は、生誕から自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決するまでの三島の激動の人生を、先行研究や文献を踏まえて緻密ちみつに分析。併せて『仮面の告白』『金閣寺』『鏡子の家』などの著作群に寄り添いながら、時代背景などを交えて読み解いていく。「若い頃は作品のニヒリズムにひかれ、『三島が分かるのは自分だけ』と思い込むこともあったが、年齢を重ねて、戦後日本という時代と誠実に向き合った作家なのだと考えるようになった」

 本書は最後の作品『豊饒ほうじょうの海』四部作を「世界文学」と捉え、読解を進めていく。同作は明治維新の功臣を祖父にもつ松枝清顕まつがえきよあきを主人公に、輪廻りんね転生、宿命の恋、虚無の思想などを描く大作だ。「三島はこの小説で、社会や時代、歴史の全貌ぜんぼうを捉え、新たなビジョンを提示した。現代の私たちを襲う虚無を小説という形で具現化したのではないか」と指摘する。

 『豊饒の海』を論じる際に、仏教の唯識論を引用。書名の「暴流ぼる」は、この理論を象徴的に表す詩句「恒転如暴流」(つねに転ずること暴流のごとし)から引いた。「『暴流』という言葉の持つ強烈なイメージが、紆余うよ曲折の人生を歩んだ三島という人物と重なった。三島は常に時代に翻弄ほんろうされたが、最終的に『豊饒の海』で時代に打ち勝ったのだと思う」

 白百合女子大で教べんをとるかたわら、山梨県山中湖村の三島由紀夫文学館の研究員も務め、2015年には「国際三島由紀夫シンポジウム」を企画。世界文学としての三島に向かい合ってきた。野間宏や津島佑子など戦後文学も大きな研究テーマだ。

 昨年から新型コロナウイルスが蔓延まんえんし、外出がままならない状況が続いているが、三島の生誕100年となる25年を目指して、オンライン通話アプリを用い、海外の研究者とも積極的に意見交換を進めている。「危機の時代だからこそ虚無を内包した三島作品は存在感を増している。賞の重みに負けないように、これからも三島にひとりの読者として向き合い、次世代の読者につなげていきたい」(文化部 池田創)

無断転載・複製を禁じます
1815884 0 エンタメ・文化 2021/02/03 05:00:00 2021/02/03 05:00:00 2021/02/03 05:00:00 「暴流の人 三島由紀夫」で読売文学賞(評論・伝記部門)を受賞した井上隆史さん(1月22日、東京都品川区で)=米田育広撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210202-OYT8I50091-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)