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「崖の上で謎解き」は絶滅?それでも踏ん張るテレ東が狙う「2時間ドラマ」

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 「火サス」「土ワイ」……かつて一世を風靡(ふうび)した民放2時間ドラマ枠だが、いつしか(くし)の歯が欠けるように姿を消し、一時は絶滅した。そこに一石を投じたのが、何事も独自路線のテレビ東京。昨年4月から新設の2時間枠「月曜プレミア8」(月曜後8時)で「永遠のマンネリ」とも言える刑事ドラマを連打して60代以上の女性の心をわしづかみにしているのだ。視聴率も合格点を確保し、若年層が取り込めないと二の足を踏む他局を尻目に、ここでも面目躍如を果たしている。

8日放送「今野敏サスペンス 警視庁臨海署安積班」では、寺脇康文(右から2人目)演じる安積班長を中心に個性的な刑事たちが活躍する
8日放送「今野敏サスペンス 警視庁臨海署安積班」では、寺脇康文(右から2人目)演じる安積班長を中心に個性的な刑事たちが活躍する

じわじわ視聴率低下、ついに完全消滅

 2時間ドラマの先駆けは、1977年に始まったテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」(土ワイ)。元々は、米国の長編テレビ映画をヒントにしたもので、79年からサスペンス・ミステリー路線に特化して評判になった。これに他局が追随し、日本テレビ系「火曜サスペンス劇場」(火サス)などのレギュラー枠が誕生。最盛期の89~90年には、民放4局で週8本が放送される戦国時代になり、2001年にテレ東系「女と愛とミステリー」が参戦した。

 それぞれの枠からはヒットシリーズが誕生した。市原悦子主演の土ワイ「家政婦は見た!」は、84年に同枠最高の視聴率30・9%を記録。テレ朝系の看板刑事ドラマ「相棒」も00年に同枠で初回が放送され、その後も好調だったことから02年に連ドラ化された。火サスからは「監察医室生亜季子」「弁護士高林鮎子」「検事霞夕子」シリーズなどが生まれ、いずれも高視聴率を稼ぎだした。また、浅見光彦、十津川警部など局の垣根を越え複数の枠でシリーズ化される主人公も生まれた。

 いずれも中高年層を中心に底堅い人気が続いたが、00年代半ば頃から視聴率が低下。バラエティー番組などに比べ制作費がかさむ割に「数字が取れず、企画そのものが通らない」(民放宣伝担当者)状況に追い込まれ、老舗枠が次々と消えた。そして一昨年3月、TBS系「月曜名作劇場」が終了した時点で、民放2時間ドラマ枠は一時、完全消滅。バラエティーやニュース番組に取って代わられた。それにより「有名旅館・ホテルでひと風呂」「グルメに舌鼓」「謎解きは崖の上で」というお約束にホッとすることも、「終了30分前から見ても大丈夫」という妙な安心感に浸ることもできなくなってしまった。

 もちろん、フジ系「金曜エンタテイメント」の定番だった片平なぎさ主演「赤い霊柩車」のように、枠が消えた後も放送されているシリーズもあるが、往時の2時間ドラマ文化に慣れ親しんだ世代からは「民放は若者向けドラマばかり」と嘆く声も。

根強い支持、警察もの中心に企画を吟味

 そこに手を差し伸べたのがテレ東だった。

 昨年4月、「月曜プレミア8」をスタートさせ、2時間ドラマとバラエティーをほぼ半々の比率で放送するようになったのだ。プレミア8の中川順平チーフ・プロデューサーが背景を語る。「地上波全局から枠が消滅した後も、このジャンルを根強く支持してくれる視聴者が少なからずいるとの実感があり、バラエティー番組との共存枠ならそんな声に応えられるのではと考えた」

 以前より制作本数が減ったぶん、企画を吟味し、脚本やキャスティングに時間を費やせるようになった。また、他局が過去に放送した有名原作シリーズをテレ東風にアレンジすることにも挑戦している。視聴率は、高橋英樹主演「再雇用警察官」10・1%、船越英一郎主演「十津川警部の事件簿 危険な賞金」9・2%、伊藤淳史主演「内田康夫サスペンス 新・信濃のコロンボ」8・7%などのほか、おおむね7~8%台と同局としてはまずまずの数字で推移している。

 視聴者の中心は60代以上の女性だが、男性にどれだけ見てもらえるかにも腐心する。「警察ものを中心に据える意図はないが、男性層を意識して、例えば主婦が事件を解決するといったコメディー系より、リアリティーを重視している。だから結果として警察ものが多くなっているのかもしれない」

連ドラとして放送中の「今野敏サスペンス 警視庁強行犯係 樋口顕」は、元々「プレミア8」をはじめ2時間ドラマのシリーズとして人気を博していた
連ドラとして放送中の「今野敏サスペンス 警視庁強行犯係 樋口顕」は、元々「プレミア8」をはじめ2時間ドラマのシリーズとして人気を博していた

 一方、警察小説の第一人者・今野敏作品を原作に、連続ドラマとして現在放送中の「警視庁強行犯係 樋口顕」(金曜後8時)は、プレミア8でも好評だったもので、単発作品の連ドラ化という理想的な流れも生まれている。

今野作品の大ファン・寺脇康文、念願の「ハンチョウ」

 8日には、今野の「安積班シリーズ」が原作の新作「警視庁臨海署安積班」が登場。東京湾臨海署の安積班長(寺脇康文)を中心に、個性的な刑事たち(武田真治、真飛聖、松尾諭ほか)が、都内のクラブで起きた連続殺人事件を一丸となって解決していくド真ん中の2時間ドラマだ。

 安積を主人公に据えた作品には、佐々木蔵之介主演によるTBSの連ドラ「ハンチョウ」があり、第6シリーズまで制作されている。それを手掛けた担当者が4年ほど前、テレ東の松本拓プロデューサーに「テレ東でもドラマ化できないか」と持ち掛けた。しかしその時は話がまとまらず、プレミア8開始を機に満を持して制作にこぎつけた。

安積(寺脇、右)は、警視庁捜査一課の荻野(加藤雅也、左)と捜査方針巡って対立。このあたりは刑事ドラマの“定石”だ
安積(寺脇、右)は、警視庁捜査一課の荻野(加藤雅也、左)と捜査方針巡って対立。このあたりは刑事ドラマの“定石”だ

 「安積は部下を守る理想の上司。僕のなかでは最初から寺脇さんだった」。主人公に起用した理由を松本プロデューサーは明かす。「今どき、チームワークで助け合うなんて古臭い感じもするが、そこを魅力に感じてもらえれば」。演じる寺脇は最も好きな小説家が今野だといい、自宅の本棚にはその作品がずらり。「その中でベスト3に入るのがこの『安積班シリーズ』。ハンチョウを演じさせてもらうということで大興奮し、なんとか寺脇バージョンを作るべく頑張った」と熱く語る。

高校野球と同じ? 新たな在り方模索も

1月に「プレミア8」で出張捜査編が放送された連ドラ「警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室」は4月からシーズン5が始まる(右・小泉孝太郎、左・松下由樹)
1月に「プレミア8」で出張捜査編が放送された連ドラ「警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室」は4月からシーズン5が始まる(右・小泉孝太郎、左・松下由樹)

 「へんに変化球を投げても、たいてい失敗するんですよ」としみじみ語る松本プロデューサー。「王道の刑事ものが少なくなったぶん、逆に視聴者ニーズがあるのではないか。高校野球のようなもので、2時間ドラマはあまり進化させないほうがいいのかもしれない」

 ならば、あの様式美のような「安心感」は復活するのだろうか?

 中川チーフ・プロデューサーは慎重だ。「今、コンスタントに2時間ドラマを制作しているのは弊社だけなので、以前より期待されているとは感じる。ただ、それが2時間ドラマ全体の復活というところまで到達しているとは思わない。配信等で従来の地上波モデルが変革期を迎えている中、2時間ドラマも守るところは守り、変えるところは変え、新たな在り方を作っていきたい」

 間違いなく日本の放送界の一つの財産である2時間ドラマ。その行く末を見守りたい。

 (視聴率は「世帯視聴率」を表記、ビデオリサーチ調べ、関東地区)

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1825494 0 エンタメ・文化 2021/02/07 09:10:00 2021/02/07 09:10:00 2021/02/07 09:10:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210205-OYT1I50045-T.jpg?type=thumbnail

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