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「思っていることをこんなにずけずけ言えたら、さぞ気持ちいい」松坂慶子を感嘆させた毒親

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アガサ・クリスティー原作、三谷幸喜脚本「死との約束」

 ドラマや映画でも多彩に活躍する狂言師・野村萬斎。だが“ポアロ”役はさすがに手ごわいらしい。

 アガサ・クリスティーの名作を三谷幸喜脚本、萬斎主演で描くシリーズの第3弾「死との約束」が3月6日、フジテレビ系で放送される。舞台は昭和30年の熊野古道。エルキュール・ポアロならぬ名探偵・勝呂武尊(すぐろたける)が富豪の妻殺しの謎に挑む。ミステリーの女王の手なる緻密(ちみつ)な推理が、横溝正史作品にも通じる怪しげな雰囲気の中で披露される意欲作だ。萬斎は「トリックが前作と違っていて、ある意味、ご覧の皆さんが裏切られる展開」と自信をのぞかせているのだが……。

勝呂(野村萬斎)と穂波(鈴木京香)のロマンスも見どころ(C)フジテレビ
勝呂(野村萬斎)と穂波(鈴木京香)のロマンスも見どころ(C)フジテレビ

 フジは2015年1月、開局55周年特別企画として、クリスティーの代表作「オリエント急行殺人事件」を昭和初期の日本に置き換えて2夜連続放送。好評を博したことから、18年4月に「アクロイド殺し」を翻案した「黒井戸殺し」を放送した。こちらは戦後間もない頃の時代設定で、いずれも萬斎が「灰色の脳細胞」を持つとされるポアロをほうふつとさせる頭脳明晰(めいせき)で自信家の探偵を好演。俳優として新たな一面を見せた。

 「死との約束」は1938年発表の長編。死海のほとりが舞台だったことから「死海殺人事件」のタイトルで88年に映画化もされているが、日本での映像化は初めて。三谷は「クリスティーの隠れた傑作で一番好きな作品」と太鼓判を押し、「事件が起こるまでのワクワク感、真相が明らかになっていくドキドキ感、意外な犯人。原作のテイストを損なわないように脚色した」と胸を張る。渡辺恒也プロデューサーも「真犯人が浮かび上がるまでの過程が様々な証言によって明らかになる点が特徴。前2作と違う形でミステリーの面白さが楽しめる」と話す。

現代ミステリーの教科書

独裁者のように振る舞う本堂夫人(松坂慶子、中央)の前で家族(左から堀田真由、市原隼人、右からシルビア・グラブ、山本耕史)はうんざりしている(C)フジテレビ
独裁者のように振る舞う本堂夫人(松坂慶子、中央)の前で家族(左から堀田真由、市原隼人、右からシルビア・グラブ、山本耕史)はうんざりしている(C)フジテレビ

 熊野古道のホテルに滞在中の勝呂は、従業員をどなりつける富豪の妻“本堂夫人”(松坂慶子)の傍若無人な態度に眉をひそめる。夫人は亡夫が残した資産をもとに、次男(市原隼人)や長女(堀田真由)、次女(原菜乃華)らと全国を旅していたが、まるで独裁者のような母親に子どもたちは萎縮(いしゅく)してしまっている。そこで勝呂は、旧知の代議士・穂波(鈴木京香)と再会、心ときめく。

 2日後、勝呂は富豪一家と穂波、医師の絹子(比嘉愛未)らと古道散策ツアーに出かけるが、参道沿いのベンチで休憩していた夫人が遺体で見つかる。地元警察から事件解決を要請された勝呂は推理を開始する。

 クリスティー作品について、渡辺プロデューサーは「トリックなどが現代ミステリーの教科書のようで、場面構成を含め、今読んでも新鮮。真相に至るまでの筆致も鮮やか」と時代を超えて愛される理由を語る。「人間をよく観察し、感情の奥底にある猜疑(さいぎ)心、虚栄心を描写し、それが事件そのものに関わってくるので、設定を変えても面白さが損なわれない」

 長編小説をドラマに圧縮するのは容易でないが、そこは三谷の腕の見せどころ。様々な伏線を巧妙に料理し、原作の大切な部分をつかんで脚本に落とし込んでいる。

金田一耕助シリーズ意識、ロマンスも

 なぜ舞台が熊野古道なのか。

 渡辺プロデューサーが明かす。「前作よりも後の時代としてまずは昭和30年に設定。当時、家族旅行に行ってもおかしくない場所で、ホテルがあって、人目につかない場所もあるなど、いろいろな条件を考慮した。奈良の古墳発掘ツアー中という案もあったが、最終的に三谷さんのアイデアで熊野古道に落ち着いた」

次女役の原菜乃華(左)は「昭和30年当時の車、衣装、小道具がとても細かく作り込まれていておしゃれ」と話す(C)フジテレビ
次女役の原菜乃華(左)は「昭和30年当時の車、衣装、小道具がとても細かく作り込まれていておしゃれ」と話す(C)フジテレビ

 時代設定と場所柄を考えると、どことなくあのシリーズが想起される。

 横溝正史の金田一耕助ものだ。

 三谷自身も金田一シリーズを意識したといい、渡辺プロデューサーは「日本ならではのじめっとした田舎を舞台に、怪しい人々が出てきて事件が起きる。それに原作にある洋風のセンスをミックスした」と話す。言うなれば、東西ミステリーの秀作を融合した世界観こそが本作の見どころの一つだ。

 また、今回は穂波とのロマンスなど勝呂の人間味が描かれ、恋愛ドラマとしても楽しめそうだ。とはいえ、謎解きが醍醐(だいご)味なのは変わらない。前2作でもこの場面では、勝呂の長ゼリフが見せ場となったが、今回も萬斎は監督から「3年に1度の苦行をしてください」と言い渡された。「そこが見せ場なんですが、僕にとっては一番大変なところでして……」と萬斎は語る。

三谷作品初参加の松坂、良妻賢母を封印

阿南健治(左)ふんする警察署長が勝呂(野村萬斎、右)に事件解決を依頼する(C)フジテレビ
阿南健治(左)ふんする警察署長が勝呂(野村萬斎、右)に事件解決を依頼する(C)フジテレビ

 この手のミステリーでは、被害者の人物像をいかに際立たせるかもカギとなる。今回の本堂夫人は、精神的にも金銭的にも一家を支配・従属させる“毒親”。しかし恨まれてもしかたがない反面、孤独な横顔も見せる。そこで制作サイドは、二層的な人物像を描く上で誰に演じてもらうか模索したが、当初はぴたりとくる女優が見つからなかった。そんな折、松坂が浮上。ここ数年は良妻賢母的な役柄が多かったが、それらとは真逆のイヤな母親役を演じてみたいとの本人側の意向もあり、「意外性があるし、原作のイメージとも違った形で演じてくれるのでは」(渡辺プロデューサー)と配役に至った。

 松坂は、三谷作品には初参加。「お話を頂いたときは『やったー!』という感じでした。本堂夫人はとてもマイペースで、みんなが『あの人がいなければ幸せなんだけど。早く死んでくれないかなあ』って思ってしまう大変な母親なのですが、台本を読んでいるとなんだかスカッとするんですよね。思っていることをこんなふうに遠慮なくずけずけと言えたら、さぞ気持ちがいいだろうなあと。そして三谷さんの脚本では、ひどい人なんだけど笑っちゃう。そこがすてきで面白い」と満足そうだ。

 名女優らに囲まれ、和製ポアロはどんな活躍を見せるのだろう。放送は午後9時~11時40分。

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1873792 0 エンタメ・文化 2021/02/28 10:09:00 2021/02/28 12:44:22 2021/02/28 12:44:22 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210222-OYT1I50058-T.jpg?type=thumbnail

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