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「こんな番組、もう不要じゃないか」…考え続ける小林克也「ベストヒットUSA」40年

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 小林克也の達者な英語と軽妙なトークで洋楽シーンを伝えてきた「ベストヒットUSA」が、4月で番組誕生40年となる。小林も今月で80歳になることから、放送するBS朝日は記念企画「ベストヒットUSA 80/40プロジェクト」を展開。手始めに、デヴィッド・ボウイら多くのアーティストを撮ってきた写真家・鋤田(すきた)正義(82)が、今も変わらぬ美声を誇る男にレンズを向けた。ほかに小林によるライブも開催。若者の洋楽離れと言われる中、節目を迎えた名物DJは何を感じているのだろう。

今回、鋤田が撮影した一枚。時代を懐かしむ小林の自然な表情が表れている(C)Sukita
今回、鋤田が撮影した一枚。時代を懐かしむ小林の自然な表情が表れている(C)Sukita

「ベストヒットUSA」誕生40年、番組の顔は80歳に

 番組は1981年4月、ブリヂストンの1社提供によりテレビ朝日系でスタート。土曜の深夜、当時隆盛を極めたプロモーションビデオに合わせて洋楽のロックやポップスのヒットチャートを小林が張りのある声で紹介。大物アーティストをスタジオに招いてのインタビューや、往年の名曲発掘などのコーナーにかじりついた中高年世代は多いはずだ。イントロが印象的なオープニング曲、ヴェイパー・トレイルズ「サーフサイド・フリーウェイ(Don’t Worry Baby)」は、小林同様、番組の大看板となった。2003年4月からはBS朝日に移り、現在は金曜深夜0時(土曜午前0時)の放送となっている。

 広島出身の小林はラジオDJなどを経て、70年代後半からは、桑原茂一、伊武雅刀らとともにラジオ番組「スネークマンショー」に取り組み、シュールでブラックなギャグと最先端の音楽で一世を風靡(ふうび)。CMやナレーションでも活躍していた。そんな折、「ベストヒット」出演の声がかかった。

今回のプロジェクトでは番組当初のロゴも復活させている
今回のプロジェクトでは番組当初のロゴも復活させている

 「自分は“しゃべり屋”じゃない」と一度は出演を断ったものの、引き受けてみると番組は予想外にヒット。気を引き締め直し、今一つ気乗りしなかったタイプの音楽にも真剣に耳を傾け、インタビューにも工夫を凝らすようになった。「必要なことは15秒あれば伝えられる」と、番組で話す秒数にも注意を払うなど、立て板に水のようなトークは、実は緻密(ちみつ)に計算されたものだった。

仮説立て、次作の音の中から見極める…小林流アーティスト分析

 大物アーティストの逸話には事欠かない。

 82年、米ロサンゼルスで、マイケル・ジャクソンの新作アルバムができたと聞かされた。「レコード会社の雰囲気が全然違っていた。みんな、上ずっている感じで、『まずは聴いてくれ』って担当者の車中でいきなりテープを聴かされた。『ああ、これなんだ、みんなが上ずっていたのは』って思いましたね」

 それが「スリラー」だった。

 「マドンナはものすごく分かりやすい人で、仕事フリークですね。自分を客観的に見る力がすごくあって、ここは女としての魅力を発揮しなければならないと思ったら、そういうふうにできる」

番組開始当初の小林。多彩な活動に取り組んできた半生を振り返る今、「本当の自分探しに興味がある」と意味深な言葉を残した
番組開始当初の小林。多彩な活動に取り組んできた半生を振り返る今、「本当の自分探しに興味がある」と意味深な言葉を残した

 ただ、「クリエイトする力とかは短いインタビューでは計り知ることができない」。小林流のアーティスト分析はこうだ。「この人はどんな人だろう、どういう才能があるのだろうって、まず仮説を立てるんですよ。例えば、デヴィッド・ボウイなら、かなりの読書家で感性だけでなく理論的にも何かを追い詰めていったのではないかとか。その上で次の作品でそれが本当かどうか、音の中から見つけようとしてきた。今でもそうしています」

 40年の感想を尋ねると意外な答えが返ってきた。

 「ずっと音楽を紹介してきたんだけど、時代のほうが変わっちゃったんで、こういう番組ってどうなんだろうって、今はめちゃくちゃ考えてますよ。こんな番組、もう不要じゃないかってレベルから、絶対に必要だとすればそれは何なのかってところまでね。だから以前は収録した番組は見なかったけど、今は必ず見るようにしています。ぼくなりにこんなに続いて良かったのだろうかって考えながら」

デヴィッド・ボウイ撮影の写真家が洋楽の伝道師を活写

 テレビでの明快な語り口とは裏腹に、言葉を選びながら自問自答する小林。そんな洋楽の伝道師に今回、カメラを向けた鋤田は、ボウイの「ヒーローズ」(77年)、YMOの「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」(79年)などのジャケット写真を撮影。世界のロックスターの写真集、写真展も数多く手がけてきた名カメラマンだ。

鋤田が撮影したデヴィッド・ボウイ「ヒーローズ」のアルバムジャケット
鋤田が撮影したデヴィッド・ボウイ「ヒーローズ」のアルバムジャケット

 小林の撮影後、共に取材を受けてくれた鋤田は「ベストヒットUSA」の大ファン。「毎週見ていたし、小林さんじゃないと成立しない番組。ホッとするんですよ」とうれしそうに明かした。今回の撮影は「技でなく原点に戻ってシンプルに行った」といい、小林も「撮る側と撮られる側で特別な関係ができて、さーっと触ってもらって、そのままどっか行っちゃったみたいな感じだった」と振り返った。それで生まれたのが掲載の一枚だ。

 「80/40プロジェクト」ではほかに、小林の誕生日である今月27日、東京・Zepp Hanedaで、小林克也&ザ・ナンバーワン・バンドなどによるライブも開く。

「世界を見て進んで」、そのほうが「面白い」

 ただ、番組の開始当初を知る世代からすると、今は洋楽人気が下火に感じられる。洋楽番組自体お目にかからないし、プロモーションビデオが話題になることもない。これについて小林は「アニメやゲーム、それに(合成音声に楽曲を歌わせる)ボカロなど、日本発の文化が広く受け入れられているからでしょう」とみる。「昔は若い連中には洋楽ぐらいしかなく、その刺激が一番大きく、あの頃は文化の中心にロックがあった。でも今は中心じゃない」

 だからといって支持されるアーティストは厳然として存在するという。来日ライブなどは、「洋楽番組が頑張って宣伝しなくても、スタジアムは満員になる。今の若い人たちはアンテナはしっかり張っているんですよ」。その上で「洋楽は、彼らのアンテナの向かう方向の一つに過ぎず、その中では、やはりニコ動やSNSといったもののほうが彼らには近い。今の中学生が洋楽に傾倒するかといえば、無理でしょう」

同世代の小林と鋤田。鋤田が「今後は故郷・九州の水をテーマに撮りたい」と明かすと、小林が「人間は写真家の言うこと聞いてくれるけど、自然は聞いてくれない。だからハマっちゃったんだと思う」と解説してくれた
同世代の小林と鋤田。鋤田が「今後は故郷・九州の水をテーマに撮りたい」と明かすと、小林が「人間は写真家の言うこと聞いてくれるけど、自然は聞いてくれない。だからハマっちゃったんだと思う」と解説してくれた

 現状を冷静に分析し、淡々と口にする。だが、内向きとも言われる昨今の若年層にはこんなメッセージがある。「自分が取り組んでいることをやり続けてほしい。そして、日本にあまりこだわらないで世界を見て進んでいただきたい」。この点は、まさに世界を相手に奮闘してきた鋤田も同じだ。「日本だけで小さくなっていてもしょうがない。音楽でもアートでも何でもいいので、外国との交流を目指してもらいたい。そういう人が出てきたほうが――」

 「面白い」と小林がすかさず合いの手を入れると、鋤田はうなずきながら「そう、面白い。単純にね」とつぶやいた。

 2人のレジェンドが言い当てたのは、エンタメの原点だ。

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1891978 0 エンタメ・文化 2021/03/07 08:56:00 2021/03/08 10:23:34 2021/03/08 10:23:34 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210302-OYT1I50065-T.jpg?type=thumbnail

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