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加藤シゲアキさん「伝えられないけどジャニーさんに伝えたい」…吉川英治文学新人賞、一問一答

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近未来の高校舞台「オルタネート」

 ジャニーズ事務所所属のアイドルグループ「NEWS」のメンバー、加藤シゲアキさん(33)の「オルタネート」(新潮社)が2日に発表された吉川英治文学新人賞に輝いた。受賞作は近未来の高校を舞台にした群像劇で、直木賞の候補にもなった話題作だ。記者会見では受賞の喜びや小説を書くことの楽しさなどを語った加藤さん。主な一問一答をお届けする。(文化部 池田創)

少しは恩返しできた

 ――まず受賞の喜びをお聞かせください

受賞が決まり、記者会見前の写真撮影で笑顔を見せる加藤シゲアキさん(2日、東京都内で)
受賞が決まり、記者会見前の写真撮影で笑顔を見せる加藤シゲアキさん(2日、東京都内で)

 率直に驚いています。本当に光栄な機会をいただいて、だんだんと実感が湧いてきて、やっぱりうれしいよなと思っています。先ほど選考委員の伊集院静先生と少しだけお話をさせてもらったのですが、「こういうときはとにかく喜べ」とおっしゃってくださったので、頑張って喜ぼうかなと思っています。

受賞が決まり、会見で喜びを語る加藤シゲアキさん(2日、東京都内で)
受賞が決まり、会見で喜びを語る加藤シゲアキさん(2日、東京都内で)

 僕はジャニーズ事務所のタレントという立場で、小説を書いて、それはすごく光栄なことだったのですが、ある種のコンプレックスみたいなところがあります。一般的な作家の方は、新人賞を受賞してから作家生活をスタートすると思うのですが、僕は横から入ったような感覚がずっとありました。それでいて、出版社や作家の方が温かく歓迎してくださったということを感謝していたので、今回の吉川英治文学新人賞をいただいたことで、少しは恩返しができたかなと思っていますし、ここからスタートかなと思っております。

 「ピンクとグレー」というデビュー作が、出版したのが2012年だったのですが、執筆時はちょうど10年前の2011年でした。2月の半ばから3月末に書き上げたのが初稿で、忘れもしない震災があり、自分としても強烈な季節というか時間でした。振り返ってみれば長い作家生活だなあと思うのですが、それでも10年間辞めずに続けてきて、10年前の自分を褒めてやりたいです。

これはもう甘えられない

 ――実際に文学賞を受賞して、どのように感じているか

 まだ1時間前に聞いたばかりで、あまり受賞できるかどうかは意識しないようにしていました。直木賞を受賞できなかったことは残念だったのですが、やっぱり悔しかったですね。だったらこの作品を越えてやろうと、すごく頭の中でぐるぐると想像を膨らましたりしていました。

 いま受賞した心持ちで言うと、これはもう甘えられないなと。これまではプロという自覚を持って書いていましたが、(今後は)周りの人は甘やかしてくれないなと。すごい緊張感をもって、今後の作家生活をスタートさせなければいけない。ワクワクもしているし、恐ろしくも感じています。

 直木賞に落選した日から自分はどんな作品を書きたくなるのだろうと考え続けていて、明確な答えが出ているわけではないですが、今回の作品は短編集も含めて小説としては6冊目なんですけど、毎回以前やったこととは違うことを、と思って書いてきました。

 今回は群像劇でたくさん登場人物がでる作品ですが、次はもしかしたら、ひとりの主人公の物語を、そして何か触れたくても触れられないようなテーマを、頑張って掘り下げてみるということにチャレンジしてみたいです。

書くことが好きなんだと思う

 ――選考会では「書かずにはいられないものを感じた」という選考委員もいたとのことです。書かずにはいられない、書くことの原動力としては何があるのでしょうか

 初めて小説を書き上げたときの、10年前の達成感は今でも鮮明に覚えています。しかし、いざ出版するとなるときに、おそらく厳しい意見を聞くことになるだろうと思った。自分がタレントという立場で、ある種ステレオタイプみたいなもの、色眼鏡にさらされることで、かなり怖かったというか、不安がありました。発売日、「これはつらい朝が来てしまった」と覚えているのですが、そのうちに多くの読者や書店員の方や作家の方が、個人的に意外というか、温かい言葉をかけてくださった。「世界は意外と優しいな」と思いました。その時に感じた優しさみたいなものに恩返ししたい気持ちがあります。

 デビュー作の「ピンクとグレー」で書店回りをしたときに、「この作品は面白かったし、加藤シゲアキという作家は応援したいけれども、書き続けなければ応援できない」という激励の言葉をある書店員の方からもらって、ああそうなんだなと。作家になったなら、責任を持ってやり続けようと思いました。

 温かくこの世界に迎えてくださった文芸に関わる皆さんへの恩返しになる、という思いが半分。あと半分はもう素直に書きたくてしょうがないという感想なんですよね。書くことが好きなんだと思います。

 書いている時間は苦しいこともつらいこともたくさんありますけど、それでもやっぱり次どんな話を書くことか、テーマをどうしようか、次のシーンどうしようかとか、考えるようになって10年たったので、もうやめるということができなくなってしまった。そういう体になってしまったという実感があります。

若い子たちに楽しんでもらえたらうれしい

 ――今回の受賞は若い世代が本をとるきっかけになるのではという期待があります

 「オルタネート」は昨年から話題にしてもらう機会が多かった。本作を書く目標として、若い読者に本を読むという楽しみを知ってほしいという思いが強くありました。小説を何冊か出させてもらって、「加藤君の本を読んでみたいんだけど、本を読むのが苦手なんです、すみません」と言われることが数え切れないぐらいあって、もったいないなと思った気持ちもありました。

 本を読むことはとても楽しい。経験にもなるし、きっとその方たちは「本って難しい」「楽しみ方が分からない」と感じ、そういう経験をしてしまったがゆえに、壁みたいなものを作ってしまったんじゃないかなと思います。

 本を読んで純粋に楽しいという感覚を、若い子たちに楽しんでもらえたらうれしいし、その読書体験の中で自分を見つめ直したり、共感したり、テーマを深く考えてみたり、っていうことをしてもらえれば、これ以上うれしいことはないなあと思っていました。

 今作の登場人物は高校生ということもありますし、そういう方に読んでもらうという前提で書いていました。小説はとっても素晴らしいものだけど、僕個人の作品については、小説を高尚なものにしたくなかった。もっと気軽に本を手に取っていいんだよ、という気持ちで書いています。

 (今回の受賞をきっかけに)おそらく10代や僕のファンも、吉川英治文学賞や新人賞を知った方もいると思うんです。それだけでも少しやっていて良かったなあ、恩返しできているなあという気持ちになっています。

 ――作中にはAIで異性との相性をマッチングする「オルタネート」というアプリが登場します。もしあったら、ご自身で使ってみたいですか

 どうですかね(笑)

 僕はきっとやらなかったと思います。あんまり人とコミュニケーションを積極的にとるタイプじゃないので、興味はあるけど、一歩踏み出せずに終わるんだろうなあと思います。

僕より先に編集の方々がガッツポーズ

 ――受賞を聞いた瞬間のお気持ちはどのようなものでしたか

 ジャニーズ事務所の大きな会議室で編集者数名と、午後3時半ぐらいからのんびりと発表を待ちました。直木賞のときとまったく同じシチュエーションで。直木賞のときに痛い経験をしていて、みんなすごくがっかりしていたので、今回はダメだったときにどう場を和ませようとか、逆に受賞したらどうやって盛り上げようとか、そんなことを考えていました。

 「受賞おめでとうこざいます」と言われた瞬間に、ダメだったという表情をした後に「とりました!」と言おうと思っていたんですけど、受賞したときの携帯の音声が漏れていたので、僕より先に編集の方々がガッツポーズ(笑)。僕が一番冷静な人になってしまった。みんな喜んでくれました。

 ――接戦を制しての受賞ということについては

 自分の作品と比較することはいいことではないと思ったので、他の候補作は読んでいません。小説というものに優劣をつけることはとても難しいことだと思っています。自分が受賞したから、他の候補作品より優れていたとは全く思っていませんし。

 僕のような立場の人間が候補になったことで、一番僕の中で願っていることは、他の候補の方に注目が集まることや、これまでの受賞作・候補作に興味を持ってくださることだと思っていたので、とてもうれしいんですが、どこかに「自分なんて」「僕で大丈夫ですか」という気持ちはあります。

――これからの作家としての時間、「NEWS」としての時間、どちらに重きを置くことになっていくのでしょうか

 よくそういった質問を頂くのですが、僕は11歳の頃からジャニーズに入って、ジャニーズのタレントって最初からかなりマルチに色んなことをやるんですよね。歌って踊るだけじゃなくて、バラエティーに出たり、お芝居をしたり。なんでもできるのがジャニーズのタレントなんだなあと。

 なので僕の中では作家活動はジャニーズの活動とは思っていないというか、もっと言うと、どれも僕自身のお仕事というか。好きなことをやっているだけなので、どちらかに比重が大きくなるというよりかは、今までと変わらずに、歌って踊る日があって、お芝居する日があって、書く日があるだけだと思っています。スケジュール的にはグループの仕事やタレント活動の空いている時間に書く。小説を書くから休みをくれと言ったことはないので、これから先もそうなるんじゃないかなと思っています。

背中押してくれたジュリーさん

――次回作の構想を少しお聞かせください

 そうですねえ、はっきりとあるわけではなくて。今回「オルタネート」が話題になったことで、青春小説を書く作家だと思われたかたも多いかもしれませんが、この作品は僕の中でもむしろ異例なので、このタッチで続けるかどうかはちょっと分からないです。

 直木賞の選評が先日、小説誌「オール読物」に掲載されて、色んな感想を見て、ありがたいと思うこともあれば、悔しいなと思うこともありました。「だったらやってやろうじゃねえか」という気持ちも膨らんでいます。しかし小説はあくまで読者が考えるものだと思っていますので、読者が楽しめる作品を前提に、悔しいと思った熱をどういった風につなげていくかは、明日の自分が分かることかなと思っています。

 ――受賞の喜びを一番誰に伝えたいですか

 2人いて、ひとりは伝えられないんですけど、(2019年に亡くなったジャニーズ事務所社長の)ジャニー喜多川さんに伝えたい。僕が11歳でこの世界に入って、「物語は作ることができる」というのを僕の前で体現していた最初の人でした。最初の人だったと思うので。ジャニーさんが物語を作っていくことを間近で見ていたし、たくさんのファンを感動させられるということを、僕の前で見せ続けてくれた人だった。

 それと小説を書くように背中を強く押してくれた(現社長の)藤島ジュリーさん。この2人のおかげで自分の作家活動が始まったと思っています。

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1881920 0 エンタメ・文化 2021/03/02 23:49:00 2021/03/02 23:49:00 2021/03/02 23:49:00 受賞が決まり、会見で喜びを語る加藤シゲアキさん(2日、東京都内で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210302-OYT1I50109-T.jpg?type=thumbnail

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