「人はどうして変わるの…」と歌って1位、ソウルの帝王に学んだ英女性歌手
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ソウルフルな歌声に、ジャジーなサウンド、複雑な感情をシンプルな言葉でつづった詞――。英国の歌手、セレステ=写真=の「ノット・ユア・ミューズ」(ユニバーサル)は、デビューアルバムにして成熟を感じさせる作品だ。1月末に発売されるや全英チャート首位に。「本当にハッピー。新しい曲を作るのが楽しみになった」と喜ぶ。

ユーチューブで公開した作品が関係者に注目され、業界入りのきっかけをつかんだ。人気DJだったアヴィーチー(2018年死去)の15年発表のアルバムにも参加した。「その頃は自分の方向性を探っていた。今やっているようなタイプの音楽はずっと好きだったけど、どうやればできるのか、学んでいる段階でした」
その後、人気歌手のリリー・アレンのレーベルから作品を発表。昨年のブリット・アワードでは、「ライジング・スター賞」に輝いた。話題のネットフリックスの映画「シカゴ7裁判」に楽曲を提供。満を持してのデビューアルバムだった。
「まず多くの曲を共作しているジェイミー・ハートマンとスタジオで制作を始めました。それから19年にはライブを続け、やはりジャズっぽいアレンジにしたいなと思った」
帝王ジェームス・ブラウンやビル・ウィザースといったソウル歌手が好きで、そういった先達のドキュメンタリーも見てきた。「彼らと同じように、スタジオでライブのようにみんなで演奏し、生まれるものをとらえたかった。だからコンピューターの生み出す音ではなく、リアルな楽器演奏主体の音作りが重要でした」
26歳と若いが、シャンソンのエディット・ピアフの曲をカバー(日本盤に収録)するなど、趣味は幅広い。そして「人はどうして変わるの 見知らぬ他人から友人へ 友人から恋人へ そしてまた見知らぬ他人へと」と歌う「ストレンジ」など簡潔だが鋭い歌詞も光る。行きつ戻りつする思いをメランコリックに歌った「ザ・プロミス」もいい。自身のように「内面を探り、自分の真の感情を見つける手段として創造するアーティスト」の作品は、それがどんなものであっても「実体験や事実に基づいている」と分析する。自己を取り巻く世界についての思索が、歌の深さにつながっている。