考古学の大家・大塚初重さんが遺跡のスケッチ画集刊行…3週間で300冊完売

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 日本考古学の大家で、明治大名誉教授の大塚初重さん(94)は国内外の遺跡を訪れた際、現場でスケッチを描くことを習慣にしてきた。遺跡の特徴を〈自分の記録〉にとどめるため、3分ほどで描き、宿舎で眠る前に色を付けてきたという。こうして完成したスケッチの中から選んだ約100点を収録する「スケッチ画集」(百年書房)が刊行された。

大室古墳群(244号墳)
大室古墳群(244号墳)
桜井茶臼山古墳
桜井茶臼山古墳

 朱色の石室で知られる桜井茶臼山古墳(奈良県)など専門の古墳に加え、伊勢堂岱いせどうたい遺跡(秋田県)や座喜味城ざきみぐすく跡(沖縄県)といった各地の重要な遺跡が、軽やかな筆致と優しい色合いで表現される。〈余りにも著名な遺跡 ついに現地に到着した 感動の極み〉。中国・長江上流の代表的な遺跡である三星堆さんせいたいを訪れた際のスケッチには、こんな感想も添えられている。

伊勢堂岱遺跡
伊勢堂岱遺跡

 大塚さんの“私的”なスケッチにかける思いの一端もつづられている。〈5年、10年後にむかし描いた絵を眺めていますと、その時のさまざまな光景がよみがえってくる(中略)スケッチとは私にとって思い出の玉手箱なのです〉

 中でも思い入れの深い遺跡は長野市の大室古墳群という。〈昭和二十六(一九五一)年 この合掌形石室を見た 感激の一瞬を思い出す〉。若い頃の思い出の遺跡に1980年代からは教え子を連れ、ともに発掘にあたった。薫陶を受けた石川日出志・明治大教授は「大塚先生の考古学人生の原点の地」と語る。

三星堆
三星堆
敦煌158号石窟(涅槃仏)
敦煌158号石窟(涅槃仏)

 大室古墳群の特徴的な形態は、大陸との関連が指摘され、本書は韓国や中国の古墳群や支石墓の絵も収録している。「日本の古墳文化は、独特のものではなく、大陸との関係を視野に考えなければいけない」。大塚さんは記者の取材に対して、そう強調していた。

 90歳過ぎまで生涯学習講座の講師を務め、遺跡を一緒に巡った“大塚ファン”は多く、家族や教え子の協力で自費出版した300冊は3週間で完売。〈スケッチは上手下手などの問題ではなく自分の生き方にとって重要な一里塚〉。緻密ちみつな論文などとは異なるが、同書もまた、大塚さんの考古学人生の集大成と言えるだろう。(多可政史)

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1939757 0 エンタメ・文化 2021/03/26 17:58:00 2021/03/26 17:58:00 2021/03/26 17:58:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210326-OYT1I50061-T.jpg?type=thumbnail

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