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「せっかく女に生まれたんだから女を描きたい」橋田寿賀子さん、家庭劇から時代劇まで庶民目線で

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 あけすけな本音が飛び交う家庭劇から、女性の力強い生き方を描いた時代劇まで、多くの国民的ドラマを生み出した脚本家の橋田寿賀子さんが4日、95歳で亡くなった。心のひだに触れる長セリフに世の中の空気を吹き込み、実直に生きる人々を庶民的な目線で描き出した作品に、視聴者は自分自身を重ね合わせた。「おしん」は、アジアや中東、アフリカなど74か国・地域でも放送された。

「渡る世間は鬼ばかり」の取材を受ける橋田寿賀子さん(右)と石井ふく子プロデューサー(2018年8月27日撮影)
「渡る世間は鬼ばかり」の取材を受ける橋田寿賀子さん(右)と石井ふく子プロデューサー(2018年8月27日撮影)
長寿ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」で岡倉家の5人姉妹を演じた、(左から)野村真美さん、泉ピン子さん、中田喜子さん、長山藍子さん、藤田朋子さん=TBS提供
長寿ドラマ「渡る世間は鬼ばかり」で岡倉家の5人姉妹を演じた、(左から)野村真美さん、泉ピン子さん、中田喜子さん、長山藍子さん、藤田朋子さん=TBS提供

 橋田さんは2月下旬以降、東京都内や静岡県熱海市の病院で治療を受けていたが、今月3日に市内の自宅に戻り、4日に亡くなった。

 橋田作品は、幅広い世代に受け入れられた。貧しさから奉公に出される少女「おしん」は、従来の朝のドラマの「明るくさわやかなヒロイン」像とはかけ離れたもの。しかし、明治、大正、昭和を生き抜いた庶民史として涙を誘い、「女の一代記」路線の決定版となった。

 「おしん」の母親役で出演した、泉ピン子さん(73)は「昨日意識がなくなった時、『ママ』って呼ぶ私の声が聞こえたのか、目を見開いた。それが最後でした。今の私があるのは橋田先生のおかげ。ずいぶん喧嘩けんかもしたし、泣いたこともあったけれど、本当の娘のようにかわいがっていただきました」と、哀悼のコメントを発表した。

 様々な人情が交錯し、時に感情のすれ違うドラマであっても、作品が殺伐とならずに温かみを持ったのは、橋田さんの朗らかな人柄によるものだった。どんなに深刻な展開になっても必ずハッピーエンドを心掛けた。

 社会の第一線で活躍する女性として、「せっかく女に生まれたんだから、女を描きたい。時代劇でも何でも、常に家庭を自分の土俵にしてきた」とも語っていた。

 また、連続ドラマは「長く続くほどいい」との信条もあった。5人姉妹を中心にした「渡る世間は鬼ばかり」は、2019年にも3時間スペシャルが作られるなど、旺盛な執筆意欲は衰えなかった。

 「渡る世間は鬼ばかり」の石井ふく子プロデューサー(94)もコメントを出し、「60年のお付き合いで、年中喧嘩したり、相談したり、家族のように付き合ってきました。橋田さんは現在のコロナ禍の状況を見て、そこで感じた家族の形を書きたいとおっしゃっていた」としのんだ。

 「おしん」の幼少期を演じた小林綾子さん(48)の話「先生が『おしん』を書いてくださったおかげで、人生の幅を大きく広げていただきました。先生の作品は、いつまでもみんなの心の中で生きています」

[評伝]嫁姑の対立、夫婦のいさかい…時代問わず家族の日常

 嫁しゅうとめの対立。夫婦のいさかい。親子の絆。舞台が戦国時代でも現代でも橋田寿賀子さんは、誰にも身に覚えがある家族の日常を描き通した。それは、TBSでドラマ制作などに携わった夫、岩崎嘉一氏の助言を守り続けていたからだ。

 「男の書けないものを書け」「テレビは家庭に入るのだから人の道を踏み外すようなことを書いてはいけない」と言われたという。

 そこで不倫や人殺しを封印し、女性の立場で脚本を書いた。「おしん」「おんな太閤記」「女たちの忠臣蔵」――。パワフルなヒロインが活躍する前向きなドラマの数々は長年日本中を泣かせ、笑わせた。

 取材の時よく語っていたのは「時代が書かせてくれる」という言葉だ。新聞の投書欄を執筆のヒントにすることも多かった。「女の人が何がうれしくて、悲しくて、切ないのか。色んなことを教えてくれる。市井の人の気持ちを大事にしたい」と理由を話していた。

 俳優たちを泣かせたのが長いセリフの数々。泉ピン子さんが「15ページもある」と嘆いたことも。長くなる事情を聞くと「これはもう、趣味」とうそぶきつつも、家事で忙しい主婦のために「聞いただけで分かるように書くの」と説明してくれた。流行語を使わず、敬語を大切にして美しい日本語をつづった。

 浮沈の激しいテレビの世界で50年以上も第一線で活躍できたのは、徹底して女性への応援歌を書き続けたからだろう。(編集委員 祐成秀樹)

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1963733 0 エンタメ・文化 2021/04/06 05:00:00 2021/04/06 06:47:03 2021/04/06 06:47:03 2019年に放送された「渡る世間は鬼ばかり」スペシャルの主要出演陣。左から2人目が泉ピン子さん(TBS提供) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210406-OYT1I50007-T.jpg?type=thumbnail

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