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歴史番組でもU59狙うNHK、「ヒストリア」後継は“探偵もの”

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 民放BS各局に重宝がられる歴史番組だが、NHKは地上波の総合テレビ枠を守り続けている。今春には12年続いた「歴史秘話ヒストリア」が新番組にバトンタッチ。歴史を背景にしたゲーム人気にも後押しされ、これまでのコアな視聴者に加え、若年層の取り込みを目指す。カギを握るのが通説を覆す発見やその可能性の発掘。最新科学の力を借りて提示される斬新な仮説とは……?

造波実験施設で、北斎「神奈川沖浪裏」の再現にも挑戦した
造波実験施設で、北斎「神奈川沖浪裏」の再現にも挑戦した

高齢ファン中心の現状に風穴

 「パイロット版を作ってみたら、これまで『ヒストリア』が苦手にしてきたU59にも割と届いていたんです」。3月31日から始まった後継の新番組「歴史探偵」(水曜後10時30分)を担当する河井雅也プロデューサーが明かす。

 U59とは59歳以下の視聴者層のこと。NHKでは、数年前からこの層を狙った番組作りに腐心し、どの番組でもとりわけこの層の視聴率に注目してきた。だが、松平定知キャスターの名調子で知られた「その時歴史が動いた」(2000~09年)も、後を継いだ「ヒストリア」(09~21年)も、60代以上からは支持されたが、U59では苦戦を強いられてきた。

5月19日放送のBS朝日「京都ぶらり歴史探訪」では、中村雅俊が修復工事を終えた京都・清水寺を訪ねる
5月19日放送のBS朝日「京都ぶらり歴史探訪」では、中村雅俊が修復工事を終えた京都・清水寺を訪ねる

 だが、そもそも歴史番組は高齢ファンが多い。だからこそ視聴年齢の高い民放BSがこぞって編成しているのだ。例えば、BS朝日では現在、「京都ぶらり歴史探訪」(水曜後8時)を放送しているが、担当する同局・大木由起子プロデューサーは「年を重ねるうちに興味がわいてくるのが歴史ジャンル。高齢化社会の今、やはり歴史ものは高齢ファンに引きが強いコンテンツ」と指摘する。

 このイメージを払拭(ふっしょく)しようとNHKは一昨年末、パイロット版として「歴史探偵 本能寺の変」を放送。織田信長の遺体が見つかっていない謎や、明智光秀が本能寺にたどり着くまでのルートなど、本能寺の変に関してこれまであまり取り上げられなかったテーマについて、実験も織り交ぜて検証したところ、予想以上に50代以下を取り込めた。さらに昨年、「黒船来航」など2本のパイロット版を放送、確かな手応えを感じたことからレギュラー化に踏み切った。

科学の力借り、通説や常識を覆す

 「歴史探偵」は、俳優の佐藤二朗が探偵社を結成し、近田雄一・青井実らアナウンサー陣が探偵となって歴史の様々な謎を解明していく構成。「ヒストリア」案内役だった渡辺佐和子アナも副所長を務め、“歴女”らしいツッコミを入れる。「ヒストリア」との違いを河井プロデューサーが語る。

 「歴史が大きな川の流れだとすると、その川とは、一人ひとりの秘話で構成されていたのではないか。それらが合わさって大きな流れが生まれた。『ヒストリア』は、それを物語形式で夜中、アナウンサーが語り聞かせる、言うなれば“日本版アラビアンナイト”のようなイメージだった。今回は、歴史の常識や通説を引っ繰り返していくのが大きなコンセプト。謎を解き、新しい発見をしていく」

スタジオでは、所長の佐藤二朗(左から2人目)が探偵たちに素朴な疑問をぶつける(左端は副所長役の渡辺佐和子アナ)
スタジオでは、所長の佐藤二朗(左から2人目)が探偵たちに素朴な疑問をぶつける(左端は副所長役の渡辺佐和子アナ)

 といっても新発見はそうそう見つかるものではない。そこで番組では工夫を凝らす。初回に取り上げた江戸時代の「参勤交代」では、多額の出費がかさんだ背景に、藩主が自らの藩の力を世間に誇示しようと、わざと派手な行列を組む傾向があったと指摘。つまりお殿様の“見栄(みえ)”が影響していたと分析した。

 また、21日には、葛飾北斎「冨嶽三十六景(ふがくさんじゅうろっけい)」の赤富士こと「凱風快晴(がいふうかいせい)」と、黒富士こと「山下白雨(さんかはくう)」を描いた場所を改めて紹介しつつ、一枚の絵の中に垣間見られる天才ぶりをクローズアップした。

 「我々が発見したものでなくても、それらをうまく番組の中でプレゼンすることで新しさを感じてもらう。そのあたりが腕の見せどころ」

 一方、最新科学の力を駆使する点は新味と言えそうだ。14日放送の「関ヶ原の戦い」では、石田三成ら西軍が巨大な山城を築いた可能性に言及した上で、現地を空からレーザー測量。それにより木々に隠れて判然としない地表の凹凸が手に取るように浮かび上がり、立体地図として番組で示した。それを専門家が解析し、幼い豊臣秀頼を巻き込んだ決戦計画や、小早川秀秋の裏切りの真相まで幅広く推理した。21日には、北斎が「神奈川沖浪裏」で描いた波が果たして実在するのか、波のスペシャリストと世界最高峰の造波実験施設の協力を仰ぎ、波の再現にも挑んだ。

「単なる山じゃないの?」佐藤二朗がツッコミ

 とはいえ、歴史番組の場合、史料分析や様々な説を精緻(せいち)に検証するあまり、どうしてもマニアックな番組になりがちだ。勢い、専門知識を前提とした内容に傾き、さほど歴史に興味のない若年世代から敬遠される原因となってきた。この点、河井プロデューサーは「視聴者が何を望んでいるのか。佐藤さんに入ってもらうことで目線が変わってくる」と説明する。

 実際、関ヶ原の戦いの回で、制作陣が「山城」を前提にスタジオ収録を行おうとしたところ、石垣も天守もない様子に佐藤が、「城なの? 単なる山じゃないの?」とツッコミを入れた。「歴史番組を作ってきたぼくたちからすると、それも城なのだが、知らない人から見ると、確かにただの山にしか見えない。佐藤さんの発言を受け、その点が分かるように大幅に作り変えた。視聴者に近い視点を取り入れることで、いい意味での化学反応が起きるのではないか」

28日は、飛鳥の古墳を徹底調査。驚きの技術で造られたという石室を検証する
28日は、飛鳥の古墳を徹底調査。驚きの技術で造られたという石室を検証する

 手探りでスタートした番組だけに、初年度は誰もが知るネタを取り上げ、深掘りしていく。「歴史に少し興味があるぐらいの人が食いついてこられる話から始める。でも、コアなファンが大きな核となっているので、その人たちに満足してもらうには、やはり歴史の通説や常識を覆す面白さがないといけない」。河井プロデューサーは力を込め、教科書の書き換えをも狙う。

 28日は「飛鳥の八角形古墳」がテーマ。奈良県明日香村で発掘された古墳について、番組が独自説を披露する。5月は、「真相!池田屋事件」(12日)と題して新選組に斬られた側から池田屋事件を捉え直すほか、「長篠の戦い」(19日)では、織田信長の鉄砲戦術に再検証を施す。

歴史ゲーム人気も後押し

5月12日は、池田屋事件の真相を捉え直す
5月12日は、池田屋事件の真相を捉え直す

 かつて「ヒストリア」で、旧日本海軍が開発した巨大潜水艦・伊400について紹介した回は、オンラインゲーム「艦隊これくしょん―艦これ―」人気もあって、若者世代が普段以上に見てくれた。ほかに「刀剣乱舞―ONLINE―」などのゲームを通じて、歴史の一端に関心を示す若者もおり、切り口次第ではU59にも手が届きそうだ。

 ただ、テーマによっては見解が大きく分かれるのがこの分野。食いつきの良さと専門性のバランスをどう取るか、制作サイドの力量が問われよう。

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2006703 0 エンタメ・文化 2021/04/25 10:03:00 2021/04/25 10:03:00 2021/04/25 10:03:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210420-OYT8I50011-T.jpg?type=thumbnail

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